インタビュー
2011年1月14日
【後編】家族とともに。世界最高の点取り屋への道 フェルナンド・トーレス
世界中の様々なスター達はどんな幼少期、少年時代を過ごしたのでしょう。彼らの知られざる一面や苦労、努力の一端に触れるこのコーナー。今回は、スペイン代表やリバプールで圧倒的な力を見せ続けるFW、フェルナンド・トーレスのストーリー・後編です。
現在、世界最高の点取り屋の一人と言われるトーレスのストーリーは、7歳上の兄イスラエルとの何気ない遊びから始まったものでした。ただ、彼が家族から受けたサポートは、何も兄の"手痛い"レッスンだけではありません。アトレティコ・マドリードの下部組織で練習に励んだトーレスですが、彼が暮らすガリシアはスペイン北西部。スペイン中央部のマドリードとはかなり距離が離れており、トーレス少年は父や母、時には兄や姉に付き添われ、毎日の練習に参加していたのです。後にトーレスは、トレーニングの日々で自身を支えた家族への感謝を語っています。
「父は僕を練習に連れて行くためにいったん職場を抜け、夕方に仕事へ戻ってくれていた。母は電車とバスを乗り継いで、朝と晩に僕を練習場へと送り迎えしてくれた。時には兄や姉が付き添ってくれることもあったよ。彼らは僕がプレーしている間、スタンドで勉強をしていたんだ。家族のサポートがなければ、決してファーストチームに上がれなかったし、プロのフットボーラーにはなれなかったと思う」
そう語るトーレスは、イングランドのリバプールでプレーする今でも、家族との時間をとても大事にしています。彼はシーズンオフになると、必ず家族たちが待つ故郷ガリシアへ里帰りしてバカンスを過ごすのです。2人の子供をもうけている妻オラジャさんがガリシアで出会った幼なじみということもありますが、トーレスはサッカー界のスーパースターになっても、セレブな高級リゾート地より家族との時間を選びます。「父からは謙虚さを、母からは自己犠牲の心を学んだ」というトーレスがリバプールのファンにも愛されている理由のひとつは、こうした彼の人柄にあるのかもしれません。
トーレスのストーリーを見ていくと、どんなスターでも家族とともに過ごした時間のなかから何かを学んでいるということを、あらためて感じさせます。たとえスーパースターになれなかったとしても、幼少の頃の家族の心遣い、絆は、間違いなく、本人の人生においてかけがえのない財産となっていくでしょう。こうしたことを考えながらトーレスのプレーをあらためて見てみるのも、また興味深いはずです。
写真:Action Images/アフロ