健康と食育
2016年3月30日
食べたいものを食べたいだけ食べさせなさい!子どもの身体をつくる栄養素とは
サッカーをする子どもの身体が成長するために、親にできることはなんでしょうか。
今回、ふたりの専門家にフィジカルやコンディショニングについて話を伺いました。かつて韓国代表のフィジカルコーチとして、2012年のロンドン五輪、2014年のブラジルワールドカップで手腕を発揮し、現在はFC東京のフィジカルコーチを務める池田誠剛さんと、サッカーコンサルタントとして育成年代の課題を解決するかたわら、FC東京の幸野志有人選手を育てた幸野健一さん(アーセナルサッカースクール市川代表)です。より良い食事の摂り方、成長に必要な栄養素と休息の考え方など、子育てに役立つ情報満載ですので、ぜひ参考にしてみてください。(取材・文 鈴木智之 写真 八木竜馬)
■食べたいものを食べたいだけ食べさせなさい
幸野:池田さんは韓国代表のフィジカルコーチとして、2012年のロンドン五輪、2014年のブラジルW杯では、ホン・ミョンボ監督と一緒に仕事をされましたよね。ロンドン五輪では、日本に勝って銅メダルを獲得しました。日本と韓国というアジアのトップレベルを知る池田さんにうかがいたいのですが、日本と韓国の選手を比べたときに、フィジカル面でどのような違いを感じますか?
池田:選手個々によって違いはありますが、全体的に韓国の選手の方が身体が大きく、強い印象があります。もともと、韓国の選手は食事の量が多いです。日本の食育指導は高い水準にあると思いますが、その反面、好きなものをたくさん食べさせてもらえない現状もあります。韓国は「食べたいものを食べたいだけ、食べなさい」という考え方なので、結果として食事量の違いにつながっているのかなと思います。
■水分補給とアミノ酸は欠かせない
幸野:以前、池田さんと話をさせてもらったときは、ちょうどU-19韓国代表の遠征から帰って来たときでしたよね。当時、池田さんが「韓国の選手は、身体を鍛えるために、何を食べればいいかを質問してくる。でも日本の選手は一切、聞いてこない」と言っていたのが印象に残っています。
池田:日本も韓国も遠征に行くと、だいたい食事はバイキング形式です。日本の選手は「どれが美味しいですか?」と聞いて選びます。韓国の選手は「どれが身体のために良いですか?」と聞いて選ぶ。その違いは感じます。
幸野:食事の量と質が違うんですね。私の息子(幸野志有人/FC東京)が、JFAアカデミー福島に入学したとき、中学生は1日3150キロカロリーを摂取するようにと指導されていました。最初は量を食べることができなくても、日々、意識してたくさん食べることで、胃が拡張して入るようになります。
池田:私は、食事や休息も含めてトレーニングだと思っています。韓国の選手の場合、チゲをよく食べますが、その中に摂取するべきほとんどの栄養素が入っていて、とにかくたくさん食べます。キムチの中にも、すごい数のアミノ酸が含まれていますよね。筋肉を作るためにアミノ酸は必要で、いくらトレーニングしたとしても、アミノ酸をはじめとする栄養素を摂らないと、筋肉は大きくなりません。それどころか、アミノ酸が足りないと、ケガにつながることもあります。
幸野:韓国の食文化の中で、選手たちは自然と体に良いアミノ酸を摂取しているわけですね。その結果として、大きくて強い体になります。サッカーのように体を酷使するスポーツの場合、炭水化物だけでは補いきれません。筋肉などのタンパク質から分解されたアミノ酸がエネルギー源として使われるので、水分補給とアミノ酸を摂取することも欠かせない。それは知識として知っておくべきだと思います。
■食事、アミノ酸、休息をセットで考えることが大切
幸野:サッカー少年のお父さんお母さんの立場から、子どもたちのフィジカルやコンディションを向上させるために、できることはなんでしょうか?
池田:まずは食事の量を増やすこと。これはエリート選手だけでなく、一般の子たちにも言えることだと思います。親が共働きで、どうしても練習後すぐに食事ができないのであれば、アミノ酸の補助食品などを摂取するのもひとつの方法だと思います。成長期の子どもたちに必要なのは食事の量を増やして、よく寝ること。練習と休息をセットで考えることが大切だと思います。
幸野:食事まで含めてトレーニング、という考え方ですね。
池田:そのとおりです。Jリーグのクラブも、アカデミーの選手の食事に目を向けるチームが増えてきましたが、まだ数は少ないと思います。その中でアドバイスをするならば、まずは好きなものだけでも良いので、とにかく量をたくさん食べること。そこから徐々に食事の内容にも目を向けていく。子どもたちにとっては、それが大切なことだと思います。
池田誠剛(いけだ・せいごう)/写真・左
FC東京フィジカルコーチ
1960年、埼玉県生まれ。現役時代は古河電工でプレー。引退後、古河電工(ジェフ市原)のヘッドコーチ、フィジカルコーチとして活動。1997年から10年間、横浜F・マリノスのフィジカルコーチを務めた。その後、釜山アイパーク(韓国)、浦和レッズアカデミー、韓国の年代別代表、韓国代表のフィジカルコーチを担当し、2012年のロンドン五輪では銅メダル獲得に貢献。2013年に岡田武史氏が指揮をとった杭州緑城のフィジカルコーチを務めた後、韓国代表のフィジカルコーチとして、2014年ブラジルワールドカップに帯同した。2015年はロアッソ熊本のコンディショニングアドバイザー、香港代表のフィジカルコーチを担当。2016年より、FC東京のフィジカルコーチに就任した。
幸野健一(こうの・けんいち)/写真・右
サッカーコンサルタント/アーセナルサッカースクール市川代表
1961年、東京都生まれ。17歳でイングランドにサッカー留学後、現在まで40年に渡ってサッカーを続け、年間50試合以上プレーする。かつては広告代理店を経営し、2002年の日韓ワールドカップ招致活動など、サッカービジネスにも携わった。2013年からは、育成を中心にサッカーに関する課題を解決するサッカーコンサルタントとして活動中。息子の幸野志有人はJFAアカデミー福島を経て、16歳でFC東京に加入したプロ選手。
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