ブラジルW杯での惨敗に続き、U16、U19日本代表のアジア選手権敗退。2014年は、日本サッカーにとって試練の年となりました。サカイク編集部は思いました。悔しい…じつに悔しい…。もうこれ以上、悔しい思いをしないために、わたしたちにできることはなにか。
「うちの息子はナショナルトレセンでもなければJクラブの下部組織に属しているわけでもないし、日本サッカーの話をされてもピンとこない」
「うちは人格形成の一環としてサッカーをしているだけだから、日本サッカーとか関係ない」
このように考える読者もいるでしょう。それは自然な成り行きかもしれません。それでもサカイク編集部は、ブラジルでのコートジボワール戦やコロンビア戦を観て心に少しでもざわつきを覚えた読者には、日本サッカーがどうしたら強くなるのか、自分にできることを考え、ほんの少しずつでもいいから積み重ねてほしいと願います。
いま、あなたがそうしているように、あなたの子どもが今後もサッカーを好きでいてくれて、成人し、結婚し、人の親となったとき、サッカーの楽しさを次の世代に伝える。ささやかではありますが、それも日本サッカーが強くなるひとつのアプローチといえるのではないでしょうか。
サカイク編集部が日本サッカー強化のためにできることは、読者のみなさんに情報を届けることです。今回は、JFA(日本サッカー協会)が発表した日本サッカーが勝てない11の理由と9つの今後の課題をご紹介します。サカイクと一緒に、あなたが少しでも日本サッカーについて考えてくれたら、此れ幸いです。(取材・文/川端暁彦)
■日本サッカーはなぜ強化が必要なのか?
12月24日、日本サッカー協会は来年以降に向けた「アンダーカテゴリー日本代表強化プラン」をメディアに発表しました。登壇したのは霜田正浩技術委員長(強化担当)と山口隆文技術委員長(育成担当)。育成年代においては、前者が各年代別日本代表を担当し、後者がトレセンやエリートプログラム、指導者養成といった事業を担当しています。
冒頭、霜田委員長は「なぜ強化が必要なのか。オリンピック代表とA代表を永続的に強化するのがアンダーカテゴリーの役割」とあらためて年代別代表の役割を明言。「良質なサッカーと勝負強さでアジアを勝ち抜く」ことを意識しつつ、世界大会に出ることで「グローバルスタンダードを選手も指導者も獲得」ことの重要性を強調しました。その上で、「今までは各カテゴリーの選手選考も含め、予選の結果を意識して断片的に行っていました。今後は『15歳の子を7年掛けて22歳でA代表に入れるにはどうしたらいいか』『オリンピック代表選手やA代表に何人輩出できるか』を強く意識していきたい」という姿勢を示しました。
そんな当たり前のことを今さら言うのかと思われる方もいるかもしれませんが、従来は各年代別の代表監督が指名されると、監督の裁量権が善くも悪くも認められ、その時々の監督がそれぞれの視点から代表チームを運営。選手選考の基準も戦術的な部分も大きく変わってしまうという傾向がありました。このため、たとえばU-17代表からU-19代表で選手がうまくつながらないようなケースが繰り返されてきました。
■日本サッカー11の敗因
霜田委員長はさらに「年代別代表がアジア予選で負けたケースをあらためて見直して分析した」と、敗因、つまり現状の日本の育成年代における弱点を列挙してみせました。
「ボール支配率は上回るが、チャンスに決められない」
「パスは回るが、ゴールに向かうプレーが少なくチャンスの数が少ない」
「ほとんど攻められていないが、致命的なミスが起こり失点してしまう」
「互角の戦いをしている中で、個人の判断ミスから失点してしまう」
「相手の強い個を止められない」
「日本対策として、ロングボールを入れてくる、フィジカル、パワー勝負に持ち込まれる。相手の土俵でのサッカーを強いられると脆い」
「日本を研究され、持ち味や長所を消されると、打開できない」
「ビハインドの戦いで、精神的な強さをプレーで表現できない」
「負けている状態でも、後方でパスを回すことを選択してしまう」
「技術では上回るがアグレッシブさに欠け、覇気のない試合をしてしまう」
「相手の気迫に負け、球際やセカンドボールの拾い合いで負ける」
11項目に及んだ敗因に関して霜田委員長は、ボール支配率では負けていることがなかったとして「まだまだアジアにおける日本の優位性は動かない」(霜田委員長)としつつも、「一発勝負の予選で勝ちきれない、勝負強くなれない」と日本サッカー界が課題を突き付けられていることを認めました。
■今後にすべき9つの戦い方(課題)
その上で、霜田委員長は「魔法のレシピはない」としながら、「日常の強化が大切になる。どんな環境でも戦えるようなメンタルの強い選手を育てていきたい」としながら、以下の項目を「今後にすべき戦い方」として9項目を挙げています。
「ゴールに向かって仕掛けるプレー」
「縦への意識(パス、ドリブル、視野)」
「シュートの技術向上(特にゴール前での技術、メンタル)」
「ボールを奪いにいく(技術、メンタル)」
「走り切る、走り負けない」
「フィジカルコンタクトの向上(競り負けない、当たり負けない)」
「闘争心、ファイティングスピリット」
「メンタルタフネス(どんな環境でも戦える)」
「国を代表する誇りと責任をプレーで表現する」
強調されたのは縦への意識、仕掛ける姿勢、そしてメンタルです。日本サッカー協会があらためて分析した上でその点が「物足りない」となったわけですから、それはそれで尊重するにしても、やや唐突な印象も否めません。なにせ吉武博文監督が三世代にわたって率いたU-16・17日本代表においては徹底してポゼッションにこだわる「横への意識」が強いサッカーをやってきたわけですから、意外な印象もあります。少し軌道修正の時期に入ったようです。
こうした軌道修正は人事にも反映されており、吉武監督は退任となり、U-16日本代表コーチだった森山佳郎氏が来年発足するU-15日本代表(2017年のU-17ワールドカップを目指すチーム)の監督となることも決定しました。広島ユース監督時代には「育成と勝利の両立」(霜田委員長)を実現したことで知られる森山氏ですが、特長としていたのは縦への速さ、仕掛ける意識の強いサッカーでした。もちろん、ポゼッションを放棄するということはないと思いますが、少し異なるアプローチでのチーム作りとなることは確かでしょう。
【告知】
取材・文/川端暁彦