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サッカー豆知識

データで紐解く日本サッカーの課題(第37回全日本少年サッカー大会より)

公開:2013年8月27日

キーワード:指導者育成

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8月3日に終了した全日本少年サッカー大会決勝大会。今年も前日の準決勝前に愛鷹広域公園多目的競技場にて「JFA公認指導者研修」が行われ、大会から見えてきたU-12年代の指導について講義が行われました。JFAナショナルトレセンコーチ猿澤真治さん、JFAアカデミー福島U-18GKコーチ須永純さんにより、全日本少年サッカー大会決勝大会で見られたプレー映像やデータを交えながら、日本のU-12年代サッカーの現状について報告がありました。
 
 

■日本の目指すサッカーの方向性

初めに猿澤さんの講義があり、EURO2012の映像が流され、現代サッカーの特徴について、そして日本の目指すサッカーの方向性についての解説がありました。日本サッカー協会では「Japan's Way」と称し、攻守において主導権を握るため「動きながら、『観る』『テクニックの発揮』『(プレーに)関わり続ける』『アクションを起こす』」ことをベースと捉えています。「よりテクニカルに、スピーディに全員で!」が日本の方向性です。
 
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JFAナショナルトレセンコーチ 猿澤真治さん
 
【攻守において主導権を握ることを目指して】
 
○攻撃・守備に関係なく、より多くの選択肢を持つ。
○サッカーをすることによって、そのゲームの中で効果的な関わりができる「個」の育成を追求する
 
~動きながら~
・「観る」
・「テクニックの発揮」
・「関わり続ける」
・「アクションを起こす」
 
 
続いてこの方向性の観点から全日本少年サッカー大会決勝大会でのプレーの考察について話がありました。同大会は一昨年より8人制サッカーを採用しています。この結果、年々、選手が意図的に攻守に関わるようになってきたことを猿澤さんはデータで説明しました。
 
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■1試合のシュート回数、DFの得点割合が向上

1試合のシュート回数は平均22.7本(昨年19本)、DFの得点割合は平均16.5%(昨年15%)と、シュート場面が増え、DFでも決定機に関わりゴールを挙げるようになってきたことが分かります。また、守備面が向上したことから、1試合平均得点は3.9点と、昨年の4.2点から減少しました。その結果、個々の技術、戦術の課題がより明確になってきたそうです。
 
興味深いデータとしては今年初めて全試合で取ったというスローインの成功・失敗のデータです。スローインを出した選手からパスがつながったり、その選手がドリブルできた時を成功と見なし、1~2次ラウンドとドリームリーグでデータを取りました。全チーム平均では44.5%、2次ラウンドでは50.3%、決勝トーナメント進出チームでは61.0%と成功確率が上がっていて、勝ち上がったチームは、ボールを大切にして攻撃を仕掛けることができ、ボールを保持することができていました。強いチームほどスローインからチャンスを作り出せています。スローインというリスタートの場でも積極的な攻守への関わりが大事なのです。
 
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その他多くの選手が積極的に関わる多彩な攻撃が見られ、今まで課題とされていたミドルパス(中距離のパス)でしっかり踏み込んで正確なパスが出せる傾向が見られたそうです。また、守備意識が向上し、積極的にボールを奪いに行く守備が増える傾向が見られ、今まで守備の課題であった相手のロングフィードをヘディングでしっかり跳ね返すプレーも成功率が増加傾向にあるそうです。
 
 

■個々の技術、戦術の課題がより明確に

攻撃面での今後の課題は相手から遠い足でボールを扱うこと、前を向くためのターンのテクニック、意図のあるファーストタッチなどの技術向上をあげられました。また、選択肢や数的優位をつくるため、局面で効果的な幅や深みを取ること、選手の距離感など、組織としての動き方も課題とされました。
 
「ゴールに向かうことは良いが、スピードが上がりすぎるよりは、観て、判断して、意図のあるプレーをしてほしい」と猿澤さんは語ります。
 
×:確率の少ないパスを選択する
○:自分たちのペースで落ち着いて組み立てる
 
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守備ではポジショニング、ミドルシュートやロングボール対応が課題とされ、先程述べたロングフィードのヘディングでの跳ね返しを、ぜひパスにして攻撃につなげて欲しいとのことでした。
 
その他全体的な課題として、ゲームの流れや点差などを考えたプレー、後方の選手の積極的な攻撃参加、前方の選手の攻めた後の守備への切り替えなどが課題とされ、これはコーチの働きかけがより必要な部分である、と猿澤さんは指導者に呼びかけていました。
 
 

■GKのプレー頻度は11人制時代から約1.7倍に

続いて須永さんによるGKについての話に移りました。全日本少年サッカー大会決勝大会が8人制サッカーとなり、大きく向上したのはGKのプレー頻度だそうです。今年は、昨年の1試合平均1分36秒に1回から1分13秒に1回と大きく向上。11人制だった2010年の2分7秒に1回からは飛躍的に増加しています。各チームのゴール前での攻撃が強化されて多くのシュートがゴールの枠に行っている影響だろうと須永さんは考察していました。
*データは、2次リーグの6試合(点差の少ないもの)を1試合平均にしたものです。
 
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JFAアカデミー福島U-18GKコーチ 須永純さん
 
GKの守備で良かった点はDFラインの背後のカバーとシュートストップ。課題は構えや構えるタイミングといった基本姿勢、そして昨年も課題として挙げられた顔から上の高さのオーバーハンドキャッチ。昨年よりも良くなったそうですが、もっと向上の余地はあるとのこと。須永さんからは段階的にボールを取る位置を上に上げていくトレーニング方法も紹介されました。
 
攻撃で良かった点はショートパスやスローイングの精度。攻撃参加成功率は昨年の42.6%から今年は51.3%と大きく向上。しかし、GKもより攻撃に関わる姿勢が重要となっている中で、キック(ミドルパス)の精度にまだまだ課題があるとのこと。さらに、パスなどで攻撃に関わる機会が増えたものの、ボールを配球した後の声かけやサポートなど次のプレーに関わり続けることが課題とされました。ジュニア年代ではキック力や精度の問題からフィールドプレイヤーが蹴ることが多いゴールキックも、できるだけGKに機会を与えて欲しいと須永さんは話します。まずは、20~30m先の狙ったところに正確に蹴れるようになってほしいとのことです。今年はGKにキック力がない場合には、早めにチームメイトがサポートに入るなど工夫するチームも増え、以前よりもGKのプレーへの関与を増やす努力が大会でも見られたようです。
 
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■指導者の理解力が日本のストロング!

講習会の最後は、「今日の結果ではなく、明日どんなプレーをするか楽しみにする」という元日本代表監督であるオシムさんの言葉を借り、合言葉は『プレイヤーズファースト』と締めくくられました。
 
昨年の指導者講習会でも語られましたが、改めて猿澤さんも須永さんも指導者の皆さんに「選手の判断をうながし、ミスを恐れないポジティブな働きかけ」、「良いプレーを誉める」そして「多くの子どもたちに出場経験」を奨励して欲しいと呼びかけます。
 
今回の講習会はC級ライセンス以上の取得者が対象でしたが、「日本のストロングは、指導者の理解力」と猿澤さんが語るように、今回参加できなかった指導者の方にも、これらのデータや考察はとても参考にしていただけるのではないかと思います。誉められて自信をつけた選手たちが、世界で戦える選手へと成長していくことを大いに期待したいですね。
 
 
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取材・文/小林健志 写真/サカイク編集部・新井賢一(第37回全日本少年サッカー大会決勝大会より)

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