健康と食育

2011年7月11日

夏の熱中症対策-水分補給編

■水分補給を考える

過去には、「運動中に水分を補給すると動けなくなる」と考えられていた時期もありましたが、現在では、それは完全な誤りで、「運動中には水分を補給しないと脱水になる」ということが、当然のこととして認識されています。それでは、スポーツのときに水分補給を適切にしていれば熱中症にはならないのでしょうか? 前回に続いて、日本体育協会スポーツ科学研究室の伊藤静夫さんに話を伺いました。

■飲みやすい物を飲むことが大切

熱中症を予防するために、「スポーツのときに最適な飲み物はなんですか?」と質問をされたら、「汗で失われた水と塩分を取り戻す必要があるのですから、塩分と糖分の含まれているスポーツドリンクをオススメします」と答えるでしょう。とはいえ、「これを飲みなさい」だとか「これを飲んではいけない」という飲み物はありません。

暑いときには、ぬるい物よりも冷たい物が飲みたくなると思います。冷たいほうが、すっと胃にとおって体に吸収されやすく、飲みやすいと感じるからです。また反対に、甘いジュース類は飲みたいと思わないはずです。糖質の濃度が高いと胃のとおりがよくないので、ベタベタしていて、とても甘ったるく感じるからです。人間は水分を欲しているときには、薄味でサラッと飲める物を求める傾向にあります。それは体が要求するからなのです。

だからといって、子どもに持たせるスポーツドリンクを、水で薄くしてサラッとさせてしまう必要はありません。本人が「甘い」と感じたら薄めて、「甘くない」と思えば、そのままで構わないのです。甘さは飲む人の感覚です。個人差があるので、本人が飲みやすいと思える物を飲ませればよいのです。

■水分補給が必要なのは、体温調節機能を損なわないようにするため

われわれの体は、気温の上昇や運動により、汗として水と塩分が放出されます。そのまま失われた水分を補給しないでいると、血液の循環が悪くなることで体温調節機能が働かなくなり、体温が上昇して、意識障害をひきおこすことがあります。こうなってしまったら、死の危険すらある緊急事態です。自分自身で体温をコントロールすることができなくなってしまったのですから、とにかく氷で体を冷やすなどの処置をしながら、救急車で病院に搬送しなければなりません。

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