健康と食育

2021年2月15日

炭酸系入浴剤は筋肉疲労に効く! 疲労回復とパフォーマンスアップに効く「お風呂の入り方」

子どもも大人も疲労回復のためには良質な睡眠をとる事が大事です。そして良質な睡眠をとるためには何と言ってもお風呂が欠かせません。

毎日の習慣なので特にこだわりなく済ませる方も多いかもしれませんが、お風呂の入り方ひとつで睡眠の質が変わって来るのです。しっかり疲労回復をして元気にサッカーをするためにも「正しい入浴法」を習慣にしませんか。

前回は、入浴と睡眠の効果についてお話しを聞きましたが、今回は正しい入浴の方法を日本健康開発財団の温泉医科学研究所所長で東京都市大学人間科学部教授の医師・博士の早坂信哉さんに教えていただきました。すぐにできることばかりなので、今夜から実践してみてください。
(取材・文:前田陽子)

 


入浴剤も疲労回復効果があります。炭酸系は筋肉疲労に効くそうなので、サッカー少年少女におすすめです

<<前編:最近の子どもたちは疲れている!? 元気にサッカーするために知っておきたい、疲労回復効果を上げる「正しい入浴と睡眠」の知識

 

■40℃のお湯に10分が基本、汗が出たらいったん湯から上がる

正しい入浴のポイントは温度と時間だと早坂さんは言います。温度が表示される機能がある場合は小学校高学年であれば大人と同じ40℃に10分程度入浴するが良いとの事です。40℃で熱いと感じるなら38℃ぐらいに設定しても問題ないそうですが、それより低くなると温熱作用(※)が得られなくなってしまうのだそうです。

※温熱作用とはお湯に浸かり体があたたまること。
温熱作用により皮膚の毛細血管や皮下の血管が広がり、血流が良くなる。それにより体内の老廃物や疲労物質の除去、コリがほぐれ疲れが取れる。

逆に42℃以上では交感神経が刺激されて良質な睡眠につながらなくなるため、熱くても40℃までにしたほうが良いのだとか。

お風呂に浸かるときは全身浴が良いそうです。美容やスタイルキープのために半身浴などが良いと思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、半身浴は心臓など身体にかかる負担が少ないので全身浴より長時間入っていることができるだけで、ダイエット効果などは無く、体温を上げるためには全身浴の方が手っ取り早く効果的なのだそうです。

湯船には10分間連続で浸かっている必要なはく、汗が出たらいったん湯船から上がってもいいのだと早坂さんは言います。湯船に入る、出るを繰り返し、トータルで10分浸かっていれば温熱効果は十分得られるのだと教えてくれました。

 

■入浴中は500~800mlの水分が失われる! 入浴「前」も水分補給の習慣を

また、入浴によって失われる水分は500~800㎖と言われているので、入浴前と後に必ず水分補給をした方が良いとアドバイスをいただきました。

飲み物は水でもいいそうですが、ミネラル分を含む麦茶、タンパク質を含む牛乳、イオン飲料などでも大丈夫だそうです。それらの水分をコップ1~2杯摂取することで脱水を防ぐのだそうです。脱水予防として「入浴前」の水分補給も大事なのです。

夕食はできれば入浴の1時間前までに済ませておくと良いのだそうです。お風呂の水圧で胃腸にかかる負担が軽減されるのと、入浴することで血液の分布が皮膚表面に移ってしまうと、胃腸に行く血液の量が減って消化が悪くなるためだそうです。可能な限り食後、入浴するまでの時間を空けるようにしましょう。

前編でもお伝えしましたが、入浴後は、温熱効果を持続させると同時に、睡眠に向かうためにある程度体温が下がることが必要です。ですが、扇風機やクーラーなどで急速に体温を下げてしまうと、せっかく得た温熱効果が失われてしまうことになるので、自然と体温が下がってくるのを待った方がよいのだそうです。

 

■入浴剤は積極的に使いましょう。炭酸系なら疲労回復に効果も

「入浴剤は温熱効果を高め、塩素を除去する効果もあるので使うことをおすすめします」と早坂さん。

疲労回復には炭酸系がおすすめだそうです。炭酸の効果でぬるめのお湯でも血管を広げて、血流を良くしてくれるためだと教えてくれました。アトピーの子なら保湿系のものを利用するのも良いのでは、との事です。入浴後、保湿クリームやアトピー性皮膚炎の薬などを塗るなら、皮膚が乾燥する前の入浴後10分以内に行うのが良いそうです。

お風呂の中では、マッサージやストレッチも疲労回復の助けになります。足首から膝にかけてなど下(末端)から上(体の中心)に向かって血流を促すようにやさしくマッサージするのが効果的です。低学年の子どもではうまくできないかもしれませんが、足をもむだけでも効果はあるそうですので、身体が温まった、入浴後に親子で一緒に行うのもいいのではないでしょうか。

 

■試合後の強い疲労には温冷交代浴も効果あり

試合後など、特に疲れを感じるときには温冷交代浴を試してみるといいかもしれません。多くのトップアスリートが疲労回復を目的に行っている入浴法で、文字通り温かい湯船と冷たい湯船に交互に入る方法です。

家庭で実践する際は、40℃に3分、ヒヤッと感じる冷たい25℃ほどのシャワー1分を3回繰り返すと温冷交代浴の代わりになるそうです。最後は40℃の湯に3分入浴したら上がります。

「インターネットなどでは、最後を冷水にする例が掲載されていますが、それでは温熱効果を得られないので、最後は40℃にしてください」と早坂さん。

また、ケガ予防などのために試合の2日前に熱いお風呂に入る、ヒートショックプロテインを増やすという入浴方法もあるのだそうです。

・42℃に10分
・41℃に15分
・40℃に20分(炭酸系入浴剤の併用で15分)

いずれかの方法で入浴することで、ヒートショックプロテインと呼ばれる身体を守るタンパク質を生成するのだそうです。

体温を1.5度くらい上げることで自身を守るために特殊なタンパク質が作られるという入浴法なのだとか。筋肉の障害を抑える効果や傷を修復する作用などがあり、試合でのパフォーマンスを上げることが期待できるのだと早坂さんは教えてくれました。この入浴法を実践しているアスリートもいるようです。

ただし、この入浴法は身体への負荷も強いので、のぼせに注意が必要なことと、毎日行っていては効果が悪くなるそうなので、ここぞという試合の前限定で行ってみるといいかもしれません。

正しい入浴方法
・40℃にトータル10分入浴する
・入浴の前後で水分補給をする
・炭酸系入浴剤を使うと疲労回復の手助けになる
・入浴中のマッサージやストレッチも効果あり

 

毎日のお風呂の入り方ひとつで疲労回復やパフォーマンスが変わってくるのです。元気な毎日を過ごすためにも、サッカーを思い切り楽しむためにも、今日からできることをみなさんも実践してみませんか。

 

早坂信哉(はやさか・しんや)
東京都市大学教授/ 博士(医学)、温泉療法専門医
大学医学部卒業後、1998年より自治医科大学大学院医学研究科にて入浴に関する調査研究を開始。現在は東京都市大学人間科学部教授 東京都市大学大学院総合理工学研究科教授、総合研究所子ども家庭福祉研究センター長を務める傍ら企業等との協働や講演活動も行っている。テレビ、雑誌など各種メディア出演も多数。

著書に「たった1℃が体を変える ほんとうに健康になる入浴法」(KADOKAWA)、入浴検定 公式テキスト お風呂の「正しい入り方」(日本入浴協会)、「最高の入浴法~お風呂研究20年、3万人を調査した医師が考案」(大和書房)がある。

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