運動能力
2013年1月 7日
運動ができる子になるためには○○の育成が重要。ゴールデンエイジのトレーニング
ゴールデンエイジとは10歳から12歳までの運動能力が急速に発達する期間のことです。まさに運動能力を高めるのに絶好の機会。
また最近ではゴールデンエイジ前のプレ・ゴールデンエイジも注目されています。
しかし、その期間に一体どのようなトレーニングを子供にさせればよいのかわからない保護者も多いことでしょう。
そこで今回、『運動の「できる子」にする! 12歳までに取り組みたい89のトレーニング』の著者・立花龍司さんに、ゴールデンエイジ、プレ・ゴールデンエイジに運動神経を発達させるためのトレーニングについて聞いてきました。
■遊びの中で色々な動きを学び、神経回路を刺激すること
立花さんは国内はもちろん、米大リーグで活躍する選手からの信頼も厚いベテラントレーナーです。立花さんはこう仰ります。
「ゴールデンエイジと呼ばれる期間には、できなかったことが急にできるようになる、見ただけなのにすぐできてしまいます。また、10歳を迎える前の準備段階、プレ・ゴールデンエイジと言われる期間の過ごし方が非常に重要になってきます。サッカー、野球、競技は関係ありません。」
プレ・ゴールデンエイジとは、立って歩けるようになる2歳から9歳までの期間のこと。2歳から6歳までを前期、6歳からを後期と分けて考えることもあります。
「だいたい小学校に上がるまでを前期と考えてください。この時期はとにかく遊びながら運動をすること。お父さん、お母さんが室内でボールを蹴る、プラスチックのバットでボールを打つ、布団で前転してみる、何でもいいですから遊びの中に子どもを加えてあげることから始めましょう」
一緒に遊ぶこと。遊びの中で色々な動きを学び、神経回路を刺激しておくこと。これが後に運動の「できる子」になるか「できない子」になるかの差になります。
「どのスポーツをやるかによって遊びを選ぶ必要はありません。この時期は色々な遊びを楽しみながらやってみてください。ここで両親と一緒に遊んだ経験が、その後、最初に選んだスポーツで伸びる要因になるのは間違いありません」
嫌々やらされるトレーニングと違い、親と遊べるとわかれば子どもは喜んで仲間に加わってきます。まずは親子で遊んでいろんな体の使い方を覚える。これが運動のできる子にする秘訣なようです。
■サッカーだけでなく様々なスポーツを体験させてやることの大切さ
「小学生に上がる頃にはもう一段ステップアップしてサッカーならサッカー、野球なら野球と競技に取り組んでみます。
しかし、日本のスポーツはここからが問題なのです。日本では最初にサッカーを選んでしまうとサッカーしかしなくなりがちです。アメリカでは、小学校ではできるだけ多くの競技を経験して、中学校で3つ、高校でふたつ、大学ではふたつかひとつという風に"それだけ"をすることはありません。
米国の野球メジャーリーグのメッツでトレーナーをしていたときにシンシナティ・レッズにディオン・サンダーズという選手がいました。球場にヘリコプターが下りてきて、何かな? と思っていると、サンダースがアメフトのユニフォームを着て出てきて、野球のユニフォームに着替えるとキャッチボールを始めたんです。彼はNFLとMLBの両方でプレーをしていたんですね。
アメリカにはそういった例は結構ありますが、日本ではない。Jリーグとプロ野球両方でプレーすることはいまの常識では考えられませんよね」
確かにサッカーと野球を両方やっている(いた?)人ですら滅多にいません。日本ではひとつのことに打ち込む美徳、その方が上達するという考え方があるのかもしれません。
「アメリカでは、サッカーは子どもが最初に取り組むスポーツとして重要視されています。それは、身体に無理な負担をかけずにできるスポーツだからです。そこから野球やアメフト、バスケット、地域によってはアイスホッケーなど、たくさんのスポーツをプレーするのです」
確かに日本では一度部活を選ぶと他のスポーツに触れる機会は極端に減ってしまいます。サッカーは上手いけど、ボールは投げられない、逆上がりもできない、そんな子どもが増えているというのもよく聞く話です。
「なぜ日本の部活動はひとつだけなんしょうね? サッカーと野球、ブラスバンドでもいい。ひとつのことに向いていなくても他の能力があるかもしれません。子どもたちは得意なスポーツが自然と上手くなるものです。
選択肢を広げてあげて、上達を促すことは今後、日本における2大スポーツとも言えるサッカー界と野球界が手を取り合ってやっていかなければいけないことだと思っています。超一流の選手を育てる観点から言えば、その選手が将来サッカーに行っても野球に行ってもいいんですから」
■"巧緻性"を育てることが重要
超一流選手を育てるには競技の垣根は必要ない。立花さんは野球チームにはサッカーを、サッカーチームには野球をすることを薦めているそうです。
「"巧緻性"というのですが、自分の身体を思ったように操れる能力、この能力は将来一流選手になるためには不可欠なものです。この巧緻性を養うことで、数ミリ単位での調整や微妙な動きの変化が出せるようになります。
サッカーだけをやっているチームと他のスポーツもやっているチームを比べたら、試合ではサッカーに慣れている方が勝つでしょう。でも、将来的には他のスポーツをやっていた子たちの方が伸びる可能性が高い。目先の勝利から一流は生まれないんです」
サッカー一筋、野球一筋・・・・・・、いいことのように思っていた人も多いと思いますが、巧緻性を養えるのはプレ・ゴールデンエイジとゴールデンエイジの期間だけ。
あとから取り戻せない"いまこの瞬間"、子どもたちが日々どう過ごすかで、その後の選手としての成長が決まってしまうのです。少なくとも小学校入学前と低学年のうちはもっと色々なスポーツを経験して、来るべきゴールデンエイジに備えるのが正しい成長の姿なのかもしれません。
次回は『運動の「できる子」にする! 12歳までに取り組みたい89のトレーニング』の中から、サッカーに役立つトレーニングを厳選してお届けしようと思います。
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立花龍司 (たちばな・りゅうじ)//
1964年7月3日、大阪府生まれ。1989年にコンディショニングコーチとして近鉄バファローズと契約。故障者が激減する実績を残し、翌年に入団した野茂英雄らから絶大な信頼を寄せられる。その後は日本球界のコンディショニングコーチのパイオニアとして、千葉ロッテマリーンズ、ニューヨーク・メッツ、東北楽天ゴールデンイーグルスでコンディショニングコーチやコンディショニングディレクターを歴任。
大相撲の元小結舞の海秀平と共同で監修する鍼灸整骨院併設のコンディショニングジム。ゴールデンエイジやプレ・ゴールデンエイジを対象にしたスクールも開催している。
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