サッカーを観て学ぶ
2014年9月30日
小倉隆史が解説!Jリーグトップストライカーに学ぶ点の取り方
Jリーグの映像から質の高いプレーを選りすぐり、そこにプロのサッカー解説者がコメントを加えてわかりやすく7分間程度にまとめた『ムビトレ』をご存知でしょうか。(※『ムビトレ』は2015年3月をもってサービスを終了しました。)今回、サカイク編集部は、その『ムビトレ』の映像制作の現場に潜入。映像に解説を加えてくれるのは、テレビ解説者としてもお馴染みの小倉隆史さんです。
取材・文 杜乃伍真
■プレーを観て真似することで上達する
「ぼくの時代は映像そのものがあまりなかったのですが、トヨタカップで来日したユベントスのミッシェル・プラティニの伝説のゴール(後方からのボールを胸トラップ後に反転してボレー。判定はオフサイド)、あれは絶対にJリーグでやってやろうとずっとチャンスを覗っていたんですよ」
観て、真似をする。それはいつの時代でも変わらない上達への早道です。小倉さんは『サッカーを観て学ぶ』ことの大切さを、こう語ります。
「いまの時代はYoutubeなどでさまざまな映像が見られるし、ぼくは基本的にはどんな映像でもいいと思いますが、ド派手なゴールシーンをただ漠然と見るだけではなく、そこに解説が一言入るだけでもそのシーンに色々な意味が隠れているのがわかります。たとえば、ブラジルワールドカップのハメス・ロドリゲスの胸トラップからのスーパーゴール。あのシーンでハメスは、ボールが後方から出てくる前ではなく、ボールが後方から出てきている最中に首を振ってゴールの位置を確認しています。スーパーゴールを漠然と見ていると、そんなトップレベルの選手たちの巧みな技を見逃してしまうかもしれません」
これまでに小倉さんに解説してもらったテーマのなかに『現役トップストライカーの点を取るためのテクニック』があります。『レフティーモンスター』と呼ばれた現役時代には、トップストライカーとして数々の魅力的なゴールを生み出した小倉さんが、現役トップJリーガーのゴールの解説をハイライトでお伝えします。
■大久保嘉人のゴールを奪う駆け引き
まず映像に登場したのは川崎フロンターレの大久保嘉人選手。
映像はこんな流れでした。トップの位置から中盤まで降りてきた大久保選手が、そこでボールを受け、相手を一人交わして、ゴール前のバイタルエリアから強烈なミドルシュートを決めたシーン。リプレイされる映像に、小倉さんが解説を入れます。
「このとき大久保選手は、自分が中盤の位置に降りてくることで、自分のマークの選手も引っ張ることができるので、それによってゴール前のバイタルエリアが空くことがわかっていたのです。よく映像をみてください。大久保選手は後方からボールを受けるときに、首を振って、自分のマークと、ゴール前のバイタルエリアが空いていることを確認していますよね?」
確かに、大久保選手が中盤の位置まで下がったときに、首を素早く振って、相手がいる位置を確認しています。そしてゴール前中央にはぽっかりと大きなスペースが。次の瞬間、大久保選手は後方からボールを受けると、一度、ゴールとは逆方向にボールをコントロール。
「このコントロールで相手はボールに食いついていますよね? これは大久保選手がそう誘っているのです。そこですかさず、大久保選手は相手との間に身体を入れながら素早くターンをして、相手を置き去りにすることに成功します」
相手のマークをはがしたあとは、さきほど自分自身でつくったゴール前のスペースにドリブルで侵入、そして相手のディフェンスラインに距離を詰められる前に、すばやく右足を振り抜き、突き刺さるようなゴールを決めました。
「このミドルシュートにも注目してください。大久保選手はキックの質も違うんです。ボールに対して、パン! と蹴るのではなく、ボールに足の甲を乗せるイメージでしょうか。いつものシュートよりも、0.2秒くらいボールに足が接地している時間が長いイメージですね。そうすることでボールに対して重みが出たり、不自然な軌道を描いたりするので、ゴールキーパーは反応がとてもしにくくなるのです。まあ、これは感性がとても大切なので子どもたちにんは練習で感覚を掴んでもらえればいいと思いますが、大久保選手は自分でどういうタイミングや距離からシュートを打てば入るのか、その自分の強みをよくわかっていたということですね」