健康と食育

2016年3月31日

フィジカルコーチの第一人者が語る!親にできる4つのコンディショニング管理とは

サッカーをする子どもの身体が成長するために、親にできることはなんでしょうか。
 
ふたりの専門家に、フィジカルやコンディショニングについて話を伺いました。かつて韓国代表のフィジカルコーチとして、2012年のロンドン五輪、2014年のブラジルワールドカップで手腕を発揮し、現在はFC東京のフィジカルコーチとして活動中の池田誠剛氏と、サッカーコンサルタントとして、育成年代の課題を解決する傍ら、FC東京の幸野志有人選手を育てた幸野健一氏(アーセナルサッカースクール市川代表)です。今回は、お子さんのサッカー上達のために親にできる4つのコンディショニング管理を紹介します。(取材・文 鈴木智之 写真 八木竜馬)
 
 
<<前編『食べたいものを食べたいだけ食べさせなさい!子どもの身体をつくる栄養素とは』
 

■自転車のサドルは高めにして乗ろう

幸野:池田さんは日本のフィジカルコーチの先駆けとして、国内外で指導をしていますが、日本の子どもたちを見て、フィジカル面で気になることはありますか?
 
池田:子どもたちが自転車に乗っている場面をよく見かけるのですが、サドルを低くして乗っている子が多いんですね。低い姿勢で自転車に乗っていると、太ももの前側を使うことになります。太ももの前側の筋肉はブレーキ筋です。アクセルを踏んで前に進むために使うのは、太ももの裏側の筋肉です。これは走るときや、スピードを上げるときに必要な筋肉です。サドルを高めにして乗ることで、この太ももの裏側の筋肉を使えます。
 
幸野:それはおもしろい視点です。お父さんお母さんは、気がついたら直してあげてほしいですね。最近の育成年代の選手は、人工芝のグラウンドでプレーすることが増えた結果、腰椎分離症(疲労骨折の一種)を始め、ケガ人が増えたように感じます。そのあたりはいかがでしょうか。
 

■いろいろな環境でプレーすることがケガ予防にもつながる

池田:走った後に止まる動きが苦手な段階で、急に方向を変えたり、止まったりという動作が多いと、ひざや腰、足首など、成長過程にある関節に負担がかかって、ケガをしてしまいます。ただ、アメリカの論文によると、子どもの頃から人工芝でプレーしている子には、人工芝が原因のケガはほとんどないそうです。一方で、最初は天然芝でプレーしていて、後に人工芝でプレーするようになると、けがは増えるようです。身体は環境に順応していくものです。小さい頃ころは天然芝、人工芝、土など、いろいろな環境でプレーすることで、それぞれのグラウンドに適したコーディネーション能力や技術をつける。そういう刺激の与え方ができたら一番いいと思います。
 
幸野:たしかに、私はいまアーセナルサッカースクール市川の代表として、幼稚園から中学生までを指導していますが、子どもたちの適応のスピード、成長の速さにいつも驚かされます。我々大人は、子どもたちが成長できる環境を作ることが一番大切だと感じていますし、そのための活動を続けていきたいと思っています。サカイク読者であるサッカー少年のお父さんお母さんに向けて、子どものフィジカル面を伸ばす上でのアドバイスはありますか?
 
 

■スリッパは履かせないで!足の指が使えなくなりケガの原因につながる

池田:子どもたちには、なるべく裸足で生活させてほしいと思います。いまの住環境は、フローリングの床にスリッパを履いて生活する形が主流です。その結果、足の指を使えない子が増えています。
 
幸野:そうなんですか。
 
池田:スリッパが脱げないように歩く場合、足の指を反らせて歩きます。本来、足の指は手の指と同じように、物をつかむ力があるわけです。足の指で地面をつかむ動作ができれば、土踏まずができます。でも、いまの子どもは足の指が反っているので、土踏まずがない子が多い。その結果、ひざが内側に入ってしまい、前十字靭帯を切る選手が増えています。また、方向転換の際に指がまったく使えないため足の外側にも過度に加重してしまい、第五中足骨(足の小指の根本、足の甲にある骨)に負担がかかるケースもあります。
 
幸野:いわゆる、ジョーンズ骨折(第五中足骨骨折)ですね。
 
池田:そのとおりです。よく「いかにして、ケガをしない身体を作るか」という言葉が使われますが、ケガをしない身体を作るのではなくて、人間の身体が本来持っている力を出せるように、元に戻してほしいと思っています。土踏まずという、本来人間の足にあるべきものがなくなると、身体がゆがんでしまいます。オスグッドや第五中足骨の骨折、シンスプリントなどは、成長期によくあるケガということで片付けていますが、サッカー選手にとても多いのです。
 
幸野:私の周りにも、プロからアマチュアまで、オスグッドや第五中足骨骨折、シンスプリントで悩んでいる選手はたくさんいます。
 
池田:それはスリッパを履くことであったり、足の指を使わないことなど、生活習慣にも原因があると思っています。ほかにも、インサイドキックを教えるときに「足首を固定して蹴る」と教えるのも、要因のひとつにあると思います。足首を固定しようとすると、足の指が反ってしまいますから。
 
幸野:たしかに、実際にやってみるとそうですね。
 
池田:シンクロナイズドスイミングの選手は、立泳ぎをしているときは足首を固定して、指を反るそうです。その後に何をするかというと、もちろん美しく足を見せるためでもあるのですが、水中で逆さまになって足が水面に出た時に、足の指をクッと曲げるんですね。
 
幸野:つまり、指を反らせた後には、正常に戻すために曲げる動きをしたほうがいいということですね。
 
池田:伸ばしたら、曲げる。そうしないと、負傷箇所が増えてしまいます。あとは、携帯ゲームの悪影響もあります。人間の目は両眼視をすることで、物を立体的に見ています。つまり、片目でしか見ていないと、立体的には見えてこないんです。両目で見ることで、正しい距離感を測ることができます。ところが、携帯ゲームは片目でも立体的に見えるように作られているので、両眼視をする子が減っています。だから深さを測ることができずに、適切な距離にボールが蹴ることができない。目の研究をされている方と話したときに「最近は、片目でしかものを見ることができない子が増えている」と言っていました。
 

■疲労回復にはアミノ酸の摂取が不可欠

幸野:おもしろい視点です。日常生活の改善に、フィジカル向上のヒントが隠されているわけですね。それと日本の子どもたちは、長時間練習しているケースもまだ見受けられます。個人的には、トレーニングの長さよりも質に目を向けるべきだと思っています。疲労回復には栄養や睡眠、とくにアミノ酸の摂取が不可欠だと思いますが、休息の重要性についてはどうお考えですか。
 
池田:毎回の食事で必要な栄養素をしっかり摂り、よく眠ることが重要だと思います。コーチとしては、トレーニングをすることで、コンディションが右肩上がりになる状況を作りたいわけです。そこでアミノ酸などの栄養と睡眠をしっかり摂らないと、身体が回復しないまま、次の日の練習を迎えることになります。そうなると疲労がたまる一方ですし、ケガのリスクにもつながります。
 
幸野:サッカー少年のお父さんお母さんには、非常に参考になるアドバイスだったと思います。ありがとうございました。
 
池田:こちらこそ、ありがとうございました。
 
 
池田誠剛(いけだ・せいごう)/写真・左
FC東京フィジカルコーチ
1960年、埼玉県生まれ。現役時代は古河電工でプレー。引退後、古河電工(ジェフ市原)のヘッドコーチ、フィジカルコーチとして活動。1997年から10年間、横浜F・マリノスのフィジカルコーチを務めた。その後、釜山アイパーク(韓国)、浦和レッズアカデミー、韓国の年代別代表、韓国代表のフィジカルコーチを担当し、2012年のロンドン五輪では銅メダル獲得に貢献。2013年に岡田武史氏が指揮をとった杭州緑城のフィジカルコーチを務めた後、韓国代表のフィジカルコーチとして、2014年ブラジルワールドカップに帯同した。2015年はロアッソ熊本のコンディショニングアドバイザー、香港代表のフィジカルコーチを担当。2016年より、FC東京のフィジカルコーチに就任した。
 
幸野健一(こうの・けんいち)/写真・右
サッカーコンサルタント/アーセナルサッカースクール市川代表
1961年、東京都生まれ。17歳でイングランドにサッカー留学後、現在まで40年に渡ってサッカーを続け、年間50試合以上プレーする。かつては広告代理店を経営し、2002年の日韓ワールドカップ招致活動など、サッカービジネスにも携わった。2013年からは、育成を中心にサッカーに関する課題を解決するサッカーコンサルタントとして活動中。息子の幸野志有人はJFAアカデミー福島を経て、16歳でFC東京に加入したプロ選手。
 

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