健康と食育

2017年8月16日

Jリーグ選手の管理栄養士に聞いた、野菜の栄養を効率的に摂る食べ合わせ&野菜嫌い克服法

■調理法より有効な野菜嫌い克服法

ではそもそも、「野菜が嫌い」という子どもにはどのように野菜を食べさせれば良いのでしょうか。ジュニア世代の栄養指導の経験も豊富な川端さんから意外な事実をたくさん伺うことができました。
 
 
まず調理法についてですが、"刻む"よりも"粉々"にした方が子どもたちには食べやすくなるのだそうです。
 
「子どもが嫌いな野菜を食べさせようとしてまず思いつきがちなのが、包丁で細かく刻んでほかの食品に混ぜることですが、これは実はあまり効果がないときがあります。細かくすると余計に香りや食感が際立ち、味も悪目立ちしてしまうからです。苦手な野菜だけでなく、混ぜられたほかの食材も食べなくなってしまうという悪循環さえも生じることがあります。もし混ぜるのなら、フードプロセッサーで粉々にして、うまく溶かし込みましょう」
 
嫌いな野菜の存在感をなくし、その野菜が入っていることを気づかせずに食べてもらう方が効果的なのだそうです。
 
そして、おいしい雰囲気づくりで、子どものチャレンジ精神を引き出すのも1つの手法だそうです。
 
「Jリーグのジュニアユースチームでは、トップ選手に頼んで、野菜嫌いな子の目の前で大げさにおいしそうに食べてもらいます。もちろん選手たちには秘密です。みんなが『おいしい』と食べていれば自分も食べてみたくなりますし、雰囲気などの空気や錯覚も含めて『おいしい』と感じることもあるのです。一度『おいしいかもしれない』と思えたら、すでにほぼ苦手を克服したと考えても良いでしょう。それ以降も食べてくれるようになります」
 
ご家庭でも、家族が言葉と表情など「おいしい」と表現しながら食べることで、子どもも「食べてみようかな」という気持ちを引き出してあげましょう。
 
タイミングとしては、勝ち試合のあとなど、機嫌がいいときに出すことも嫌いな食べ物の克服につながるそうです。
 
「試合でミスをしてしまった日や、負けた日は苦手な野菜を無理に食べさせない方がよいことはわかるでしょう。なにを食べてもおいしいと感じない気分のときに無理強いするとさらに嫌いになってしまう可能性が大きいです。それよりも、勝ち試合のあとや、活躍できた日など本人の機嫌がいいときにさりげなく出してみてはどうでしょう。嬉しい気分が高まっている日は、嫌いな野菜も頑張って食べようと思ったりするものです」
 
様々な手段を教えてくれた川端さんですが、何より大事なのは「食べるメリットを本人に説明すること」だと言います。
 
親に食べろと言われるものの、その理由がわからない......。それでは食べるのが嫌でも仕方ありません。ビタミンが疲労回復に役立つことや、食物繊維の働き、内臓を強くすることで試合の時にお腹が痛くならず普段通りのパフォーマンスが発揮できることなど、野菜を食べるメリットをお子さんにも説明して、野菜を食べるといいことがいっぱいあることを理解してもらいましょう。
 
しっかり食べれば体が強くなり、大好きなサッカーがもっと上手くなるとわかれば、前向きに食べてくれるようになるはずです。
 
サッカーの上達はもちろん、しっかりと大きくなってもらうために、ちゃんとした食生活の基盤を形成できるよう、食事の管理は親ができる重要なサポートなのです。
 
 
川端理香(かわばた りか)/管理栄養士
スポーツ栄養WATSONIA代表。元日本オリンピック委員会強化スタッフ。2004年アテネオリンピックでは「VICTORY PROJECT」のチーフ管理栄養士として、2008年北京オリンピックでは強化スタッフとして全日本男子バレーボールチームのサポートを行う。
 
Jリーグでは、これまで浦和レッズ、東京ヴェルディ1969、ベガルタ仙台、サガン鳥栖、FC岐阜、コンサドーレ札幌などのトップチームや、横浜FマリノスやFC東京などの個人選手や、プロ野球選手やプロゴルファーなどのサポートも行っている。また、企業の栄養アドバイザーや大学、専門学校の講師を務めるなど多岐にわたって活動。
 
著書に『サッカー選手の栄養と食事』『子どもの身長を伸ばす栄養と食事』『10代スポーツ選手のケガ予防の栄養と食事』(大泉書店)、『カラダの悩みは食べ方で99%解決する』(ゴルフダイジェスト社)など多数。
 

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