健康と食育
2013年7月 1日
水分補給の2つの目的、身体から失われた水分を取り戻すのと、もうひとつは?
なかなか雨が降らない今年の梅雨。毎日もう夏がやってきてしまったかのような暑さが続きます。暑さといえば忘れてはいけないのが熱中症対策。特に湿度が高くまだ身体が暑さに慣れていないこの時期は要注意。深刻な熱中症にならなくても、暑さで頭が働かずプレーに影響が出たり、汗によって水分、ミネラルが失われると、けいれん、つまり「足がつる」原因 になるとも言われています。
各年代の日本代表トレーナーとして、暑さ対策が重要課題の中東遠征の経験も豊富な並木磨去光トレーナーに熱中症、水分補給についてお聞きしました。
■練習からこまめに少しずつを徹底
「練習に水筒は必需品。アスリートは練習中であれ、試合中であれ常に水を飲むことを意識しなければいけません」
並木トレーナーによれば「試合で勝ちたかったら水のとり方も練習すべき」。それくらい重要な要素だといいます。
「熱中症対策としての水分補給は当然ですが、アンダ-カテゴリを含む日本代表でも水分を十分にとらなければパフォーマンスの低下、プレーの質の低下は避けられません」
水分補給の目的は主にふたつ。
「ひとつは汗となって身体から流れ出た水分を取り込むこと。この場合は同時に失われたミネラルや糖質も同時に摂取できるスポーツドリンクが望ましい場合も多いでしょう。もうひとつは身体を“冷やす”目的です。口から摂るだけでなく、首の後ろや首筋、筋肉を冷やす意味でもも前に直接水をかけるのも効果的です。マラソンランナーがやっているのをテレビで見たことがある人もいるでしょう。マラソン競技では給水ポイントでの水分補給、身体の冷やし方が、勝敗を分けることがあるほどパフォーマンスに大きな影響があるのです」
最近は練習でも水筒を持参するチームが増えてきました。水分補給のポイントはとにかくこまめに少しずつ。15分を目安に水を飲むようにするといいようです。
「夏の暑い時期の試合中は、水のボトルを炎天下に置いておかなければいけないことも多いので冷やして出しますが、通常は常温でいいでしょう。冷たい水をがぶ飲みすると水分補給の前にお腹を下してしまう子どももいます。少しずつ、その代わり喉が渇く前に水を飲むことが大切です」
一方で身体を冷やす目的で使う水は冷たい方がいいそう。
「試合中は体温がどんどん上昇していきます。炎天下では熱中症のリスクを避けるためにも、ハーフタイムなどに徹底的に身体を冷やしましょう。ジュニア年代の日本代表では氷水につけたタオルを絞って、ユニフォームの中に入れ、背中や首の裏に当てて身体の熱を取るということをよくやっています。試合中の選手の身体に当てていると、冷え冷えのタオルでもすぐにぬるくなってしまう。ジュニアサッカーチームで大量の氷を用意するのは大変かもしれませんが、ケガをしたときの応急処置や熱中症予防に欠かせないものです。クーラーボックスなどで用意するといいでしょう」
■汗をかくことになれる
小学生年代の試合は夏休みに多く組まれる傾向があります。もうすぐやってくる夏、サッカーに没頭するためにも、早くから準備をしておく必要があります。
「気温の上がりはじめは身体が暑さに順化していないので、あまり汗をかきません。汗は暑さから身を守る体温調節機能を担っているので、汗をかかない状態では体内にこもった熱を上手く放出できていないことになります。水を飲む習慣をつけて、気温が低くても汗をかく身体にしておくことが大切です」
どのカテゴリでも日本代表クラスになると40度を超えるような過酷な環境で試合をしなければいけません。酸素の薄い高地で試合をするときには、早めに現地に入り高地トレーニングをする場合があります。これは身体を「酸素が薄い状態」に慣れさせるため。夏の暑さ対策も同じことで、気温が高い場所に慣れて、身体が汗をかきやすい状態にするのだそうです。
「汗腺という汗を出す腺を開いてあげるということなんです」
日中クーラーの効いた部屋で過ごしていると汗腺が閉じてしまい汗をかきにくくなります。過剰な空調は体の体温調節機能をおかしくする可能性もあります。急に気温が上がる季節は熱中症が多いと言いますが、並木さんが過去に見た代表チームの合宿でも気温の低い地域 からやってきた選手が熱中症になるケースが多かったそうです。
「まだ気温が上がりきっていないうちから水分補給を習慣づけて、汗をかく身体を作っておきましょう」
連戦が続く暑い夏。短い夏を楽しく乗り切るためにも、いまからしっかり準備をしておきましょう。
次回は試合中の効果的な水の摂り方、プレーに効く水分補給を教えてもらいます。
並木磨去光 //
なみき・まさみつ
日本代表アスレチックトレーナー。スポーツマッサージ・ナズー代表。トレーナーとしてW杯、五輪日本代表をサポート。ケガ人の治療、マッサージによる疲労の回復、コンディショニング、リハビリテーションなどを担当。今年行われたAFC U-16選手権では久しぶりにアンダーカテゴリーのトレーナーを担当。チームの準優勝、2013年に行われるU-17W杯出場権獲得に貢献した。
1