2023年10月20日

短時間でボールを前に運ぶスキルが向上!元鹿島アントラーズアカデミーコーチによる指導実演会レポート

2023年夏に行った、COACH UNITED ACADEMY会員向けの指導者講習会。講師は鹿島アントラーズのアカデミーで長く指導し、茨城県トレセンやナショナルトレセン関東U-12にも携わった上田原剛氏だ。

現在は蹴和サッカースクール代表として、子どもたちのほか「お父さんコーチ向け練習会」を実施するなど、育成年代に幅広く関わる指導者である。

今回の記事では「ボールを前に運ぶための止める・蹴る・ポジショニング」をテーマに、ジュニア年代を対象とした指導実践の様子をお届けしたい。(文・鈴木智之)

上田原氏のトレーニングが見れる
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(指導者講習会に参加したCOACH UNITED ACADEMY会員のみなさんの前で指導実践を行った上田原剛氏)

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プレッシングの3種類を理解させる

上田原コーチはトレーニング前、「プレッシングには1トップ、2トップ、マンツーマンの3種類しかない。それをトレーニングするので、最後の試合でそこにつなげてくれたら嬉しいです」と話し、指導がスタートした。

最初はアイスブレイクとしての「マーカー踏み鬼ごっこ」。6人対1人の図式で鬼ごっこを実施。地面に7個のマーカーがあり、それぞれのマーカーに選手が立つ。

1つだけ選手が立っていないマーカーがあるので、鬼はそこを足で踏めば勝ち。6人の選手は空いているマーカーを鬼に踏まれないように、最初の立ち位置から移動して守る。

上田原コーチは選手たちの様子を見守った後、守備のポイントを提示。それが「中間ポジションに立つこと」だ。

「中間ポジションをとってみてください。2箇所、3箇所行けるのはどのへん? 自分のマークと他のマーカーに行けるポジションに立とう。試合中、マークはできているけど、スペース管理ができていませんとならないように、中間ポジションに立ってください」

さらには味方同士の声にも言及し、「声があったら解決できることが多いよ」とアドバイス。

試合中よくあるのが、前線の選手はプレスに行きたいのだが、自分の背後のスペースが気になり、思い切りよく行けないこと。そこで、後ろにいる選手が「自分がいるから、前に行っていいよ」といった声をかけることで、スムーズにプレスをかけることができる。

このような考え方やコミュニケーションの重要性を伝えていくことで、連動した守備ができるようになっていった。

攻撃側が有利になる「ピン止めドリブル」

2つ目のトレーニングは「2対1」。これは相手が1人でプレスをかけてきた場合、2人が連携して、相手のプレスをかわす状況をイメージしたトレーニングだ。

ボール保持側は相手をかわすか、相手の後方にあるポイントを超えたらシュートを打ってOKというルールで実施。

上田原コーチは「どうすれば2対1を攻略できそう?」と質問をし、子どもたちから「裏を取る、ワンツー、相手を引き付けてパス」といった答えが返ってくる。

そこで「大事なことを言います。相手に向かってドリブルをすると、相手がピンで止められた状態になります。ボールに行きたいけど、ドリブルで抜かれるかもしれないし、行かなければパスを出されるからです。これを『ピン止めドリブル』と言います。ピン止めドリブルをしながら、パスかドリブルを選択しましょう。なんとなくドリブルをすると、せっかくの2対1が1対1になってしまうよ」

ピン止めドリブルをすることで、攻撃側が有利になり、2対1の数的優位を活かすことができるようになっていく。

「わかる」と「できる」は違う。大切なのは繰り返しの練習

次に、ボール保持者の状況によって、味方はどこの位置でサポートに入るかという「幅と高さ」のポイントをデモンストレーション。わかりやすく伝えることによって、プレー時の考える基準を提供していく。

さらに、パスを受けた選手は、前向きのコントロールでDFのラインを超えると、素早くゴールに向かえることなどをアドバイスしていった。

続いて攻撃側を3人、守備2人にチェンジ。「やることは同じ。2対1が2つあると考えよう」と話し、「DFがどこにいるかでボールの出口が変わる」「真ん中を突破して、DFが中を閉じたらサイドが開く」などをデモンストレーション。

その後、前線にサーバーをつけた「3対2」や「4対4+1フリーマン+2サーバー」「4対4+1フリーマンのゲーム形式」を実施。

プレーが上手くいかない局面に対して、どうすれば上手くいくかを考えさせるとともに、プレーの基準や考え方を提示することで、子どもたちの頭が整理され、イメージを共有できる局面が増えていく。

このあたりは指導時に必要な部分だ。現象ではなく原因を見抜き、そこに対してアプローチすることで、選手のプレーを向上に導くことに繋がるだろう。

トレーニング終了後、上田原コーチは「今日でいろいろな知識が身についたと思います。でも『わかる』と『できる』は違います。わかるからできるようにするためには、繰り返し練習すること。時間が必要なので、意識して繰り返してみてください」とメッセージを送った。


(上田原氏の指導実演に協力してくれた境南サッカークラブU-12の選手たち)

今回の講習会は座学を経て、指導実践に移る流れだった。理論をもとに、どのようにコーチングをするのか、どのようなトレーニングメニューを実施するのかがわかりやすく、参加者にとって、大いに参考になったようだった。

COACH UNITED ACADEMY会員になると、上田原コーチの指導動画を筆頭に、多くの強豪チーム指導者のトレーニングを視聴することができる。

今後も、COACH UNITED ACADEMY会員に向けた講習会等のイベントを開催予定なので、興味のある人はぜひこちらをチェックしてほしい。

きっと、あなたの指導をレベルアップさせるヒントがみつかるはずだ。

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【講師】上田原剛/
15歳の時にジーコサッカーキャンプに参加、ジーコにスカウトされアントラーズユースへ入団、その後大学を経て指導者の道へ。CFZ(ブラジル)で指導者をスタート。2005年〜2021年までの15年間は鹿島アントラーズのアカデミーにて指導。茨城県トレセンU12、ナショナルトレセン(関東)U12担当。2021年4月に蹴和サッカースクールを立ち上げ現在は小中学生の指導にあたる。スクールのほか指導者育成活動(練習会や講義)を行い、2021年6月からスタートした「お父さんコーチ向け練習会」には既に150名以上の指導者が参加している。

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