運動能力
2015年8月11日
【足が速くなるトレーニング】 アキレス腱の使い方がスピードアップに有効なワケ
前回記事『高くジャンプするためのコツをつかむと自然と足が速くなる』にて、高くジャンプするために必要な手の使い方とアキレス腱の使い方が走り方にも有効だということを教えてくれた秋本真吾さん。
後編となる今回は、200メートルハードルのアジア記録を持つ秋本さんに、足も速くなるジャンプのトレーニング方法を教えてもらいました。小学生低学年の子でも、ちょっとしたスペースがあればできるので、公園や空き地、グラウンドや校庭などで、ぜひチャレンジしてみてください。(取材・文 杜乃伍真 写真 サカイク編集部)
■腕の使い方とアキレス腱の使い方
「高くジャンプをするためのコツを掴むと、自然と足が速くなるなど、さまざまなメリットがあります」
そう話すのは、現在、アスリートタレントやモデルとしてテレビなどでも活躍する秋本真吾さんです。
秋本さんが明かす「高くジャンプをするためのポイント」は次の2つです。
・腕をうまく使う(踏み込む足と腕のタイミングを合わせる)
・アキレス腱をうまく使う(アキレス腱を伸張させてバネの勢いを利用する)
前回の記事では初級編として『腕の使い方』を紹介しました。たとえば垂直跳びをするときに、両足を踏み込んでジャンプをするタイミングに合わせて、両腕を下から上へと勢いよく意識的にあげると、より高い跳躍力が見込めます。
さらにアキレス腱をうまく使えるようになると、より跳躍力はアップする――秋本さんはそう断言します。後編はこの『アキレス腱の使い方』を深く掘り下げていきましょう。
まずはその場での垂直跳びを例にアキレス腱の使い方を見ていきましょう。
【×】かかとが地面についた状態だとアキレス腱をうまく使えない
【○】かかとが少し浮いた状態だとアキレス腱をうまく使える
■踵を少し浮かせることでアキレス腱をうまく使う
秋本さんは「足の裏全体ではなく、踵を少し浮かせてジャンプすること」をポイントに挙げます。
「踵を少し浮かせてジャンプをする態勢をとると、ふくらはぎの筋肉(腓腹筋とヒラメ筋など)が硬くなるのがわかると思います。このときにアキレス腱はふくらはぎの筋肉に引っ張られて伸びきった状態になり、次にジャンプをしたときに縮みます。このアキレス腱が伸縮する弾性エネルギーが跳躍力アップを可能にするのです。逆にもし、踵を地面につけたままジャンプしようとしても、アキレス腱は緩んだままの状態なので、ジャンプをしても何も変わらずに緩んでいます。これではアキレス腱が伸び縮みするエネルギーが生まれないのです」
つまり、走るときにもこのアキレス腱の伸び縮みのエネルギーを生かせばよいのです。
ここで秋本さんはいくつかの映像を見せてくれました。一つはカンガルーの映像です。カンガルーの姿を思い浮かべてみてください。カンガルーは人間でいうアキレス腱の部位が非常に長く、その腱をバネのように使ってジャンプをしながら、ポンポンと前進していきます。ポイントは、つま先だけで跳ねるように前進するということです。
もうひとつの映像は、黒人のランナーでした。
「黒人のランナーは、日本人に比べてアキレス腱が長く、ふくらはぎの筋肉がずっと上のほうにあるんです。そして踵ではなく、つま先から着地するように走るので、長いアキレス腱が伸びたり縮んだり、という状態を繰り返し、そのバネによって軽やかに走ることができるのです。筋肉と違いアキレス腱は疲労しないので、筋肉を使って走るよりも有利なんです」
■浦和レッズのファーストステージ躍進の理由はアキレス腱にあり!?
秋本さんは普段、浦和レッズの選手たちの走りについても指導していますが、昨年から取り組んできたことが今年になって実を結んでいるといいます。
「たとえば、去年までの槇野智章選手(日本代表DF/浦和レッズ所属)はほとんどアキレス腱を使わない走り方をしていました。踵から地面に着地してしまう習慣があったために、常に自分の膝下よりも前の位置に踵から着地してしまっていたんです。それでは足の裏をべったりと地面につけている時間が長くなり、身体を前へ運ぼうとするときに、ふくらはぎの筋肉以外にも太腿の筋肉など余計な筋肉をたくさん使ってしまうことになります。それをサッカーの試合で90分間続けていれば筋肉には疲労が蓄積しやすくなるため、かなり非効率です。
ところが、今年の槇野選手の走りは、踵からではなくつま先から着地できているので、地面に接地する面積は小さく時間も短いので、アキレス腱が伸縮するバネを使ってポンポンと跳ねるように走れています。実際、浦和レッズのほとんどの試合で最高速度を記録している選手は、このトレーニングを実践している槇野選手、宇賀神友弥選手、関根貴大選手ら3名で、その効果はデータでも証明されているということです」
ただし、実際にこの走り方を実践しようとした当初は、浦和レッズの選手たちのようなトップアスリートですら、ふくらはぎが筋肉痛になってしまったそうです。
「それは、普段からアキレス腱を伸縮するために必要なふくらはぎの筋肉を集中的に使えず、他の筋肉に分散させて酷使していることの裏返しなので、日頃の習慣から変えていくしかないんです。よくある間違ったケースとしては、咄嗟に前へ進むような瞬間に、つま先で地面をけり上げてしまうというものですが、それでは、逆に太腿のような別の筋肉まで酷使してしまうので完全にNGです。足首に力を入れて、つま先でグンと地面を踏み込み、あとはアキレス腱の反射作用でポンポンと飛ぶように前へ進むだけ、という感覚を掴みましょう」
この走り方を習慣化するために秋本さんがおススメするのが、以下のトレーニングです。意識すべきは、つま先で着地を繰り返し、地面との接地時間を短くすることです。
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