インタビュー

2011年8月19日

松田直樹選手(松本山雅FC)がサッカーキッズたちに遺したもの

■松田選手が残したかった「自分から好きになる」こと

それから丸5年が経過した2011年1月。16年間所属した横浜FMからJFL・松本山雅FCへの入団が決まった記者会見の席で、私は再び松田直樹選手から話を聴く機会に恵まれました。

「(横浜FMで引退せず現役を続けようと思った理由は)「サッカーが好き」、それだけですね」、「どんなチームが相手でも負けたくない気持ちは持っています」。

インタビューした当時と何ら変わることのなく新天地での強い決意を述べる松田選手。その中で私は最後にどうしても彼へ質問したいことがありました。

「長野県の子供たちにどのようなことを伝えたいですか?」

松本山雅FC入団会見という場ということで、ここではクラブのホームタウンである「長野県」という表現を使いましたが、基本的な投げかけは5年前のインタビューとほぼ同じ。そして、松田直樹選手の返答もやはりその時と同じ「熱さ」に満ちたものでした。

「僕はサッカーの楽しさを表現したいと思っているので、最低限のルールを守りながら自分の中では毎試合感動や夢を与えていきたいと思います。そして子供たちには親に言われるのではなく、『自分から好きになる』ことを伝えたいです。それがサッカーでなくてもいいので、それだけは伝えていきたいですね」。

そう、松田選手はサッカーをできる場が日本代表であろうが、J1であろうが、JFLであろうが、決して目標を変えることなく、そして「自分から好きになる」ことを子どもたちに伝えようとしていたのです。

その後、2月に鹿児島で愛媛FCと対戦した練習試合でも元気な姿を見せていた松田選手。これまでにない環境に、もがきながらも、懸命に周囲を引っ張ろうとする彼の姿に、大いなる期待を寄せていただけに......。突然私たちの前からいなくなってしまった現実は、今でも受け入れられない思いでいっぱいです。

でも、彼の功績が全て無になってしまうわけではありません。今、サッカーを一生懸命がんばっているみなさん。もし、サッカーが少し嫌いになりそうになってしまったら、松田選手の言葉や映像に一度でいいから触れてみてください。そこにはきっと、みなさんを勇気付けるため、松田直樹選手が遺したメッセージがあるはずです。

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取材・文・写真/寺下友徳

愛媛県在住のフリーライター。育成年代のサッカーをはじめ、四国地域のスポーツを中心に意欲的に取材し執筆を行っている。

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