サッカーを観て学ぶ
2015年3月30日
中村憲剛、成功の秘密「サッカーを観ることで壁を乗り越えられる」
前回、自分のプレー映像を見て振り返る重要性や、サッカーの試合を観ることのメリットを語ってくれた中村憲剛(川崎フロンターレ)選手。今回は、ジュニア年代の子どもたちに伝えたい試合観戦の仕方や、サッカーを観ることで選手と活躍できる理由を語ってくれました。(取材・文 石井宏美 写真 平間喬)
■小さいころは、いろいろなポジションの選手のプレーを観たほうがいい
――ジュニア年代の子どもたちに、こういう見方をしたらいいのではないか? というアドバイスがあるとしたら?
ジュニア年代の子どもたちだと、まだ1試合(90分間)を集中して見続けることは難しいと思うけれど、とにかく「見る」ことそのものが大事なんだと思います。たとえ明確な目的がなかったとしても、見ていることで勝手に自分の脳内の引き出しに何かが蓄積されていくこともあるだろうし、間違いなく幅は広がる。その蓄積されたものが、後々、自分のイメージとシンクロして、理想のパスを出すことができたり。でも、自分の目の高さだけでサッカーをするだけだと、それさえイメージできないですから。
――先ほど、自分を知るという話をしていましたが、たとえば11人いれば、それぞれポジションも異なってくるので見るポイントもちがいます。そういった意味では、見方やポイントは自分で探していくものなのでしょうか。
ぼくの場合は、試合を見ていて「あ、ここはちょっと直したほうがいいな」とか、そういった話は常にします。さらに他の選手も映像を見ていれば、イメージがチーム内でシンクロしていく。そうなれば、よりチームプレーに徹せるというか、円滑に試合を運べる。
ジュニア世代のお子さんたちも、言われるがままサッカーの試合を観て、なにも感じずに終わるよりも、自分から能動的に見るようにして、なおかつ、その後に「ぼくはこう思ったんだけど、君はどう?」というような話ができたらより良いですよね。サッカー脳や知性も、サッカーを観ることで自然と上がっていくはず。そういうことを幼い頃から癖づけられればベストだと思います。
■子どもにも親にも、溢れる情報を選ぶ目が求められている
――今、ジュニア世代のお子さんたちが、お手本にすべき選手はいますか?
それはポジションにもよりますね。でも、小さいころはどのポジションの選手を見てもいいとぼくは思います。すでに「おれは、このポジションで生きていくんだ」というプロ意識のある子どもは別ですが、なんでもできるようになったほうがいいですからね。
たとえば、自分のポジションではなくても、DFの選手はFWの選手の動きを見て「突破されないためにはどうしたらいいか」、逆にFWの選手はDFの動きを見て「こういうディフェンスをされないようするには、どうしたらいいのか」と考えることは大事。十人十色ではありませんが、小さいころから“これ!”と決めつけない方がいいですね。また、派手なプレーばかりに目がいかないほうがいいとは思いますが、ぼくも幼いころはマラドーナに釘付けになったように、それは無理な話かもしれませんね(笑)。ただ、幼いころから玄人目線を持っていると、おもしろいとは思いますけれど。
――そういった子どもたちが、どんな選手に育つのか楽しみです。
そういう目を持った子どもがたくさんいたらおもしろいですよね。今、メッシやC.ロナウドなど優れた選手がたくさんいて、しかも彼らのプレーを見る環境も整っている。情報が豊富にあって、いつでもそれらを目にすることができる。ただ、逆に言えば、溢れすぎていて、なにをお手本にしたらいいのか分からないのも事実だと思うんです。
そこで問われるのが、子どもたちの「選ぶ目」なんじゃないかなという気はしています。今は情報量が多すぎることもあり、自分で考えなくてもいい状況になっている。それでは自立した選手が育たないのではないかという危惧はあります。それは子どもにかぎったことではなく、親にとっても言えることで、溢れた情報の良し悪しを判断するのが、以前よりも難しくなってきている気がします。
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