健康と食育

2014年11月10日

羽生結弦のケースから考えたい!スポーツ事故の正しい対応

土曜日に行われたフィギュアスケートの中国グランプリで、羽生結弦選手が公開練習中に他の選手と接触。ケガを負いながらもフリープログラムを滑り切るという出来事がありました。
 
ケガを押しながら最後まで滑りきった羽生選手には賞賛の声が上がるとともに、医療従事者やトレーナー、コーチからは「脳震盪(とう)のリスクを軽く見ている」、「競技を続けさせるべきではなかった」という批判の声も上がっています。
 
美談か、常軌を逸した危険な行為か。スポーツ選手が自ら鍛えた技術と身体、心を駆使して戦う勝負の場をこうした二元論で語ることは避けますが、“一時は記憶が混濁した”との報道もある羽生選手のケースを教訓にすべきなのは間違いありません。
 
こうした突発的なケガへの対処は、サカイク読者のあなたにとっても、もちろん人ごとではありません。こういった突発的なケガは、トップレベルの競技だけでなく、週末ごとに行われる少年サッカーの試合、クラブ、スクールでの練習でも起こりうることです。
 
サカイクではこれまでも子どもたちが安全にサッカーを続けるための予防策や対処法について紹介してきました。今回は羽生選手の身に起きたことをきっかけに、改めてサッカーをプレーする上で「私たちにできること」の重要性を考えたいと思います。
 
文 大塚一樹  写真 Getty Images
 

■サッカーは遅れている? 試合中の事故、負傷への取り組み

「サッカーの関係者にも、もう一度考えてみてもらいたい」
 
救急医療のエキスパートで東京医科大学救急医学講座兼任教授を務める太田祥一先生に話をうかがった時のことです。太田先生は、繰り返されるサッカー選手の試合中の死亡事故について、はっきりと「対策ができていない」とおっしゃいました。世界トップレベルの試合環境が整うはずのヨーロッパでも、FIFAの主催の試合でも、サッカーは試合の流れを重視するあまり、メディカルの対応が遅れていると言います
 
「なにが大切なのか考えれば、わかることです」
 
ブラジルW杯決勝の舞台でも、ドイツ代表のクリストフ・クラマー選手が相手選手と激突し脳震盪を起こしたにもかかわらず、ピッチに戻ってプレーを続けるという“事件”も起きています。クラマー選手は激突後、交代でベンチに下がりましたが、直後に主審に対して「この試合はW杯の決勝ですよね?」と聞くなど、意識が混濁していたということです。
 
主審は近くにいたチームメイトのシュバインシュタイガーに「交代させたほうがいい」と忠告したそうですが、プレーを続けさせたドイツチーム、「させたほうがいい」と言うに留めた主審の判断は、果たして正しかったのでしょうか?
 
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