健康と食育

2018年7月26日

お魚を食べて持久力アップ!? トップアスリートにも注目されている「EPA」でバテにくい身体に

■食事を通して自分の身体を知ること、「伝える力」を養うことができる

(スポーツ選手にとって自分の身体を知ることも大事なこと ※写真はサカイクキャンプのランチ風景)

ただしこのEPAにも欠点があります。それは、酸化しやすいことです。
そのため、焼き魚にしたらなるべくすぐに食べてほしいのです。夕食で焼き魚をだして、余ったから翌日のお弁当に...というのは残念なこと。

実際にこの魚の酸化に敏感な選手もいて、寮や合宿中の食事でEPAの多い「さばの塩焼き」を出す際は調理の人にとにかく焼きたてを出すように、選手が食堂に来てから焼くようにお願いすることさえあるほどです。

そうしないと、変なゲップがとまらないとか、胃がムカムカするというアスリートもいるからです。

実際にある代表選手が合宿中、「朝ごはんで焼き魚を食べると、午前中のランニング中に変なゲップがでるんだよね。」と訴えてきたことがありました。

その選手に「どんな魚もそうなる?」と聞くと「たぶん...」という返答。「おそらく魚の種類によって違うと思うよ」とその場は返し、そこからしばらく朝ごはんの内容でどうなるか、選手自身に観察するようにさせました。

何日か自分自身を観察してみて「さばの塩焼きの日に発生するんだ!」と気づいたようでしたので、そこではじめて魚の脂肪酸の話などを伝えました。

これは一つの例ですが、食事で選手を育てる際に、選手自身になぜその食品を食べさせたいのか、栄養学の知識を与えることももちろん大切です。でもそれだけではなく、今回のようにまずは食べ物と自分の身体を観察するということ、そして選手自身の感覚やそれを自分の言葉で伝えるということを学ばせることもできます。

この仕事をしていると保護者の方に質問をうけることがありますが、お仕事を持たれている方など、普段忙しい方が多いので結論や結果だけを求める方が多いようにも思います。

でもスポーツの栄養学は、全てが勝つということにつながります。強い選手を育てるための一つのツールですが、その活用の仕方で選手が育っていく様子をみることも楽しみたいものです。

小学生年代は、心身ともに大きく成長する時期です。大きい身体を作るベースを築くとともに、自分の身体を知ることも大事ですので、ぜひ保護者の皆さんも日々の食事を通して、お子さん自身が発見して発言する(アウトプットする)ことを見守り、サポートしてあげてください。

川端理香(かわばた りか)/管理栄養士
スポーツ栄養WATSONIA代表。元日本オリンピック委員会強化スタッフ。2004年アテネオリンピックでは「VICTORY PROJECT」のチーフ管理栄養士として、2008年北京オリンピックでは強化スタッフとして全日本男子バレーボールチームのサポートを行う。
Jリーグでは、これまで浦和レッズ、東京ヴェルディ1969、ベガルタ仙台、サガン鳥栖、FC岐阜、コンサドーレ札幌などのトップチームや、横浜FマリノスやFC東京などの個人選手や、プロ野球選手やプロゴルファーなどのサポートも行っている。また、企業の栄養アドバイザーや大学、専門学校の講師を務めるなど多岐にわたって活動。
著書に『サッカー選手の栄養と食事』『子どもの身長を伸ばす栄養と食事』『10代スポーツ選手のケガ予防の栄養と食事』(大泉書店)、『カラダの悩みは食べ方で99%解決する』(ゴルフダイジェスト社)など多数。
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