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2012年7月17日
五輪サッカー初戦は7月25日!なでしこジャパン・男子U-23の観戦ポイントはココだ!
ロンドン五輪の開幕まで、ついにあと10日となりました。果たして日本サッカーはメダルを獲得できるのか? 男女日本代表の試合スケジュールは以下のように決まっています。
【男子 U-23日本代表】
7月26日(日本時間22:45) vsスペイン
7月29日(日本時間25:00) vsモロッコ
8月1日(日本時間25:00) vsホンジュラス
【女子 なでしこジャパン】
7月25日(日本時間25:00) vsカナダ
7月28日(日本時間20:00) vsスウェーデン
7月31日(日本時間22:30) vs南アフリカ
今回は、男女日本代表の試合を観戦するためのポイントを、いくつか解説したいと思います。「今、日本は意図通りにうまくいっているのか?」「それとも相手のねらいにはまっているのか?」―。もちろん、何となく観ているだけでもサッカーは十分楽しめるスポーツなのですが、両チームの戦い方やセオリーを理解していれば、試合をより深く楽しむことができるでしょう。
まずは、前回ワールドカップで優勝し、メダルへの期待が大きくなっている、なでしこジャパンから解説します。
■なでしこジャパン 前線からのプレッシングをどこまで徹底できるか?
なでしこジャパンの基本的なチームコンセプトの一つは、前線からのプレッシングです。これはなでしこジャパンにとって生命線とも言える戦術で、佐々木則夫監督が何年もかけて築き上げました。その主な手順は以下のようになります。
まず、相手のセンターバックAがボールを持ったときに、FWの大儀見(旧姓:永里)や安藤が素早く寄せて、ボールを相手のサイドバックBへ誘導します。そして今度はそこにサイドハーフの宮間や川澄が素早く寄せるのですが、このとき、宮間や川澄は『相手の縦方向のパスコースを切りながら寄せる』のがポイントです。そして相手のパスを中央のCやDへ誘導し、そこに澤や阪口が襲い掛かってボールを奪う。これがなでしこジャパンの約束事です。
通常のサッカーのディフェンスでは、中央はより危険なスペースになるので、相手の攻撃をサイドへ追い込むのがセオリーなのですが、なでしこジャパンの場合は全く逆。あえて相手のパスを中央へ呼び込んでいるのです。なでしこがこのように、サッカーのセオリーのあえて逆を取っているのには、理由があります。
1.ゴールチャンスが増える
敵陣の、しかも中央でボールを奪うということは、相手ゴールへの距離が短いのでゴールチャンスが大きくなります。いわゆる『ショートカウンター』と呼ばれる攻撃です。自陣でボールを奪ってから持ち上がっていくよりも、2本、あるいは3本程度のパスでシュートへ持ち込む可能性が高いため、ゴールを挙げる確率が高くなります。
2.サイドでの1対1より、中央で人数をかけて守備をしたい
特に女子の場合、世界で戦う強豪チームとの体格差が大きいため、相手のサイドアタッカーのEやFと1対1のようなシーンになると、日本は圧倒的な走力で振り切られてしまいます。実際、オーストラリア戦でも、右サイドバックの近賀が、オーストラリアの選手のサイドライン際を真っすぐ快走するドリブルに追いつくことができず、約50メートルを1人で運ばれてしまうシーンもありました。このようなシーンを、できるだけ減らしたいので、中央に作った密集地帯に相手のパスを呼び込みたいのです。
運動量があって献身的にプレーできるなでしこジャパンの長所を生かし、1対1の弱点を消し、そして澤や阪口のボール奪取力を生かす。非常によく練られた戦術だと思います。完成度も高い。
ただし、ここで注意しなければならないのは、今のなでしこジャパンはワールドカップを制した王者として、ライバルチームから研究される存在になっていることです。なでしこジャパンの戦い方は熟知されており、アメリカやドイツなどいくつかのチームはすでに、なでしこジャパン対策を見せ始めています。
例えば、なでしこジャパンが前線からプレスをかけ始めたとき、相手がそれに付き合わずにポーンと裏のスペースへロングボールを蹴ってくる。日本は澤や阪口が前へ出てボールを奪おうとしている分、後ろに人数が薄くなりがちです。そこに世界の大きな選手が立ってポストプレーをされるのは脅威以外の何者でもありません。日本はFWやサイドMFが、そのロングボールを蹴らせないくらいの近距離まで素早く寄せるか、あるいはロングボールを蹴られてもセカンドボールを拾えるようにしておくか。何らかの対策が必要になります。
そして他には、前線からのプレッシングを、逆に日本に対して仕掛けてくるチームもあります。なでしこジャパンはパスワークに長けたチームではありますが、オーストラリア戦でもいくつかの危ういミスがあったように、自陣でのバックパスを狙われたときに、相手に奪い取られてシュートまで持ち込まれてしまうことがあります。
チームコンセプトの裏をかくような形で、相手が仕掛けてくる難題を、なでしこジャパンは本大会でどのようにクリアしていくのか。それが大きなポイントになるでしょう。
■関塚監督の戦術指導と采配がカギを握る!?U-23日本代表
さて。次は男子U-23日本代表ですが、正直な話、完成度の高いなでしこジャパンに比べると、まだまだチーム作りが手探りになっている印象は否めません。
理由はいろいろあると思いますが、その最も大きな要因は、世界との経験不足でしょう。トゥーロン国際大会は例外ですが、11日の1-1で引き分けたニュージーランド戦のように、U-23日本代表のほとんどの試合は、攻め立てる展開の中でいかにゴールを挙げるか、そこからのカウンターに注意を払えるか。このような『巧みな試合運び』がポイントになります。技術やスピードにアドバンテージがあるため、U-23日本代表は自分たちが主導権を握って戦うことが前提になっているからです。
ところが、それはあくまでアジアで戦う場合のこと。たとえばU-23日本が初戦であたるスペインを相手にすれば、試合のポイントは大きく変わってきます。むしろスペインが主導権を握る可能性のほうがはるかに高いのです。
アジアを戦うチームと、世界を戦うチーム。予選と本大会のチームが姿を変えなければならないというのが難しいところでしょう。女子の場合は、アメリカやドイツなどの強豪と対戦する機会も豊富で、国内にいても男子大学生と練習試合ができたりするので、特に問題はないのですが、男子サッカーが最も難しいのは世界ランクとの経験を積みづらいところにあるのです。
例えば、初戦のU-23スペインとの試合をシミュレーションしてみましょう。
U-23スペインのフォーメーションは、4-1-2-3ではないかと予想されています。それに対する日本は、現状では4-2-3-1。この両チームが対戦すると、おそらく以下のような状況が発生するのではないかと思います。
ユーロ2012のスペインA代表と同じように、サイドバックXやVが高い位置を取り、両ウイングZやYが中央へ寄って中央に厚みを作ります。ピッチの横幅を広く使った攻撃です。相手のディフェンスは、外側の選手ばかりに気を取られていると、中央の守備のすき間が大きくなり、中央突破を許す危険が増します。
日本がこれに対抗するためには、例えばXやVの上がりに対しては、AやBのポジションの清武や永井といった選手がしっかり下がり、日本の4バックと2ボランチが中央の守備に集中できるようにブロックを作ること。おそらく日本は自陣に引かされ、スペインにパスを回されることになりますが、ここで焦ってむやみにボールを奪いに行くと、スペインは空いたフリーな選手を使って攻め崩してくるでしょう。まずは安定した守備から、永井らの走力を生かしたカウンターを狙う。これは当然、一つのプランとして考えられるはずです。
あるいはもっと攻撃的に行くなら、もう一つのプランは、ユーロ2012を優勝したスペインと戦ったグループリーグのイタリア、あるいは準決勝のポルトガルが見せたように、前線からどんどんスペインにプレッシャーをかけていく方法です。AやBは下がってばかりではなく、どんどん前方の相手へ寄せてインターセプトを狙います。もちろん、誰か1人でもプレッシャーが遅れたり、フリーな相手選手を作ってしまうと、そこを基点に一気に崩されてしまいます。これを成功させるためには、日本はスペインを上回る運動量とフィジカルコンディションが必要不可欠になるでしょう。
簡単に言えば、『前から行くか』『後ろで守るか』。あるいはそれを時間帯に応じて使い分けるか。
いずれにせよ、U-23日本代表はこれまでとは違う内容の試合をする必要性に迫られるのではないかと思います。メンバーを集めて練習することすらままならないU-23日本代表がどこまで戦術を成熟させられるか。不安も大きいですが、関塚監督がどのような指導をするのかに注目したいと思います。
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