インタビュー
2010年12月17日
【後編】サッカーへの愛が、カルロス・テベスの人生を、180度変えた
世界中の様々なスター達はどんな幼少期、少年時代を過ごしたのでしょう。彼らの知られざる一面や苦労、努力の一端に触れたいと思います。今回は、アルゼンチンのスター、カルロス・テベスの後編です。環境の悪い街で育ったテベスはどのように、成功への道を歩んだのでしょうか。
もちろん生まれついての才能もあってこそですが、スラム街出身の少年がアルゼンチンの英雄に成長できた背景には、故郷の環境が育んだハートの強さ、ハングリー精神も大きく影響しています。
「僕のルーツは常に故郷にある。それは決して忘れない。あそこでの生活が、僕に尊敬、謙虚、犠牲といったものを教えてくれたんだ」
この「尊敬、謙虚、犠牲」が、テベスのプレーを語る上でのキーワード。素晴らしいテクニックを持つストライカーでありながら、テベスは相手DFにプレッシャーをかけるためにピッチを絶え間なく走り続けて仲間を助けます。そして、リスペクトするサポーターのために、どんなときも諦めずにゴールへ向かって前進し続けるのです。そんな彼のひたむきなプレースタイルは、ボカ・ジュニアーズ、コリンチャンス、ウェストハム、マンチェスター・U、そして現所属のマンチェスター・Cと、どのクラブへ渡ってもファンの心をガッチリ掴んでいます。
テベスのこうした側面を感じ取ったからこそ、マンチェスター・シティーのロベルト・マンチーニ監督は、彼にキャプテンを任せたのかもしれません。
サッカーの本場イングランドで地位を確立し、この上ないサッカー人生を送っているテベスですが、彼は今後3~4年でヨーロッパを離れ、ブエノスアイレスで家族とともに平穏な暮らしをしたいと公言しています。心ない英国のメディアはそれを「ホームシックだ」と騒ぎ立てますが、故郷を愛し、家族を愛するテベスからすれば、母国への郷愁は当然のこと。そして、責任感に溢れる彼のこと。ヨーロッパでプレーを続ける限り、ピッチ上で手を抜いたプレーを見せてファンを幻滅させることは考えられません。
生まれ育った劣悪な環境のせいにして、自らの人生をネガティブに捉えるのではなく、サッカーへの愛と自己犠牲をベースに、成長していったテベス。彼の行いや考え方に学ぶことは多いでしょう。
Photo:AP/アフロ