運動能力

2014年1月 8日

サッカーに活かす正しい姿勢づくりを96ジャパントレーナーが伝授

 昨日に引き続き、UAEを沸かせた96ジャパンの並木磨去光トレーナーにU-17日本代表を支えたトレーニングについてお聞きしています。第2回の今日は、特に子どもたちが弱いという、『背中』『胸』『お尻』『肩甲骨』のトレーニングやストレッチを紹介します。
 
<<少年サッカーに活かすトレーニング 96ジャパンを支えた身体作り
 
 

■前屈みの子どもが多い!?

最大限の力を瞬時に発揮するためのパワーポジションの重要性は前回お話ししたとおりです。パワーポジションは多方向に動かなければ行けないサッカーのプレーに適応する姿勢ですが、子どもたちに「構えてみて」というと、前屈みに構える子どもが多いのだそうです。
 
「前屈みになってしまうと、前にしかスタートを切れませんよね。陸上のスタートとは違いますから、サッカーの動きには前後左右どこにでも動けるパワーポジションの方が適しているのです」
 
 また、並木トレーナーはこの前屈みの姿勢が、背中や胸、肩甲骨をうまく使えない子どもがとる姿勢だとも言います。
「しっかり胸を張って、肩甲骨が中に入る姿勢をはじめからできる子どもはまずいません。まっすぐ立つだけで、背中が丸まって、肩甲骨が開いている子どもが多い。こうした姿勢では、アキレス腱やもも、ふくらはぎに負担がかかってしまいます」
 
 前回もお話ししたように、後半の運動量は96ジャパンの大きな武器になっていました。豊富な運動量はカテゴリを問わず日本代表の特徴でもあります。足がつってピッチに横たわっているのはいつも相手チーム。日本の選手たちは体幹を鍛えるトレーニングや試合前のアクティブストレッチ、適切な水分、ミネラル補給で足がつることを予防しているのです。
 
 

■正しい姿勢作りのために必要なストレッチ

 対策は様々ありますが、まずは自分だけでできる、正しい姿勢作りに取り組んでみましょう。
 
「正しい姿勢は形だけ真似してできるものではありません。背中が丸まる理由、胸が開かない理由、肩甲骨が中に入らない理由がそれぞれあるので、その箇所をストレッチしたり、鍛えたりすることで、徐々に姿勢が変わっていきます」
 
①背中のストレッチ
ポイント 正しい姿勢作りを邪魔する猫背。子どもたちにも多い猫背を解消するために、背中の筋肉の緊張をほぐしましょう。背中が固いと身体全体の動きに影響を及ぼします。
 
 
②胸のストレッチ
ポイント 胸を大きく開く動きは必ずやって欲しい動作です。姿勢を良くする=胸を張るという理解だと、骨盤が前傾していたり、腰が反りすぎていたりして、故障の原因になります。
 
③お尻のストレッチ
ポイント お尻はパワーポジションから前後左右に動き出す力を作る重要なパーツです。どの方向にも動けるように柔軟性を高めておきましょう。
 
④肩甲骨のストレッチ コブラ
ポイント 肩甲骨を寄せるようにして行う“コブラ”と呼ばれる種目です。肩甲骨の下の筋肉が弱い選手が多いので、柔軟性だけでなくより肩甲骨を中に入れやすくする目的でも行います。
 
 それぞれのトレーニングは実際に96ジャパンでも行われているものです。肩甲骨のストレッチは、肩こりにも効くので、保護者の方もお子さんと一緒にやってみてはいかがでしょう。
 
 

■セルフコンディショニング、マネージメントの重要性

並木トレーナーはチーム結成当初から96ジャパンに選ばれた選手たちに次の3つのことを言い続けたと言います。
 
1つ目は「自分のことは自分でやること」。代表選手として選ばれてきている選手たちの意識が変わらなければ、チームは強くなりません。前の代になる94ジャパンから共通していることですが、ウォーミングアップの前にストレッチは済ませる。自分の課題だと思う種目を自分で選んで行う。並木トレーナーは「正しい形、ゴールを見せることは大切」と言いますが、同時に「自分で考えてやることはもっと大切」だと言います。
 
2つ目は「試合に向けたコンディショニングの重要性」です。これも、自分で考えて行う、セルフコンディショニングが主になりますが、1週間前から逆算して、いま自分が何をすべきなのか選手たちが自覚的に行動する。食事や休憩も漫然とするのではなく、試合に向けてのコンディショニングとして捉えること。こうしたマネージメントを一人ひとりが意識することが重要です。
 
3つ目は「どんなトレーニングでもサッカーの動作を意識すること」です。基本動作は大切ですが、サッカーの動作と切り離して形だけ身につけても意味がありません。トレーニングは常に「サッカーの動きだったらどうか?」とイメージを持ちながらやるようにします。「逆にプレー中はトレーニングの動きは忘れていい」並木トレーナーは、「プレー中は無理に意識しなくても自然に身体がそう動くようになる」と言います。
 
U-17W杯で世界を驚かせた96ジャパン。そのプレーを支えたのは、できるだけ身体に負担をかけずに動くことのできる正しい姿勢でした。これから身体大きく成長する小学生年代の子どもたちの身体感覚は日々変わっていきますが、正しい姿勢を常に意識することで、ケガから身体を守ることができ、結果として自分の持つ最高のパフォーマンスを続けて発揮できるようになるといいます。
 
 クリスマスにお正月、イベントが続く冬休み中に身体が少しなまってしまった子どもたちもいるかもしれません。一年の初めは身体作りから。新年から少しずつ、正しい姿勢、身体作りをはじめてみてはいかがでしょう。
 
 
並木磨去光//なみき・まさみつ
日本代表アスレチックトレーナー。スポーツマッサージ・ナズー代表。トレーナーとしてW杯、五輪日本代表をサポート。ケガ人の治療、マッサージによる疲労の回復、コンディショニング、リハビリテーションなどを担当。2013年に行われたU-17W杯でもトレーナーとしてチームに帯同し、U-17日本代表の決勝トーナメント進出に貢献した。
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