サッカーを観て学ぶ

2014年10月28日

自分のプレーイメージと重ねてみる!香川真司のサッカーの見方

みなさんはサッカーの試合を観ますか?ひと言にサッカー好きと言っても、観るのもプレーするのも好きという人がいれば、観ることは好きだけどプレーするのは好きではない、あるいはプレーするけど観ることは好きではない人もいます。これはプロサッカー選手にも当てはまります。いろいろなサッカーの試合を観て勉強して、自分のプレーを反省したり、いいプレーを取り入れる選手がいれば、たまに観るけどそこまで意識はしていない選手もいます。
 
それは、どれも正解であり否定する必要はありません。たとえば、音楽家なら他人の音楽を訊く派と訊かない派、作家なら他人の記事や本を読む派、読まない派に分かれます。前者に関しては、積極的に外部の情報を取り入れることで、自分のパフォーマンスの向上を図る一方で、逆に影響を受けすぎて模倣となったり、独自性が失われるデメリットもあります。後者は独創性がある一方、基本スキルが欠ける可能性もあります。つまり、双方にメリット、デメリットがあるのです。
 
 
前置きが長くなりましたが、ここで言いたいのは「観るからいい、観ないから駄目」ではなく、アプローチの手法や考え方が重要であること。その前提のうえで、今回はある一流選手の考え方を述べていきたい。(取材・文/安藤隆人 写真/Getty Images)
 
 

■オンとオフの切り替えこそ香川真司の魅力

香川真司。ヨーロッパのトップレベルで活躍する日本を代表するサッカー選手だ。彼を一言で表すなら『根っからのサッカー好き』。幼少のころからボールに触れあっていることが大好きで、筆者がFCみやぎバルセロナユースの取材ではじめて彼をみた時も、楽しそうにボールと遊んでいた。ところが試合や練習のときは表情が一変し、真剣な表情でボールと関わる。このオンとオフの切り替えこそが、彼の大きな魅力のひとつだ。
 
彼はサッカーを観ることにも、旺盛な好奇心と真剣さを持って臨む。昔からサッカーの試合はよく観ていた。その姿勢は、中学、高校時代だけでなく、プロに入ってからも変わらなかった。
 
17歳の若さでC大阪のトップチームに昇格した香川は、ヨーロッパサッカーを熱心に観ていた。ときにはチャンピオンズリーグの試合を「生放送でしっかりと観たい」と、日本時間の午前3時45分に起きてテレビの前で食い入るように見ていた。その姿はFCみやぎバルセロナのころの『サッカー大好き少年』のままだった。
 
 

■自分のプレーイメージと重ねる

彼のサッカーの見方は、非常にハイレベルだった。たとえば、彼が一番好きなバルセロナの試合。イニエスタやシャビなど自分のプレーの参考になる選手に対し、「ああ、シャビならこうするのか。たぶん自分だったらこうしていたな」と、自分のプレースタイル、ピッチ上での視野まで頭に入れながら観ている。もし、あの局面にシャビではなく自分が立っていたらなにをしていたか。あの選択肢は自分に合ったのか。もしなければ、自分はどうすればいいのか。自分の選択肢にはなかったプレーが成功したときには、「このイメージはなかった」と感嘆し、ときに自分のイメージが上回ることもある。この上回った瞬間が喜びとなる。
 
彼は試合を観るというより、一つひとつのプレーを自分のプレーイメージと重ねて分析していた。意識的にそうしていたのではなく、彼の純粋なサッカーへの愛情と強烈な向上心、真剣さがそのような姿勢を形作っていた。
 
この姿勢はドルトムントに移籍してからも同じだった。ときには自分のプレーした試合を観て、このポジショニングで合っていたのか、それともほかの選択肢があったのかを分析した。もし他にも選択肢があった場合、どうして自分はその選択肢を見いだせなかったのか。選択肢はもっていたけど、なぜ選択できなかったのか。プレーのレベルが上がるほど、分析のレベルも上がっていった。
 
おそらく、彼はいまも同じように自宅に帰ってはいろいろな試合を分析しているだろう。

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