運動能力
2012年12月27日
心・技・体を駆使して勝ち取った銀メダル!なでしこジャパンが輝きを放った理由とは?
今年を彩ったなでしこジャパンの活躍。銀メダル獲得の裏にはメンタルトレーニングに導かれた「心の進化」と体幹トレーニングに裏打ちされた「強さ」があった!?
12月23日、なでしこジャパンの大儀見優季選手と熊谷紗希選手、彼女たちに体幹トレーニングを指導する木場克己トレーナー、大儀見選手の夫であり、メンタルトレーニング・コーチである大儀見浩介さん、さらに02年日韓、06年ドイツと2度のW杯出場経験を持つ福西崇史さんが一堂に会したクリスマス・スペシャルトークショー『世界で戦うために』が行われました。
なでしこたちはロンドンの地でなぜ輝けたのか? トークショーの中からその答えの一端をご紹介していきましょう。
■メンタルトレーニングで緊張をコントロール
「自分がドイツリーグでプレーしたことを出してチャレンジする場でした」
ロンドン五輪の感想を聞かれて、熊谷選手が答えます。大儀見選手も、W杯で優勝したとはいえ、あくまでも自分たちがチャレンジャーだったと振り返ります。
ドイツW杯でアメリカを倒し、世界王者となった、なでしこジャパン。それでも選手たちはさらなるレベルアップを目指しました。熊谷選手はドイツへ渡り、大きくて早い選手たちと対峙、大儀見選手は体幹トレーニングに熱心に取り組み“ブレない身体作り”に邁進しました。このチャレンジャー精神が、周囲の期待や多くの重圧を跳ね返して銀メダルを獲得した原動力なったのかもしれません。
大きな大会に向かう姿勢について話は深まります。
2002年W杯に初めて出場した福西さん。「普段あまり緊張しない」という福西さんも、このときばかりはヒザが震えるほど緊張したそう。
「ミスはするだろうなと思っていたので『ミスはしてもいい。その後のことを考えよう』と思ってピッチに立ちました」
実際に、ファーストタッチでボールを失った福西さん。そのときは「本当にミスしちゃったよ」と思ったそうですが、この日は司会も務めたメンタルトレーニング・コーチの大儀見浩介さんによると、ミスをした後パニックになるのが一番いけないこと。その後は落ち着き思ってプレーできたそうです。
熊谷選手、大儀見選手もあまり緊張はしないそうですが「普段通りに過ごすのが一番」「特別なことをしない」ということで意見が一致。メンタルトレーニングを取り入れているトップアスリートは、普段の過ごし方から緊張を上手くコントロールし、トップパフォーマンスを出せる能力にも長けています。大儀見選手は「ロンドンではむしろリラックスする時間が長くて、自分で緊張状態を作っていた」というから驚き。「緊張は必ずしも悪いことではない」大儀見コーチも大きく頷いていました。
■体幹トレーニングで世界と戦う身体を手に入れた
世界中の強豪が集ったロンドン五輪。厳しい戦いを勝ち抜くには心の準備だけでは充分ではありません。トークショーでは、熊谷、大儀見両選手やインテルで活躍する“フィジカル・モンスター”長友佑都選手のパーソナルトレーナーを務める木場克己トレーナーが、彼、彼女たちが取り組んでいる体幹トレーニングを大公開。ブレない身体作りの秘訣を教えてくれました。
木場さんによれば、大儀見選手が相手DFを背負うプレー、反転してゴールに向かうプレーができるようになったのは「脇腹とお尻の筋肉の連動ができるようになった」から。上半身を支える下半身が一本の軸のように、連動して動かせるようになったからだと言います。筋肉のバランスを整えて、色々な筋肉を刺激すると、「反応筋」と呼ばれる筋肉が鍛えられて、一瞬の反応速度が上がる。これを鍛えるために、大儀見選手はドイツW杯以降、さまざまなトレーニングをしているそうです。
実際のトレーニングを公開してくれたのですが、ここで会場にきていた小学生チームから2人の選手が飛び入り参加。特別な道具なしに始められる体幹トレーニングを体験させてもらいました。
「ここから先、さらに上に行くにはこの力が必要」
組織力で世界の頂点に立ったなでしこジャパン。アメリカやフランス、ドイツが組織力のサッカーを志向するようになってくると、そこから先は個の勝負に。大儀見選手がFWらしく「さらに個を磨いて、みなさんを驚かせるようなプレーをしたい」と宣言すれば、DFの要、熊谷選手も「個々がレベルアップすれば比例してチーム力もアップする」と、それぞれが心・技・体のさらなるレベルアップを誓っていました。
なでしこジャパンの選手たちは心・技・体を武器に世界と戦っています。自分の最高のパフォーマンスを出せる心、練習で培った技術、そして、これまで使われていなかった筋肉を上手く使い、バランスを整えたケガをしない強い身体。世界で戦う選手たちが日々鍛えていること。このどれもがサッカーをプレーする子どもたちに必要なことなのです。
大塚一樹(おおつか・かずき)//
育成年代から欧州サッカーまでカテゴリを問わず、サッカーを中心に取材活動を行う。雑誌、webの編集、企業サイトのコンテンツ作成など様々 な役割、仕事を経験し2012年に独立。現在はサッカー、スポーツだけでなく、多種多様な分野の執筆、企画、編集に携わっている。編著に『欧州サッカー6大リーグパーフェクト監督名鑑』、全日本女子バレーボールチームの参謀・渡辺啓太アナリストの『なぜ全日本女子バレーは世界と互角に戦えるのか』を構成。
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