健康と食育

2021年1月18日

オスグッドはひざの曲げ方に問題が。ケガ、痛み予防のために知っておきたい正しい「蹴り方」とは

サッカーに熱中するあまり、ケガを抱えてしまうお子さんは少なくありません。埼玉県杉戸町にある「アシカラ改善院」は、男の子から女の子、さらにはトップアスリートまで、ケガをしてしまい、復帰を目指す人達の駆け込み寺になっています。

院長の染谷学先生は、「足底からこだわり全身改善」をコンセプトに、選手のパフォーマンスアップ、ケガからの復帰を導くスペシャリストです。多くのアスリートの指導を行う染谷先生に、お子さんのケガ予防について話をうかがいました。
(取材・文:鈴木智之)

 


子どもたちが悩まされるひざの痛み、オスグッドはどうして起こるのか(写真はサッカー少年のイメージ)

 

 

■足に問題を抱えている子たち

アシカラ改善院を訪れるサッカー少年・少女は、扁平足や成長痛、度重なるねんざ、腰痛、前十字靭帯断裂など、様々なケガや痛みを抱えています。

染谷先生は「痛みを抱えている子の他に、走り方や姿勢が気になるという子もいます。うちに来てくれる患者さんの大半に共通しているのが、足に問題を抱えていることですね」と言います。

『頻繁に足首をねんざしてしまう』というお子さんがいますが、それには何らかの原因があります。また、ひざの痛み(オスグッド)の子も多く、サッカーを休むことで痛みがなくなったので、練習に復帰したらまた痛くなってしまった。それを繰り返した上で、『どうにかなりませんか』と、相談しに来ることも多いです」

 

■オスグッドが出なくなる方法

成長期のお子さんに多いひざの痛み(オスグッド)。染谷先生は、その原因を「身体の使い方に原因がある場合がほとんど」と考えています。

「オスグッドになった患者さんが医療機関を受診したときに言われるのが『ふとももの前部分が硬い』です。四頭筋が硬いからオスグッドになるので、ストレッチをしなさいと言われます。でも私の考えとしては、オスグッドはひざの曲げ方に問題があります

ボールを蹴るときに、子どもに多いケースが、蹴り足を大きく振り上げ、腰が開いた状態でキックする動作です。

「その蹴り方をすると、軸足のひざを前に突き出すように曲げるので、軸足のももの筋肉が引っ張られます。そして上体を後ろに反らしながら、ひざだけ前に突っ込む形になるので、ふとももの筋肉が引っ張られます。その結果、膝蓋靭帯(オスグッドの部分)が痛くなるという形です。走り方や動き方、蹴り方を改善すれば、成長痛・オスグッドは出なくなります

 

■スポーツをするときのベースは「歩く」こと

身体のどこかに痛みが出るということは、本来あるべき形が崩れていたり、動作が行われていないことにほかなりません。もしくは偏った動きをすることで、特定部位に耐えきれないほどの負荷がかかり、結果として痛みが発症すると考えられます。

「たとえば人間の基本動作であり、スポーツをするときのベースとなる『歩く』こと。私は『すねを前に倒す』という言葉を使っていますが、すねを倒して、歩いたり、走ったりすると、股関節からひざまで、ふとももの長さは変わらないので、筋肉も引っ張られません。そうなると、ふとももの前側が硬くなることはないので、痛みも出なくなります」

 

■靴の選び方が間違っている人が多い

ではなぜ、多くの人が、身体に負担がかかる(痛みが出る)使い方をしてしまうのでしょうか? 染谷先生はその原因が「足にある」と考えているそうです。

「動きの悪さのもと、痛みの原因はいろいろあります。個人的に思うのが、靴の選び方が間違っていること。正しい靴の選び方を知らない人が多いと感じています。靴を履いて歩くことに対しての意識が低いと言いますか......

歩く、走るといった日常の動作やスポーツ動作の根幹となるのが足です。人間は両足で立った状態で歩き、走り、ボールを蹴ります。

「動きの土台となる『足』が崩れている状態でスポーツをすると、足首やひざ、腰などに影響が出るのは明らかですよね。さらにサッカーのスパイクのような、独特の形状のものを崩れた足で履くので、表現はよくないかもしれませんが、悪い動きしかできないのは当然です」

 

■正しく靴を選べていないと、身体の使い方を教えても身に付かない

その考えのもと、染谷先生は選手や保護者に、靴の選び方について説明するそうです。

靴の選び方を教えた上で、身体の使い方を教えていきます。前提条件が整っていないと、歩き方や身体の使い方を教えても、身につかないからです。そして、足の構造を理解させることも重要です。子どもたちに説明するときは、手と足は似た作りになっているよね? と説明します」

手も足も指は5本。身体を支えるときに使い、ものをつかむ(握る)こともできます。

「手で棒を握るとき、誰しも小指から薬指、中指、人差し指、親指という順で握ります。親指から人差し指、中指と握っていく人はまずいません。小指は力を発揮するときにすごく大切な指で、それは足の小指も同じです」

現代の子どもたちは「浮き指」と言って、靴の中で指が浮いてしまい、地面をつかんで立ったり、走ったりすることが十分にできない子が多いそうで、それは大人にも見られる傾向です。

「立つときに、5本の指、なかでも小指でしっかりと地面をつかんで立つことができると、重心も安定しますし、サッカーの試合で相手にぶつかられても、ふんばりが効くようになります。その状態は身体のどこかに無駄な力がかかっているわけではないので、ケガをする心配もありません」

 

■正しい靴の選び方

染谷先生の「アシカラ改善院」では立ち方や歩き方など、動きの土台からアプローチして、正しい動きを身につけさせていくそうです。それと並行して、正しい靴の選び方やインソールの使用についてもアドバイスを送っています。

「正しい靴の選び方としては、足の大きさプラス1センチ。これがベストです。メーカーごとに大きさが違うので、実際に履いてみて、先端に1センチ隙間があるものを選びましょう。そして横幅もポイントです。インソールから横に、小指がはみ出てしまっている靴を履いている子も多いので、インソールにしっかりと足が乗る靴を選びましょう」

さらに、こう続けます。

「かかとを包んでいる部分も、柔らかいものよりも硬いほうが良いです。かかとを踏んで履くのではなく、靴べらを使わないと入らないような、かかとがしっかりしている靴を選びましょう」


<靴選びのポイント>

1.足長(サイズのこと:22.5cmなど)プラス、先端に1cm余裕がある
2.横幅があっている インソールから小指がはみ出ない
3.かかとのヒールカウンターが硬いもの
※ヒールカウンターとは、靴のかかと部分に挿入された半円形の芯のこと。 かかとを安定させ、歩行をサポートしたり、靴の成型を担う
※後編で正しい靴選びの全項目をご紹介します。

 

染谷先生が教えてくれた靴の選び方は奥が深く、「なるほど、そうだったのか!」と納得するポイントが多数ありました。

ということで次回の記事では、さらに詳しい靴の選び方や立ち方、歩き方について、話をうかがっていきます。

 

染谷学(そめや・まなぶ)
鹿屋体育大学卒業 学生時代は柔道専攻。自身が多くの怪我を経験し、助けてくれた柔道整復師に憧れ治療家になる。
柔道整復師として昨年11月末まで都内で整骨院を営む。選手サポートや外部サポート増加に伴い整骨院閉院。
『足底からこだわり全身改善』『人間の足底=土壌』を掲げ、現在は埼玉県にアシカラ改善院(自費診療)を構え、一般~プロアスリート迄、老若男女問わず診ている。院の特徴は①1分以内での超短時間施術。②人体構造上正確な起立と歩行指導。

【主な活動】
オルカ鴨川FCメディカルサポート(2019)
都立高校サッカー部メディカルサポート(2017〜現在)
アスリートサポート(パーソナル)
チーム向けセミナー(インソール講習会、靴の選び方等)

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