運動能力
2011年10月 3日
【コンディショニング第6回】体幹を鍛えるジュニアの基本エクササイズ
皆さん、お元気ですか?わが九州でも、すっかり日差しが和らぎ、スポーツをするには絶好の気候になってきました。しかし、朝夕と日中の温度差で風邪をひいている方も多いようです。くれぐれも季節の変わり目は体調管理に十分気をつけて下さいね。
さて、今回は「ジュニアに必要な筋力トレーニング」をご紹介します。分かっているようで分かっていないベーシックエクササイズです。コアエクササイズに用いられる「コア」ですが、以前もお話ししたよう「コア」、つまり「体幹」とは腹筋だけではありません。身体の大きな動きや姿勢を支える大きな筋肉の総称を「体幹」といいます。つまり、胸や背中、下半身も「コア」=「体幹」なんです。これらの筋肉を鍛えることが様々なスポーツの基本的動作の向上に繋がります。
■スクワット
スクワットとは、膝と股関節の屈伸運動です。使う筋肉は臀部(おしりの部分)やふとももの筋肉で、サッカー選手に限らずスポーツ選手には大切な部位ですね。このトレーニング法もバリエーションが多くありますが、基本のスクワットを説明します。
まず、足幅を肩幅程度に拡げ、背中を真っ直ぐに伸ばします。この時、顎を引き、目線は真っ直ぐのポジションを保ちます。ゆっくりとお尻を突き出すように腰を下げ、床と太股が並行になるあたりまで下げたら、ゆっくりと腰を上げます。エラーで多いのは腰を下ろす動作の際に、爪先より膝が前に出たり、背中を丸めながら腰を下ろすことはNGです。
■プッシュアップ
腕立て伏せのことです。ここでは、子どもにも出来る腕立て伏せを紹介します。子どもの腕立て伏せで多いエラーは腕立て伏せで身体を上げ下げする際に体幹を支持出来ず、腰を反った形になってしまったり、肘を短い範囲で曲げ伸ばしをするなどです。腕立て伏せで狙いたい部位は胸と肩の筋肉になりますから、しっかり、胸の筋肉が伸び縮みしなければなりません。
まず、姿勢ですが、手を胸の前で肩幅程度に拡げ、うつぶせの状態になります。肘を伸ばし、上半身を支えます。この時に体幹を真っ直ぐにし、お腹に力を入れます。出っ尻や腰が反らないようにするためです。次に下半身ですが、膝を曲げ、膝頭の部分で下半身を支えます。目線はやや斜め前に向けます。目線が下がり過ぎると頭が下がり、結果背中が丸まりやすくなりますので、注意します。
※目線が下がり過ぎないよう注意!
■クランチ
腹筋の基本エクササイズです。仰向けに寝て膝を曲げ、胸の前で腕をクロスさすように構えます。おへそを覗きこむように上体を起こします。「肩甲骨」という背中にあるふたつの肩の骨が床に触れない程度まで下げたら、また上体を上げます。
クランチで誤解されるのは、上体を高く上げれば腹筋が強い、という考え方ですが、これは間違いです。おへそを覗きこむように上げる高さこそ、腹筋が最も収縮している角度と言えます。上げる時と下げる時のスピードは同じです。ゆっくりと行うことが大切です。
■バランストレーニング
サッカーは足を使った競技であるため、「走る」、「蹴る」際には必ず片足立ちになります。安定したサーフェイス(床やグランド)の上でまず片足で立つトレーニングを行ってみましょう。意外にじっと静止するとなると、短い時間で足をついてしまったり、ケンケンしてしまいがちな子ども達もいます。いわゆる「開眼片足立ち」ですが、まずスタート時になるべく右脚(もしくは左脚)を曲げ、股関節の高さあたりまで引き上げます。
軸足となる左脚(もしくは右脚)は膝関節を真っ直ぐにし、足の指は床または地面を掴むような気持ちで踏ん張ります。この時、姿勢は真っ直ぐです。顎を引き、お腹にやはり力を入れて体幹のバランスを支持します。片足で姿勢を保持することでよって、姿勢や各関節を固定するために、身体中の筋肉や関節の周りの結合組織が動員され、強化に繋がります。
ちなみに子ども達が楽しくトレーニングが行えるよう、頭の上にミニコーンを乗せ、落とさないようにするといったルールを設けると盛り上がります。
この安定したサーフェイスで完璧に片足立ちが行えるようになったり、アジリティーディスクやバランスボールを使って不安定な状況を作り、さらに難易度を上げていくことも出来ます。
こうした片足でのバランストレーニングを行った後に、ケンケンパやケンケン相撲は大変効果があるトレーニングになりますね。昔の子ども達は遊びの中で基礎体力や運動能力を養っていたんです。
これまで紹介した全てのエクササイズで共通する点は「正しい姿勢で行う」ということです。この正しい姿勢がとれない、もしくは無視してトレーニングを行っているジュニア選手が多いようです。
また、こうした正しい姿勢でトレーニングを行えていない子ども達を見過ごしてしまうことがトレーニングの効果を半減させたり、結果的に怪我に繋がっているしていることを理解しなければなりません。トレーニングで守らなければならない姿勢
は、すなわち、スポーツ動作の基本的な姿勢に他ならないのです。
【正しい姿勢とは・・・】
・骨盤をやや前傾させる(骨盤をやや前に傾ける、腰をちょっとだけ反る)
・おへそを引っ込めて、お腹に力を入れさせる
・顎を引き、首を長くするよう意識し、肩の力を抜かせる
・爪先と膝は常に同じ方向を向ける
あとは実施回数ですが、まずは正しい姿勢を意識し、10回からスタートしましょう。少しずつ増やし、20回の2~3セット行えれば理想です。
筋トレはやった分だけ、必ず効果が生まれます。つまり、「やった者勝ち!!」なのです。
筋トレは怪我を予防し、パフォーマンスを高めます。さあ意識の変革は身体の変革、指導者の変革は子ども達の成長に繋がります。是非参考にしてみて下さい。
江上猛//
えがみたけし ストレングス&コンディショニングを専門とするコンディショニングトレーナー。 福岡県筑後市にてセミパーソナルトレーニングシステム主体のトレーニングジムK2ATT(カット)経営。子どもから高齢者、競技選手にいたる幅広い年齢層とニーズに応じたトレーニング指導を行なうほか、本場中国武術を伝授し、普及活動を行うほか、中国武術を用いた身体操作法や独自のコンディショニング法により、体力増強や競技力向上でも高い評価を得ている。 また、一般社団法人ウェルネスJAPAN教育研修事業部チーフとして、スポーツ指導者、トレーナーのスキルアップ、及びスポーツ現場におけるスポーツ傷害予防を目的としたスポーツ医学やスポーツ科学に基づいた指導法を普及させる活動、セミナー活動も行なっている。
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