現在、お子さんが所属するチームのメンバーが多くて、なかなか試合に出ることができない、もしくはまわりのチームが少なくて対戦相手がいつも同じのため、お子さんのモチベーションが上がらない・・・。いずれの環境でも出場できる試合が少なかったり、試合に出て多くの経験を積むことができないといった悩みを抱える保護者の方も少なくないのではないでしょうか。
今年、日本サッカー協会は再来年度(2015年度)から小学生年代のカレンダーを大幅に改革することを発表しました。その要点は二つ。リーグ戦の推進と、それに伴う全日本少年サッカー大会の冬季移行にあります。
この点について真意を確かめ、また一般のサッカー少年やその保護者たちへの影響を探るため、日本サッカー協会の池内豊氏に改革の趣旨と、今後の展望をお伺いしました。
■リーグ戦を推進して、試合する回数を増やすことが目的
――全日本少年サッカー大会(以下、全少)の冬季移行は、大きな驚きをもって受け止められています。
「そこにまず誤解があるように思うのですが、日本サッカー協会としては『始めに全少の冬季移行ありき』で考えていたわけではありません。まず、リーグ戦ありきです。U-18やU-15の年代でリーグ戦文化が浸透してきました。その流れの中でU-12年代でもリーグ戦を行うことの重要性を考えて進めたいという意向から、それを踏まえて『ならば全少は冬に移し、そのリーグ戦の結果も反映させる形にしたほうがいいのではないか』という話で、検討を重ねてきました。リーグ戦を育成、トーナメント戦を強化だという考え方もあるのですが、その二つを分けて考えるのではなく、リーグ戦、カップ戦の両方で刺激し合えると考えれば良いと思います」
――さまざまな議論があったと聞いています。
「そうですね。本当に大きな改革なので、いろいろな声が出てくるのは当然です。誤解もあったように思いますし、そこは各都道府県の人とも話し合って、どういう大会形式が子どもたちにとって良いのかを議論してきました。その結果、リーグ戦の形式については基本条件の中で都道府県の判断に任せましょう、ただそのリーグ戦の結果を何らかの形で全少の予選に反映させてほしいということをお願いすることになりました」
――全少の予選としてリーグ戦を導入するわけではないんですね?
「それは違います。『反映』というのは、いろいろな形があっていいと思います。たとえば、『リーグ戦の上位チーム同士が早めに当たらないようにします』ということで構いませんし、『シード権を付与します』ということでもいいんです。そこは各都道府県個別の事情もありますから、その判断に任せましょうということです」
――リーグ戦の形式も、各都道府県に任せる形ですか?
「10チーム程度で年間20試合程度、それを4月から10月にかけて開催してほしいという“ひな形”は示しています。ただ、レアケースについては柔軟に対応していきます。たとえば、地方のチームなどは、『ウチの地域に10もチームがないよ!』といったこともありますよね。そういう場合は、たとえば4回戦制にしてもらうとか、地域に合った柔軟な形をとってもらって構いません。リーグ戦でなるべく長期にわたって、試合数をある程度確保してもらい、試合をする回数を増やすことが目的です」
――U-18は全国2ブロック、U-15は関東などの9ブロックがリーグ戦の最大単位ですよね。U-12はどうなるのでしょうか。
「U-15やU-18は昇降格の制度があって能力別に区分けする形です。U-12についてはそういう考えは持っていません。身近で、移動の負担も小さい、生活圏内でリーグ戦をやってほしいということです。すでに骨組みができていて十分に試合数があるところはそのまま継続してもらえばいいと思います。たとえば、前期は各地区でのリーグ戦をやって、後期はその地区のリーグ戦の上位チームが集まるリーグ戦と下位チームが集まるリーグ戦に分かれますよといったやり方もあるかもしれませんね」
■小学生年代で大事なのは、全員が試合に出てプレーすること
――全少の予選形式も各都道府県に任せる形ですか。
「11月の1カ月で消化してほしいということと、できれば1週に2試合の範囲で消化してもらいたいとは言っています。ただ、これも都道府県ごとにさまざまな事情がありますし、グラウンドの問題もありますよね。単純にチーム数が多い県などは難しくなってくることも理解しています。そこは柔軟に対応したいと思っています」
――日本サッカー協会は、上の年代ではBチーム、Cチームのリーグ戦への参加を促していますが、それはU-12も同じですか。
「もちろん、そうですね。ただ、管理者がいないといけませんから、何でも参加して下さいということではありません。ただ、U-12 年代では全員がプレーすることが大事なことです。小学生年代に関しては、U-11、U-10などより細かい年代別のリーグ戦を整備していくことで検討しています、そのための(日本サッカー協会の)補助金制度もあります」
――上の年代ではホーム&アウェイ方式を重視されていますが、U-12はどうお考えですか。
「それはまったく考えていませんね。グラウンドも限られていますし、1チーム2日で2試合の条件の中、何チームか集まって集中開催も可能というほうが現実的だと思っています。そこまで縛る必要はないでしょう」
――試合時間はどうなるのでしょうか。
「全少と同じ20分ハーフを推奨していますが、そこも各都道府県協会に任せようと思っています。3ピリオド制(3本勝負で、1本目と2本目は選手全員を入れ替え、3本目のメンバーは1本目と2本目から自由に選べる形)でもいいと思います。ローカルルールを作ってもらってもいいんです。たとえば、選手の人数がそろわないチームがいるときは20分ハーフ制で、全チームそろうなら3ピリオド制にしましょう、とかね」
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取材・文/川端暁彦 写真/サカイク編集部