運動能力
2022年12月12日
ジュニア年代のうちに身につけておきたい「骨盤」を意識した正しい姿勢
プロのサッカー選手やチームでも導入され、トレーニングの一環として利用されている「フレックスクッション」。 今回は、フィジカルコンディションの専門家として、「フレックスクッション」の効果検証や実験協力を行った立教大学コミュニティ福祉学部 スポーツウエルネス学科教授の沼澤秀雄先生に、ジュニア年代のフィジカルトレーニングについてお聞きしました。(取材・文/鈴木智之 写真/サカイク編集部)
前回記事:「どの筋肉を動かしているか」を感じよう!見よう見まねを脱却するジュニア年代のストレッチ
■ジュニア年代には筋トレよりもまずは「良い姿勢」
ジュニア年代にやっておきたい「個の能力を上げるためのトレーニング」。でも、何をすればいいのか、悩んでいるお子さん、保護者は多いのではないでしょうか?
その疑問を解決するために、JFAフィジカルフィットネスプロジェクト委員としてランニング指導なども行っている沼澤秀雄先生に話をうかがいました。
(※写真はサカイクキャンプより。本文とは関係ありません)
サカイク読者のお子さまとして最も多い小学生年代は、発育発達の途中なので、筋肉もそれほどついてはいません。その時期にどのようなトレーニングをすれば良いのでしょうか? 沼澤先生は「まず、体の使い方や動きづくりをすることをおすすめします」と話します。
「小学生年代はゴールデンエイジと言われるように、神経系がほぼ出来上がっている年代です。筋肉に刺激を入れてもまだ太くはなりにくいので、筋トレを行うよりも、いろいろな動きを真似するなど、動きを覚えることに意識を向けると良いと思います」
様々な動きを習得する際に、身体の柔軟性を確保しておくこともポイントです。さらに沼澤先生は「良い姿勢」を習慣づけることの大切さにも言及します。
「いまの子どもたちは、携帯ゲームやスマートフォンを長時間使うことも多く、背中が丸まっている『猫背』の状態がよく見られます。我々大人もそうかもしれませんが、背筋を伸ばし、骨盤を起こすといった、正しい姿勢を意識して作ることが必要です」
(※写真はサカイクキャンプより。本文とは関係ありません)
身体づくり、動きづくりの年代であるジュニア期に、正しい姿勢を身につけることは、その後、身体が大きくなっていく上でも重要なことだと言えるでしょう。
■フレックスクッションに座ると正しい姿勢を体感できる
「良い姿勢とは、骨盤が起きた状態です。上半身と下半身をつなぐ役割を果たす骨盤が起きていると、スムーズな動き、動きやすさにつながります。陸上競技の短距離走で、アフリカ系の選手がなぜ速いのかを解析したところ、骨盤が起っていて、お尻が上がっていることがわかりました。その状態だと地面を後ろに蹴りやすく、スピードがアップすると考えられます」
パフォーマンスアップの観点からも、「良い姿勢」はぜひ身につけておきたいところです。沼澤先生が効果検証や実験に協力した『フレックスクッション』には独特な傾斜がついているので、骨盤が起った状態を体感することができるそうです。
「フレックスクッションに座ってストレッチをすると、脊柱が伸びた状態が保たれるので、良い姿勢で行うことができます。フレックスクッションを作る時には、骨盤を正しい位置に持っていくために、何度も傾斜の角度を調整しました」
多くの人は、意識をしないと背中が丸くなり、骨盤の隆起を体感することができません。それが、フレックスクッションに座ることで、自然と感じることができるそうです。
(※2020年10月掲載の記事より)
「ある有名な塾講師の方が言っていました。保護者に『勉強やスポーツの成績を良くするために、家庭で何をするといいのでしょうか?』と聞かれたときは『食事のときの姿勢を良くさせてください』と答えるそうです。それぐらい、姿勢が勉強やスポーツに与える影響は大きいのです」
■ストレッチで背筋や腹筋に意識を向けてみよう
良い姿勢の重要性は、トップレベルの選手のプレーを見ると明らかです。どの選手も背筋が伸びていて、スラッとした立ち姿をしています。言い換えると、猫背でサッカーの上手な選手はほとんどいません。
「サッカーの場合、背筋が伸びて骨盤が起きていると、頭も上がってるので、視野を確保しやすくなります。足元のボールを意識しすぎると、上体が前かがみになりがちなのですが、その姿勢ですと、視野が狭くなります」
(※写真はサカイクキャンプより。本文とは関係ありません)
顔を上げて視野を確保し、周囲の情報を収集することは、良いプレーをするために必要なことです。
「子どもたちに多い猫背の原因は、背筋が緩んでいて、腹筋が使われていないことです。そのためにもストレッチをして、背筋や腹筋に意識を向け、自分の身体がどう動いているかを感じてみてください」
■親がサポートすることでコミュニケーションにも
ストレッチをするときに、保護者がお子さんの背中を押してあげるのも、「コミュニケーションの一環になる」と沼澤先生は言います。
「練習や試合から帰ってきて、お風呂からあがって筋肉が柔らかくなっているときに、ストレッチのサポートとして背中を押しながら、『今日のプレーはどうだった?』などと話をするのもいいと思います。足を開いて手を前から引っ張る、背中を押してあげるといったサポートをすることで、一人では伸ばしきれないところにも働きかけることができますから」
フレックスクッションを使って、親子で交互にストレッチをしながら、正しい姿勢はどういうものなのか、どこの部位が伸びているのか、骨盤がしっかり起っているのかなど、お互いの感想を言い合うのも良さそうです。
親子で使えるフレックスクッション。一家に一つあれば、家族全員で長く使えるので、ぜひ試してみてください。親子の新たなコミュニケーションツールになるかもしれません。
沼澤秀雄先生
立教大学コミュニティ福祉学部スポーツウエルネス学科教授、日本陸上競技連盟指導者養成委員会副委員長、日本サッカー協会フィジカルプロジェクト委員ランニングコーディネーションコーチ。 生理学的な指標を用いてスポーツ選手の競技力向上をテーマにして研究を行っている。 三菱浦和フットボールクラブ(浦和レッズ)のフィジカルコーチを務めた経験も持つ。