2021年10月18日
ケガを予防し、子ども達が笑顔でずっとスポーツを楽しんでもらうために出来ること
アスリートのケガをなくしたい! そんな想いから始まった「ケガゼロプロジェクト」。このプロジェクトは、整形外科医や理学療法士が中心になって実施した、10万人の選手検査がベースになっています。
データから『ケガをする人に共通する特徴』を導き出し、フィジカルチェックを行うことで、「この選手は、どの部位がケガしやすそうか」がわかるというもの。その結果をもとにトレーニングを指導し、改善や予防につなげていきます。
■チームに導入し活用しているコーチの声
ジュニアからシニアまで、多くの人が効果を感じている「ケガゼロプロジェクト」。今回は安城北部FC 深谷真弘コーチに活用方法をうかがいました。
ジュニアサッカーのコーチとして、小学1年生から6年生までの指導経験を持つ深谷さん。低学年から高学年にかけてスポーツ障害を抱え、サッカーを続けられなくなった子どもを何人も見てきたといいます。
「サッカーを辞めて、ひざの負担がない水泳など、他の競技に移る子もいました。ケガで大好きなサッカーが続けられないのはよくないと思い、なにかいい方法はないかと探していたところ、ケガゼロのことを知りました」
オスグッド、かかとの骨端症、ヘルニアなど、ジュニア年代であっても、痛みやケガを抱えている選手は少なくありません。
「クラブの中で、過去3学年に渡って調べたところ、全体の2割から3割が、スポーツ障害の兆候が見られる、もしくは実際にスポーツ障害になっていることがわかりました。世の中的にも、スポーツをしている子どもの2割ぐらいはスポーツ障害を抱えているというデータも出てきたので、なんとかして手を打たなければいけないと思っていました。その時にケガゼロプロジェクトのことを知り、公認インストラクターの養成講座を受講してインストラクターとなりました。今は、インストラクターとして自分のチームの選手たちにフィジカルチェックを行っています。」
実際に、ケガゼロプロジェクトのフィジカルチェックをしてみたところ、多くの発見があったようです。
「スポーツ障害を抱えている子、もしくはその兆候が見られる子は、フィジカルチェックの値が比較的、悪い傾向にありました。わかりやすく出ていたのが、体の左右差バランスです。例えば屈む動作にしても、左右差が激しい子はどちらかの足に痛みが出ていたり、つま先立ちができない子は足裏のアーチができておらず、かかとや膝に痛みが出てているといった相関がありました」
チームでフィジカルチェックを受けたところ、つま先立ちの数値が悪く、左右差のバランスが悪い子がいました。深谷コーチが「心配だな」と思っていたら、案の定、6年生になって痛みが出てしまったそうです。
「そのような子に対しては、改善トレーニングの頻度を上げたり、歩き方やインソールに目を向けること、あとは練習を休むことなどについて話をする頻度が増えましたし、どうすれば改善できるのかをより深く考えるようになりました」
フィジカルチェックを受ける前は、保護者の方からは「どれほど効果があるのか?」といった声もあったそうですが、実際にやってみて、痛みやケガとの相関がわかるようになると「これはいいですね」という声に変わっていったそうです。
ある保護者は「息子の体の状態を知りたかったのでフィジカルチェックを受けさせました。受けてみて体のどこが弱いのかが分かり、改善トレーニングを続けていく中で股関節や踵の痛みが減少している変化を感じています。」とうれしそうに話してくれました。
お子さんは「フィジカルチェックでバランスが悪く、体幹が弱いという結果が出たので、教えてもらった改善トレーニングを毎日3種類やっています。続けることで、かかとや股関節の痛みがなくなった」と、効果を感じているようでした。
深谷コーチは言います。
「いままであれば、多少痛くても休めば治ると考えて、病院に行かないケースもありました。しかし、フィジカルチェックをして、データとして出てくると、『このままではまずいかも』と感じ、通院する子も出てきました。高学年になって、もっと上を目指したい、ケガをしたくない子は、家庭で熱心に改善トレーニングに取り組んだりと、行動も変わってきましたね。
指導者や保護者は、サッカースキルの向上に目を向けがちですが、子ども達が生涯スポーツを楽しむ為には、心身ともに健全な成長が必要だと思っています。指導者や保護者には子ども達の心や身体のケアにももっと関心を持ってほしいと思います。
ジュニアチームに1人ケガゼロのインストラクターがいるような環境を作っていきたいです。」
■チームのケガリスク傾向を把握することも
フィジカルチェックでは、チーム全体の平均や傾向もわかるので、それをサッカーのトレーニングに応用することも可能です。一般社団法人日本スポーツ障害予防協会のスタッフは、安城北部FCのデータを見て、次のように説明します。
「4年生5年生の平均値を出してみると、3要素スコアバランスの形が似ています。機能性・柔軟性の数値は高いけど、安定性の数値が低い。個人の測定結果を見ていくと後傾姿勢の子が多いのではないか?と思います。安定性に注目してトレーニングで改善できると、ケガ予防に加えて、サッカーのプレーも向上していくと思います」
ケガゼロプロジェクトはフィジカルチェックをすることで、部位別の怪我危険度とその原因になっている因子、怪我に繋がりやすい左右差がわかるとともに、改善、予防のためのトレーニング動画が用意されています。
さらには全員の傾向を見て、必要なものをトレーニングに取り入れることで、チームとしての改善も期待できます。ケガ予防だけでなく、サッカーのパフォーマンス向上にも働きかける、ケガゼロプロジェクト。ぜひ興味のあるクラブは取り組んでみてください。
ケガゼロプロジェクト公認インストラクターオンライン養成講座
■開催日時
●オンライン開催
2021年12月6日(月) 19:00〜22:00(180分)
定員:20名
>>お申込・詳細はこちらから
■お問い合わせ先
一般社団法人日本スポーツ障害予防協会
mail info@e-3.jp
※現在、テレワークにて業務を行っております。お問い合わせはメールにて承っております。