考える力
「子どものサッカーの試合はレアル対バルサより楽しいかもしれない」川崎フロンターレ風間八宏監督は"子育てを楽しむ"
公開:2016年6月15日 更新:2021年1月27日
前回の記事では風間八宏監督ご自身がサッカー少年だったころや、サッカー少年の親となってから感じた、“サッカーを通じて子どもが得られるもの、学べるもの”について語っていただきました。後編となる今回は”サッカーを通じた親子のあるべき姿”について、こちらも風間監督の豊富な指導経験を通じた観点から迫ります。(取材・文 竹中玲央奈 写真 八木竜馬)
■Jリーガーになった息子2人に“何かを教える”ということはなかった
サッカーを通じて子どもを成長させるためには”親が共に楽しむ”ことが重要である、と強調していた風間監督ですが、プロサッカー選手である2人の息子さん(風間宏希・ギラヴァンツ北九州所属、風間宏矢・FC岐阜所属)を育てる過程でもそのスタンスを出していました。
「なにかを教えるということはなかったです。ただ、『ボールを蹴って』と言われれば付き合うし、『シュートの練習をしたいからクロスを入れてくれ』と言われてもそう。多分どこの親よりもうまいです(笑)。ただし、わたしから”こうしろ”とは言わなかったですね。やるとしたら、子どもたちとゲーム(試合)をして『勝ったらアイスを買ってあげるよ』というような約束をして。でも、わたしが勝ちますよね。それで『ああよかった。アイスを買いに行こうと思ったのに、お前らは本当にまだまだだな』と言って遊んでましたね」
楽しみながらサッカーができる環境があったからこそ、2人の息子はプロの世界へ羽ばたくことができたのかもしれません。
■楽しむから考えるようになり、どんどん成長する
もう1つ、風間監督が説く重要な点は“考える”ことから自主性を身につけること。そして、その“考える”状況や機会を大人たちがつくることです。
「楽しいということは、自分がやっている実感があること、そして自分の成長がわかること。そうなると、自然に次から次へと自分で考えて行動を起こすようになります。楽しみ、考える力がサッカーでいうアイディアと技術に発展します。要するに、やらされるのではなく、自らで考え自分をどんどん向上させていくことが大切です。さらに自分が立てた目標に挑んでいくことが、スポーツでは重要だと思います。その姿勢を周りの大人がほめてあげることで、子どもたちをもう一つ期待させることができます。スポーツは、日常にはない喜怒哀楽を起こさせてくれる分、自分がどれだけやったか、あるいはやれたかがわかりやすい世界です。そういう子どもの挑戦を見られるのは幸せなことですね」
■負けた試合を振り返るのではなく、明日は勝てる期待感を伝える
サッカーをする子どもたちに風間監督が説いている象徴的な言葉があります。「"自分に期待しろ"ということです。”やらされるな”と。自分のやりたいようにやって、うまくなっていけばいいんです」
考え詰めて解決策を見つけ出したとしても、プレーをするときに自信を持っていなければ、つまり自分への期待感がなければその解決策を実行することができなくなるかもしれません。自ら熟考して見つけ出した解答も、実行できなければもったいないですよね。だからこそ、子どもたちが自信を持って自らの考えを実行できるようになるための土壌をつくることも大切です。ここまでにも触れたように、見守る親が期待して背中を押すことが、子どもたちの成長を促すことになります。試合でうまくいかなった、負けてしまったという状況に遭遇しても、その試合を振り返るのではなく、次の試合への期待感を伝える。こういうことが重要です。
「勝ち負けを約束できる人は誰もいません。次にどうベストを尽くすか、勝つ自信を持って戦いにのぞめるか、そしてその準備をするか。これこそ選手がうまくなっていくうえで、もっとも大切な姿勢です。この姿勢が身につけば、きっと勝てる選手になっていくと思います。うまくいかなかったら、これ以上もっとうまくなるチャンス、負けてしまったら、明日は”勝てる”と考えていけばいいわけです」
風間監督率いる川崎フロンターレのJ1初優勝を目撃しよう!
ファーストステージ・ホーム最終戦は6月25日(土)‼
サッカー少年の子育てに役立つ最新記事が届く!サカイクメルマガに登録しよう!
取材・文 竹中玲央奈 写真 八木竜馬