運動能力
2020年5月21日
5分でできる!サッカーの動きに合った持久力回復トレーニング
新型コロナウイルスの段階的な自粛解除や学校再開に伴い、チーム活動の再開を検討しているコーチの方も多いのではないでしょうか、今回は「タニラダー」でおなじみ、ヴァンフォーレ甲府・フィットネスダイレクターの谷真一郎さんに、サッカーの動きに合った持久力回復トレーニングを紹介してもらいました。
■サッカーに必要な持久力を回復するには?
谷さん:「新型コロナウイルスの長期自粛期間によって、子どもたちは指導者が思っている以上に基礎的な体力が低下しています。大きく低下する能力として「持久力」があげられますが、マラソンのような持久力ではなく、スプリントやターンなど高強度のアクションを繰り返すための回復能力が大きく低下しています。選手が自主トレでランニングなどを行っていたとしても、サッカーの動きに必要な持久力、筋力は低下している可能性が高いのです。
そこで、サッカーの動きに合ったトレーニングで段階的に運動強度を高め、低下した持久力を回復していくことが重要となります。
よくやってしまいがちなのが、オフ明けに走り込みを行ったり、いきなり練習量を増やす、練習の強度を上げるといった行為です。オフで体重増加や筋力も低下している中で、そういったトレーニングを行うことは「ケガ」につながる可能性があるので要注意です!
今回の自粛は、誰も経験したことがない長期間のオフでした。焦らずじっくりと準備をしていきましょう。
私がヴァンフォーレ甲府のアカデミー生達にも実践している5分間で取り組めるサッカーの動きにあった持久力回復トレーニングを紹介しますので、ぜひ、みなさんも参考にしてみてください!」
▼5分でできる!サッカーの動きに合った持久力回復トレーニング(連続タニラダー・ドリル)
【谷さんに一問一答】
●Q1:どのようにトレーニングすればよいですか?
動画のトレーニングをいきなり全てやるのではなく、種目と往復数を徐々に増やしていってください。疲労の残り具合によって量を調整していきます。
●Q2:いつトレーニングすればよいですか?
チーム再開前の自主トレーニングにも有効ですし、再開後にチームで取り組んでいくのも有効です。チームで取り組んでいく際には、選手達の状態を確認しながら、種目数と往復回数を設定していってください。また、通常のトレーニングにおいても足がつりやすい選手に対しては、ストップ&ゴーの動きを繰り返す連続ドリルは非常に効果的です。
●Q3:どのくらいの頻度でやればよいですか?
トレーニングの負荷から回復してから取り組んで、積み上げていけると効果的です。全てのメニューをこなせる状態になったら、2日間回復期を設けてから実施していけると効果的です。
●Q4:ジュニア年代でも持久力は低下するのですか?
ジュニア年代の筋肉は、乳酸が出る強度での筋力発揮はできないので、乳酸系の能力には影響は出ませんが、有酸素能力は低下するので、このような運動で有酸素能力の低下を抑えることができます。
乳酸系のトレーニングとして実施する場合は、高校生以上に対して有効です。
●Q5:再開後に直線系の走り込みを行うのはよくないですか?
サッカーは、常に動く方向とスピードが変わるという競技なので、同じスピードで長く走っても、サッカーの動きに適応できません。人の体はトレーニングした内容に適応するので、サッカーの競技特性に合った内容のトレーニングをすることが大切です。
一定スピードのランニングではなく、方向変換を伴ったトレーニングと併せて取り組むと有効です。ランニングのフォームを安定させる目的で、直線的なランニングを繰り返すことは有効ですが、追い込んでフォームが崩れないように気をつけて取り組むことが大切です。
●Q6:サッカーに合った動きでトレーニングするメリットとは?
サッカー的な動きから実施していくことによって、サッカーのトレーニングがスムーズに実施していけるようになります。特に再開後は、いきなり強度を上げず、補強的な要素や、バランス、基礎的なステップワーク等と並行して、低強度のサッカートレーニングから始めていき、徐々に強度を上げていくことが大切です。動くスピード、広さ、時間等、だんだん負荷を高めていくことで怪我のリスクも低下します。
自粛明けの段階的トレーニングの事例については、JFAフィジカルフィットネスプロジェクトでも公開されていますので、指導者の方は、ぜひそちらも参考にしてみてください。
谷 真一郎コーチ/ヴァンフォーレ甲府・フィットネスダイレクター
筑波大学在学中に日本代表に招集され、柏レイソルで1995年までプレー。引退後は筑波大学大学院にてコーチ学を専攻し、その後、20年に渡りJリーグのクラブでフィジカルコーチを務める。500試合以上の指導経験を持ち、2012年にはJ2で24戦無敗のJリーグ記録に貢献。現在はヴァンフォーレ甲府で「フィットネス・ダイレクター」として活動の幅を広げている。