現在、流通経済大学4年生で、ともにU-22日本代表の中心選手として、ロンドン五輪アジア最終予選を戦う山村和也選手と比嘉祐介選手。二人とも来季からはプロのサッカー選手として羽ばたいていきます。多くの選手が高校卒業と同時に、プロへと進む中で大学進学という道を選んだ理由。そして、そこまでの道のり、その先にある目標などを語ってもらいました。
■4年間努力すれば、プロも十分に狙える
――お二人が最初に出会ったのは?
山村 大学の推薦入試が一緒だったんですが、そのときが初対面でしたね。最初は、こんなに(顔が)怖いヤツと一緒なのかと思いましたよ(笑)。
比嘉 もう、それしかないでしょ?(笑) 僕は付属高校(流通経済大学付属柏高校)出身なのですが、「国見のセンターバックがくるらしいよ」という噂はずっと聞いていました。実際に会った時は「うわぁ、デカっ!」って思いましたね(笑)。それまではお互いの存在は全く知らなかったんですよ。
山村 全然知らなかった。高校時代はお互いに1度も対戦していなかったからね。
――実際にチームメイトとなって、頼もしさを感じる局面が多々あると思いますが。
山村 比嘉は対人が強いので、安心して任せられますね。
比嘉 ヤマは全体的にうまい。ゲームをコントロールするのもそうだし1対1も強い。しかも、(体が大きいから)足が遅そうに見えるんですが、意外に速いんですよね。だから、ヤマが後ろにいると安心しますし、一緒にディフェンスラインを組んでいてとても心強いです。
――4年間一緒にプレーしているだけあって、お互いが何を考えているかということもわかるのではないですか?
比嘉 いろいろな話ができますね。お互い代表に選ばれたり共有していることが多いので。
山村 プレー面に関していえば、やはり長く一緒にプレーしているだけあって、お互いに何を求めているのかはわかりあえる部分は多いと思います。
――ところで、お二人が見た大学のサッカー部とはどんなところですか? また大学サッカーの魅力とは?
比嘉 いろいろなことを学べるところ。サッカーそのものもそうですが、たとえば、上下関係。流大(流通経済大)はあまりない方かもしれませんが、そういう部分は学べると思います。
山村 高いレベルでサッカーを楽しめるところが、大学の良さなのかなと思います。また、大学の4年間でプロを目標に努力すれば、十分にプロに行くこともできる。大学でサッカーをやめようと考えている選手にとっても、(大学サッカーは)真剣に楽しめるところ。そういう部分はすごくいいところなのかなと思います。
■プロへの再チャレンジと、プロへの準備期間。それぞれの大学進学
――お二人が流通経済大学への進学を選択したのは?
比嘉 僕は高校を卒業する際にプロに上がることができなかったので、実は「もうサッカーをやめようかな」と考えていたんですよ。でも、大学の監督である中野(雄二)先生と高校の監督である本田(裕一郎)先生から「もう一度チャレンジしろよ」という言葉をかけていただき、大学で再び挑戦することを決断。今は本当にあの時にやめなくてよかったなと実感しているところです。
山村 僕は高校を卒業する時にプロに行くこともできたのですが、プロのレベルでもしっかりとついていけるよう、もう少し納得いくまでサッカーに取り組みたかった。それができるのが大学だと思い、進学することを決めました。
比嘉 大学4年間は長いといえば長かったですけど、あっという間だったよね?
山村 充実していたからこそ、4年間はあっという間だった。
――二人が大学に入学して、最初に感じた壁は何でしたか?
比嘉 僕らは1年生の5月頃から流大のトップチームでプレーしていたんですが、最初の頃はトップチームの実力はやっぱりすごいなぁと痛感させられることが多かったですね。
山村 サッカーのやり方が高校とはガラッと変わったので、そういう部分で少し戸惑った部分はありました。大学ではサッカーも、そして生活面においても、自己管理に任せられる部分が多くなりますし、すべてが自分次第。そこでしっかりと管理できないと、サッカーも伸びないだろうし、生活のリズムも悪くなってしまうのかなと考えていました。
――大学での1日はどんなスケジュールで過ごしていますか?
山村 午前中は学校に行って4時半から練習をして、寮に帰って食事を取ってから、それからはフリーですね。
比嘉 朝7時に飯を食べて寝て(笑)、1限に授業が入っている人は9時の開始に合わせて学校に行く。18時30分頃に練習が終わった後は寮で食事を食べて、19時30分とか20時頃からは自由です。
――お二人のリフレッシュ方法は?
比嘉 みんなでしゃべったりトランプとかやったり、ゲームとかやっていますね。
山村 いつも部屋に何人かいるので、何人かでたまにボーリングに行ったり、ビリヤードをしてリフレッシュしています。
比嘉 僕はストレスがたまらないタイプなので全然問題ないです。常に楽しんでいるタイプ(笑)。どんな場でも、どうやったら楽しくなるかな?と考えています。性格的にはかなりポジティブですね。
山村 沖縄っぽいよね。
比嘉 顔が?(笑)
山村 全部!(笑)
■大学にもいい選手はたくさんいるし、レベル的にも高い
――二人にとって監督である中野先生の存在とは?
山村 相談とかしやすいよね?
比嘉 めちゃ聞いてくれるので。
山村 相談しやすいし、なんでも話しやすい。それは高校と大学の違いでもあるのかなと思います。高校時代とはまた違った視点でアドバイスを頂くこともあるので、新たに考えさせられることも。
――現在、関東大学リーグでは3位(9月16日現在)につけています。
山村 去年は成績が悪かったので(9位)、今年は前半戦を1位で折り返したかったんですが……。勝てる試合を落としているので、後半戦では勝てるようにしていきたいですね。
――4年生になった今年、「自分たちが」という思いも強くなったと思いますが、それはやりがいになっていますか?
山村 1,2年生のときはよく(試合に)勝っていたので3年生のときは「勝たないといけない」というプレッシャーがありました。でも、結果が出なくて……。本当に勝つことができなかったので、4年生になってより勝利の重みというか、喜びを実感するようになりましたね。
――後半戦に向けての手ごたえはいかがでしょう?
比嘉 総理大臣杯には負けてしまいましたが、後期は「やっぱあいつらすごかったな」と思われるように、断トツで優勝したいですね。
――注目されることも多いですが。
山村 大学にもいい選手はたくさんいるし、レベル的にも高いので、あまり周りの目は気にせず自分のプレーをやろうかなという気持ちでいます。
山村和也//
やまむら・かずや
DF、MF。1989年12月2日生。長崎県長崎市出身。186cm/76kg。国見中学校 - 国見高等学校 - 流通経済大学。ポジションはセンターバックおよび守備的ミッドフィールダー。ロンドン五輪を目指すU-22日本代表の主将を務める。流経大の中野監督も「10年に1人の逸材」と評価するほどの逸材で、昨年の広州アジア大会では主将として、優勝に貢献した。J1鹿島への加入が内定。
比嘉 祐介//
ひが・ゆうすけ
DF。1989年5月15日生。沖縄県出身。168cm/68kg。流通経済大学付属柏高等学校 - 流通経済大学。ポジションは左サイドバックで、ロンドン五輪を目指すU-22日本代表。流通経済大学付属柏高等学校3年時に、高円宮杯全日本ユース選手権、全国高校選手権の2冠を達成。2010年アジア大会では、日本代表メンバーとして、金メダルを獲得した。2012年より横浜F・マリノスへ入団する。
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取材・文/石井宏美 写真/新井賢一