中高生のサッカー部員向けフリーマガジン「Spike!」には、連日読者の中高生プレーヤー達から多くの質問が寄せられます。今回はその中から小学生年代で身に付けておいた方がよい「走り」や「動き」に関する内容を紹介します。
質問に答えてくださったのは、ジュニアからトップチームまで長年指導に携わってきたヴァンフォーレ甲府のフィジカルコーチ谷真一郎さん。ぜひ参考にしてみてください。
<質問>
僕は体が小さく、試合でも当たり負けしてしまいます。そこで、コーチに「拇指球に体重を集中させると良い。」と言われました。それから拇指球を意識していますが、どうしても親指に体重が集中してしまいます。どうすれば拇指球に体重を集中させることができるようになりますか?
<回答>
■「拇指球」で押して力を得る
拇指球に体重を乗せる。これは、走る・方向を変える・相手とコンタクトする時など、力を発揮する時に重要な事です。前、横、斜め、後ろ、どの方向に進むにも拇指球で地面を押して力を得て進んでいくことが効率的です。
力を出そうとする時に親指に体重が集中してしまうということは、「蹴って力を出す」意識が強いか、「姿勢が前掛かり」になっていることが考えられます。まずはこの状況を改善しなくてはなりません。この部分を改善するためには、「良い姿勢で、押してエネルギーを得る」ことを身につけることが大切です。
では、なぜ拇指球で接地すると良いのでしょう?
足裏のそれぞれの位置で接地してみてください。踵で接地すると姿勢が後傾してしまいバランスを保ちづらくなります。逆につま先で接地すると親指の関節を固定する筋力が弱いため、つま先が屈曲してタメができてしまい動き直しが遅くなります。また、親指を伸展する筋肉にも大きな負荷がかかってしまいます。
それを拇指球で接地するとバランスも保ちやすく、大きな筋力を発揮できる腓腹筋(ふくらはぎの筋肉)で足首を支えられるのでタメもなくなるのです。
■肩からではなく「大転子」でコンタクト
しかし、当たり負けしているということから別の見方も必要かと思います。相手と当たる時に、どこでコンタクトしようとしていますか?「ショルダーチャージ」という言葉があり、肩からコンタクトしようとしているケースを多く目にしますが、肩から当たりに行っては勝てません。
バランスを保ち、強くコンタクトするためには大転子(骨盤と大腿骨の連結部分)、お尻の横で当たりにいきます。結果的に肩と肩が当たるのでショルダーチャージと表現されていますが、強い選手のコンタクトの意識は大転子から当たりに行っています。この感覚を得るだけで大きな変化が起きます。
大きな選手に対して、相手の下から、「拇指球」で押して力を得て、「大転子」からコンタクトしてみて下さい。「えっ!」ということが起きますよ!実際にこの当たり方を身につけていて、身長は低いけど当たりに強い選手はたくさんいますよ!
谷真一郎(たに・しんいちろう)
愛知県立西春高校から筑波大学に進学し、蹴球部に在籍。在学中に日本代表へ招集される。同大学卒業後は柏レイソル(日立製作所本社サッカー部)へ入団し、1995年までプレー。 引退後は柏レイソルの下部組織で指導を行いながら、筑波大学大学院にてコーチ学を専攻する。その後、フィジカルコーチとして、柏レイソル、ベガルタ仙台、横浜FCに所属し、2010年よりヴァンフォーレ甲府のフィジカルコーチを務める。 『日本で唯一の代表キャップを持つフィジカルコーチ』
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写真/田川秀之