健康と食育
2013年4月 3日
サッカー育成年代へのサポート体制は、まだまだ整っていない?食とメディカルの観点で考える
3月はじめ、東京江東区でとても興味深いセミナーが行われました。その名も「現場に役立つスポーツ医学研究会 サッカー編」。“育成年代へのアプローチ”という副題がついたこのセミナーは、医師や理学療法士、柔道整復師、鍼灸師やアスレティックトレーナー、管理栄養士をはじめ、スポーツ、特にサッカーの現場に関わりを持つ、幅広い層の専門家たちが集まりました。
講師として招かれたのは育成現場の第一線で活躍する各分野のエキスパートたち。ある程度の専門知識を有する人たちを対象にしたセミナーですが、日々現場で選手と触れ合っている講師のお話は、まさにリアルな“いま”を捉えたタイムリーな話題ばかり。
子どもたちと触れ合う指導者、保護者の方にも参考になる情報がたくさんあったので、ここでその一部をご紹介しようと思います。
■まず、朝ごはん!
次に食事バランス「サッカーに関わる全ての方々」を対象として明記している今回のセミナーでは、6人の豪華講師が登場。
まず、はじめに登壇したのは、FC東京の栄養アドバイザーとして育成年代からトップチームまでの栄養指導にあたっている管理栄養士、久保田尚子さん。成長期の子どもたちに必要な栄養について、チーム指導などご自身の経験から実例を引いてわかりやすく教えて下さいました。「育成年代は正しい食習慣を身につける最後のチャンスです。今しかありません」 久保田さんは言います。
食事をしっかり摂れない選手はサッカーもうまくならないし、集中力も散漫になり、ケガにつながるケースも多い。これはサッカー界では常識になりつつあります。「栄養が大切なのはわかるけど、何から手をつけていいか……」というお母さんもいらっしゃると思います。久保田さんによると「まず必要なのは朝ごはん」。朝食を食べた子どもと、食べない子どもでは集中力や注意力に大きな差が出るというのです。よく言われる「早寝、早起き、朝ごはん」はサッカーがうまくなる第一歩です。
朝食の次に気をつけたいのは食事のバランスです。「意識の高いプロ選手は、自分の食べたもので身体は作られることを自覚して、食事にも気をつけています」。特に久保田さんが強調したのは、『おかず』に比べて軽視されがちな「主食」の大切さ。主食をしっかり摂れるかどうかは試合中のパフォーマンスに大きな影響を与えると言います。
17歳までの成長期では、基礎代謝+日常生活分+成長分ですが、スポーツ(サッカー)をしている場合はそれに運動分を上乗せしなければいけません。ごはんやパンなどの主食をしっかり摂った上で主菜や副菜をバランスよく。厳密なカロリー計算をしなくても、これだけで体の動きに目に見える違いが生まれると言います。 『練習の総仕上げは食事!』 食べることまで練習プログラムに組み込むのを徹底出来れば、これは大きな違いになりそうです。
●管理栄養士 久保田尚子氏
FC東京(育成からトップチームまで)栄養アドバイザーの他、大学や専門学校非常勤講師などを兼任
■求められるメディカル、トレーナーの連携強化
続いて講演したのは今回のセミナーの主催者でもある国際スポーツ医科学研究所の金成仙太郎さん。名古屋グランパスエイトのメディカルスタッフとしての経験や、現場で選手を預かるアスレティックトレーナー、理学療法士の立場から、サッカー育成現場へのサポートシステムの必要性を訴えます。
これからの育成年代の成長の鍵を握るのは「専門知識を持ったトレーナーと指導者の連携」。高校生年代では一般的になりつつあるトレーナーも、小中学生に関わるトレーナーはわずかに4%。絶対数の不足、受け入れ先の不足、ボランティアでの参加が多い点などなど、まだまだインフラが整っていない状況の中で、サポートシステムの普及の必要性、具体的な実施方法を提示されていました。
金成さんによると、「指導者の中にはトレーナーに来て欲しいと思っている方も相当数いる。サッカーの現場に出たいトレーナーもたくさんいる。お互いのニーズをいかにマッチングしていくかが今後の課題」だと言います。
●理学療法士 金成仙太郎氏
国際スポーツ医科学研究所代表。アスレティックトレーナー・理学療法士として、医療機関、スポーツチーム、パーソナル、大会サポート、教育機関、セミナーなど幅広く活躍中
ここで盛りだくさんのセミナーは小休止。 ランチョンセミナーとしてアシックスJAPANの井上太郎さんが「育成年代、女性選手の障害予防を考えたシューズ開発」をテーマに、アシックスの最新シューズ開発秘話などを披露してくれました。子どもたちの足に合わせたシューズ選び、成長に応じたサイズやソールの機能など、靴の選び方のワンポイントアドバイス。多くのデータに基づいた靴作りの実際が窺えました。 順を追ってご紹介していきますが、今日はここで一区切り。明日は、いよいよ育成現場でのメディカルサイドのお話に進みます。
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