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「自分で考えるサッカー」を実践しているクラブ・少年団を訪問!
子どもたちが自分で判断するための「種」を蒔く指導――世田谷区成城チャンプサッカークラブ
公開:2013年2月22日 更新:2014年2月 6日
「自分で考えるサッカーを子どもたちに」を実践しているチームにスポットを当てた連載の第2回は東京都世田谷区で活動する成城チャンプサッカークラブを訪ねました。言われたことをやっているだけでは絶対に花開かない、選手たちの可能性を伸ばす方法とは?
■ウルグアイでプロを目指したコーチが指導者に
成城チャンプが活動しているのは世田谷のとあるスポーツ公園。午後三時半になると幼児クラスと入れ替わる形で高学年の練習が始まります。
黙々と練習準備をする選手たち。
ボールをドリブルしながら2列になってゆっくり歩いていたかと思うと、グラウンドのコーナーまでクルッと反転。歩いている選手の列を縫うように、スラロームドリブルが始まります。
「練習に関しては色々なチームの練習方法を参考にさせてもらっています。あのドリブルも見よう見まねですが、意識するところは私なりに選手に伝えています」
チームを指導するのは大和明志コーチ。高校3年の7月、単身ウルグアイに渡り練習生としてプロを目指したという経歴の持ち主です。
「自分はいわゆる“強豪校”ではプレーできませんでした。高校時代は専門の知識を持ったコーチがいなくて、キャプテンだった自分がメニューを考えてやっていました。それもいまとなっては恥ずかしいような内容のものですが、あのとききちんと指導を受けたかったという思いはずっとあります」
激しく競争原理の働くウルグアイでは“本気”じゃない選手は一人もいません。一緒にプレーしていたひときわ負けず嫌いのプレーヤー、グスタボ・バレラ選手は後にウルグアイ代表になり、シャルケ04でもプレーするほどの選手になりました。
「3年半ウルグアイにいたのですが、バレラがプロになる課程を見ることはできたのは自分の糧になっていますね」
帰国後は、夢だったプロ選手を諦め、しばらくサッカーから離れていた大和さん。
転機になったのは草サッカーチームを作り、再びサッカーに触れ合うようになったときに受けたD級の指導者講習会だった。
「今までは全部自己流でしたからね。いまでは割と当たり前に普及していることでも、そのときは『こんな指導方法があるのか』と新鮮に感じました」
(この指導を受けていたら自分はプロになれたかもしれない・・・・・・)
そんな思いが大和さんを指導者の道に駆り立てるきっかけになりました。
■考える練習メニュー 答えは選手が見つける
「はい、ちょっとストップ」
成城チャンプの練習では練習中に流れを止めてプレーの意図や味方との連携を確認するシーンが頻繁に見られます。もうひとつ特徴的なのは、練習エリアの狭さ。
「好きで狭くしているわけではないですが、そのスペースしかないならそこを有効に使おうと思って」
練習場自体は都内の基準でいえば相当広いのですが、隣では中学年、サッカーだけで占領するわけにもいかないのでフリースペースも確保します。細かく区切られたエリアにさらに狭いスペースを意識するコーンが置かれて、選手たちは自ずと“密集地”でプレーすることになります。
「子どもたちが自分で判断するためには色々な種をまいておく必要があると思うんです。考える材料を与えてあげる。基本的な動き方は練習中にプレーを止めてでも示してあげる。でも、やり過ぎは良くありません。答えは選手が自分で見つけないと」
練習の意図を説明することも大切かもしれませんが、ルールを決めてやる練習を重ねているうちに自然と選手たちが考えるようになる。
「自分ではこのバランスが良くなくて、ついつい教えすぎてしまっているんですけど」
大和さんは笑いますが、事実、成城チャンプでは短い練習の中でも狭いエリアで自分がボールをもらえる角度まで下がってくる動きが徹底されていました。
「ずっと言っていますからね。でもできないことの方が多いんです。わかっていてもできないときはどこに問題があったのか? 受け手は感じていたのが? パスを出そうとしたけど技術的にできなかったのか? そこはしっかりとプレーを止めて聞くようにしています」
隣のエリアでは中学年が基本技術ベースのドリルを繰り返しています。一方、高学年は実戦形式のゲームライクメニューがほとんど。高学年ではそれまでに培った技術を使って、選手が自主的に考えてプレーできる環境作りに専念しているそうです。
「うちでも選手にスタメンや交代選手を決めてもらっています」
ハーフタイムでも極力関わらないようにしているという大和さん。練習の中でやっていないことは試合でもできないのだからと、試合で声をあげることはないそう。
「保護者の方にもそこはお願いしています。前任の監督さんから歴史あるクラブを引き継いだのですが、当初は私自身の未熟さもあって、うまく行かないことも多かったです。それでもブログなどで保護者の方に向けて自分の考えや指導方針をお伝えしていくなかで、『監督、今日は負けたけどいい試合だったね』と同じ価値観を共有してくださる方もいて、それはすごくありがたいことですよね。好きに応援したい、色々言いたい気持ちをグッと抑えてくれているわけですから」
■種を蒔いておくことが指導者のできる最大の努力
「自分の想像していなかったプレーを選手がしたときですかね?」
どんなときに自分で考えるサッカーをやっていて良かったと思いますか? そんな問いかけに大和さんはこんな風に答えてくれました。
「考えろ」と口でいくら言っても、なかなか上手くできない選手はいます。考えなければできない練習メニューのなかに入ると、持っている技術の半分も出せない選手もいます。そういう選手はどこか練習中もオドオドしているように見えてしまいます。
「そういう選手が変わってくれるんですよ。ある日突然、堂々とプレーできるようになる。そのためには「なんで考えないんだ!」じゃなくて、考えはじめる、または考えたことを実行できる“種”を蒔いてあげることなんだと思うんです」
種さえ蒔いておけばいつかは実る。可能性を託された選手たちは言われたことだけやっている練習方法では絶対に乗り越えられない壁を軽々越えていく・・・・・・。そんなシーンを今までも見てきたし、これからももっと見てみたい。大和コーチはこれからの目標について最後にそう教えてくれました。
大和明志//
やまと・あかし
1978年7月23日生まれ。東京都狛江市出身。
・日本サッカー協会公認B級指導員
・日本サッカー協会公認3級審判員
・東京都第5ブロック技術委員長 2011年~
1995年4月設立。「学年に関係なく、みんなでサッカーを真剣に楽しめること」をモットーに、成城学園前の都立上祖師谷公園グラウンドを拠点に活動している。成城以外にも、大田区や川崎市などに兄弟チームを持つ。練習や試合では全てにおいて選手が主役であり、選手に自由と責任を与え、その中で自分で考えて判断して行動できるように指導を心がけている。
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取材・文・写真/大塚一樹
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