親子でチャレンジ
2017年8月 4日
これだけは押さえておきたい、お父さん審判が「試合を導く」ために気を付けたいポイント
■お父さん審判が心がけるべきは「残心」
一般的には観ている人たちが、審判の存在が気にならなかった、という感想が持てるほどスムーズに流れる試合のほうが好ましい印象を与えるでしょう。では、そういうゲームを作るためのコツなどはあるのでしょうか。
「プロの試合であれば審判はプレーの先を読んで、瞬時の判断を下していかないといけません。ファウルを流してアドバンテージの判断をスムーズに下せるかどうか、そこに審判としての才能が出るものだと言われています。ただ、お父さん審判の場合は、プレーの先を読むわけにはいきません」
「子どもたちの試合にはどうしてもミスが多くなります。先を読んで動いてしまうと、子どもがミスをしたときについていけなくなってしまうのです。どちらかといえば、子どものプレーに少しだけ遅れてついていく、というイメージを持たれたほうがいいと思います。よくレフリーの方々が子どもの試合を審判するときの心構えとして挙げる言葉が『残心』、心を残すこと」
「たとえば、子どもはスライディングしたときに悪気がなくても、瞬時に相手を避けられずに蹴ってしまうことがあります。こういったプレーを見逃さないためにも、お父さん審判はすぐに次のプレーに移らないこと。子どものプレーに心を残して、見守ってあげる、というスタンスが良いと思います」
■大事なのは試合開始10~15分!その理由は……
また、石井さんは主審をする際に陥りがちなミスをこう指摘します。
「これはプロのレフリーも、お父さん審判も、同じように陥りがちなミスなのですが、ファウルをしっかり見極めないといけない、という心理から、やたらとファウルを取ってしまうケースがあります。また、その逆のパターンとして、できるだけスムーズに試合を作ろう、選手たちに気持ちよくプレーしてもらおうと思い、必要以上にファウルを流してしまい、選手がどんどんヒートアップしてしまうケースも陥りがちなミスです」
「プロのレフリーも、お父さん審判も、大事なのは試合の立ち上がり10分から15分です。その時間に試合が出来上がるので、審判の姿勢や基準をしっかりと示す必要があります。子どもの試合でも徐々にギアが上がっていく試合はありますから、最初に毅然とした態度を示し、ゲームをコントロールすることが大事になります」
■お父さん審判が果たす役割は大きい
最後に石井さんは、お父さん審判が頭に入れておいてほしいこと、としてこう付け加えました。
「今の子どもたちはJリーグはもちろん、欧州チャンピオンズリーグやW杯などレベルの高い試合を簡単に観ることができるし、そのなかでレベルの高い優秀な審判を目にしています。だから、お父さん審判の方に少しでも『これは子どもの試合だから……』という慢心があると、痛い目に遭うかもしれません。やはり、笛を吹く前の心構えや準備は非常に大事だと思います」
「また、今はJリーグで笛を吹かれる審判に対するサポーターの反応には、なかなかに厳しい意見が多いという現状もあります。サポーターにはもともと子どもの頃からサッカーをやっていた方が多く、幼いころから審判に対する心象が良くないまま来てしまっていることも一つの原因にあるように感じます」
「僕は、今後の日本サッカーにおいて、レフリーとサポーターの関係改善に、お父さん審判が果たす役割も大きいと思っています。ぜひ、お父さん審判には、子どもの練習試合から、日本のレフリーを代表して笛を吹くのだと頭の片隅に入れつつ、子どもたちの試合に向き合ってもらえればと思います」
石井紘人(いしい・はやと)
サッカージャーナリスト。日本サッカー協会C級ライセンスと三級審判員取得。
大手ホテルでサラリーマン生活をスタートさせ、その後、出版社に転職。2010年からサッカーライターの活動を本格的に開始し、その年にFIFAワールドカップの現地取材を行う。
著書に『足指をまげるだけで腰痛は治る!』、『ロダンのポーズで首と肩の痛みが治る!』(ともにぴあから出版)がある。プロフェッショナルレフェリー家本政明氏との『その歩き方はいけません』やDVD『レフェリング -Laws of the game- 』のプロデュースも担当。現在はサッカージャーナリストとして多くの媒体に寄稿。特に審判批評を専門として「フットボールレフェリージャーナル」で執筆を行っている。
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