健康と食育
2024年11月11日
119の日に考えたい。松田直樹さんの魂を「#命つなぐアクション」へ。横浜F・マリノスの取り組みから学ぶ迅速な119番通報の方法
皆さん知っていますか? 11月9日は「119番の日」、救急車を電話で呼ぶときの「119番通報」について理解を深める日です。
サッカーにおいても、練習や試合時に急な疾患で倒れたときなど、救急車を呼ぶ必要がある場面もあります。119は身近なものなのです。いざというとき、迅速に救助要請ができるよう、日頃から正しく119番通報ができる心構えをしておきませんか。
そこで、横浜F・マリノスのホームゲーム開催日に救護体制サポートチームを率いる日本体育大学保健医療学部の小倉勝弘先生にお話を伺いました。スポーツ時の心臓突然死をなくすための「#命つなぐアクション」についても詳しくご紹介します。
(取材・文 小林博子)
■「#命つなぐアクション」とは?
「#命つなぐアクション」は、横浜F・マリノスが行っているホームタウン活動のひとつです。2011年に急性心筋梗塞で急逝された松田直樹さんの魂を継承していくべく、スポーツ時の突然死をなくすことを目的に活動しています。
その活動内容のひとつとして、日本体育大学保健医療学部のみなさんが、ホームゲーム開催時にAEDを携帯してスタジアム内を巡回。体調不良にになった来場者の救助活動を行っています。
この連携は2022年から実施しており、2024年10月までの間に55試合を数えました。幸いなことにAEDを使っての救助は行ってはいませんが、熱中症や怪我など救護が必要になった方々に対し迅速な対応ができているそうです。この活動のおかげで、試合を楽しむことを前提に「安心・安全なスタジアム」を提供できています。
そのほか、2021年には「背番号3」のオリジナルグッズの売上による利益全額を「#命つなぐアクション」(ホームタウンにおけるCPR(心肺蘇生法)・AEDの普及啓発事業)および、ホームタウンの子どもたちへのサッカー普及などの活動費用に充てたり、毎年、命日である8月4日付近のホームゲーム開催日には、「#命つなぐアクションカード」の配布を実施しています。
また12月には横浜F・マリノスのクラブスタッフ向けにAED講習会を予定しており、さまざまな取り組みを行っています。
横浜F・マリノスのレジェンドである松田直樹さんが練習中に急性心筋梗塞で倒れたように、スポーツ時やスポーツ観戦時に命を失いかねない事態が起こる可能性は誰しもゼロではありません。
いざというときに大切な命を救える知識と「術」を、広めています。
■スポーツ中の心停止は、決して他人事ではないことだから
松田直樹さんの急逝は大きなニュースとなり、多くの人々に悲しみと衝撃を与えました。ついさっきまで元気にサッカーをしていても、突然倒れ、命を失ってしまうようなことが誰にでも起こりうることだと、当時痛感した方も多いのではないでしょうか。
海外では試合中に心停止を起こし、救命により一命をとりとめた選手もいました。
そのような事例から、「命つなぐ」ためには、いざというときに周りの人が迅速な対応ができるかが大切であることも周知されています。
私たちは「いざ」が自分の周りの大切な人にも起こる可能性に備え、知識を深めておきたいところです。
■119番通報することを今、想定!記事上でシミュレーション
いざ、が起こったとき、まっさきに行うことは119番通報ですが、ほとんどの人は通報したことがないはず。実際その時になると戸惑ってしまうかもしれません。
そこで、この記事で119番通報をシミュレートしてみましょう。実際に電話をして救急車が向かうまでの手順を小倉先生が詳しく解説してくれました。
【1】スマホ・自宅の電話・公衆電話すべて「119」でOK
まずは119に電話します。電話すると指令管制員につながります。
【2】「火事ですか、救急ですか」に答える
第1声で、「火事ですか、救急ですか」と質問されるので、「救急です」と答えましょう。
【3】住所を伝える
救急車が向かうべき住所を伝えます。グランドや校庭などで住所がわからない場合は、道路の電信柱に書いてある住所を確認したり、スマホで調べたりしてできれば番地まで伝えられるとベストです。
なお、県境などでは隣接する都道府県の消防本部につながることもあります。地域によっては必ずしも近隣とは限らないこともあるので、「○○市立〇〇小学校」など具体的な建物や目標が伝えられることが望ましいです。
【4】患者の状況を伝える
目の前で倒れていたり苦しんでいる人がどのような状況かを伝えます。指令管制員から「いつからか」「年齢は」など、詳しく質問されるので、それに答えられるよう情報を整理しておくことも望ましいです。なお、年齢や性別は救急隊が搬送先医療機関へ電話する際や申し送りの際の重要な情報ともなります。
【5】通報者の情報を伝える
・名前
・患者(傷病者)との関係性
・電話番号
を伝えます。
救急隊が向かう車内から、詳しい状況について追加の質問があったり、救急車がその住所のどこに(例えば小学校だと正門と裏門どちらが近いのかなど)向かえばいいのかなどを聞かれる可能性もあります。そのため、待っている間もすぐに電話ができる番号を伝えてください。
【6】救急車の到着を待つ
指令管制員は通報を受け、出場先が確認でき次第、消防署などから出場します。救急車が到着するまでの間は、患者(傷病者)の様子を見ながら救急隊の到着を待ってください。救急隊が到着するまでの間は、当時の状況や時間経過、行った処置などをまとめておくことも望ましいです。
■ためらわず「119番通報」で大丈夫!
心停止や大怪我など、迷わず救急車が必要な場合のほか「これは救急車を呼んでいいのかな」とためらうシーンもあるはずです。最近では「#7119」や「#8000」などの相談窓口もあるので、不安がある際にはそちらも活用してください。
小倉先生はかつて、消防機関で救急車に乗っていたこともあり、「こんなことで救急車を呼んでしまってすみません」と言われたことも何度もあったそうです。不安を感じた場合に通報してしまったことは止むを得ないことなので、一刻を争う状況と感じた場合には、119番通報をお願いします。
■救急車を待つ間にできること
心停止と思われる状況の場合は、AEDや胸骨圧迫などによる救命を救急車が到着するまでの間に行えると、命を救える可能性が高まります。とはいえ、方法を予め知っておかないといざというときに困ってしまうかもしれません。
そんなケースに備え、AEDの使い方やどこにあるのか、胸骨圧迫の方法などを後編では詳しく解説します。
また、ホームゲーム開催日には「#命つなぐアクション」の活動の一環として、AEDの使用方法の講習会も行っていますので、ぜひご来場された際は参加してみてください。
9月29日にはも三井ショッピングパークららぽーと横浜で「AED講習会」と「防災講和・ワークショップ」を開催しました。
12月7日(土)には横浜防災センターでのイベント内でAED講習会の実施を予定しております。
詳細はこちら>>
※当日のイベント内容は急遽変更になる可能性がございます。
小倉勝弘
日本体育大学 保健医療学部 救急医療学科 救急救命専門指導教員。救急災害医療学修士。救急救命士・防災士として過去には消防機関にて勤務経験もあり。
「#命つなぐアクション」のライフサポートチームとして、学生と共にホームゲーム開催時にはスタジアム内を巡回している。