インタビュー
2015年4月30日
「子どもにパーフェクトを求めない」藤田俊哉5つの教育方針
■サッカー選手と決めつけるのではなく、可能性を広げてあげたい
――どうすれば子どもの「自主性」が育まれるのでしょうか?
将来、自分で考えて行動できる大人になってほしいという願いを持つことだと思います。だから子どもの可能性を信じてあげたい、いろんなことを見せたい、そしていろんなものを感じさせてあげたい。だから時間を見つけてはいろんなところに連れて行きます。ヨーロッパの観光名所が多いですが、特別な目的なんてありません。ただ見て感じる。それだけでいいと思っています。その蓄積が多ければ多いほど、引き出しが多くなるはずですから。大人になったときに絶対にその感性は生きてくると思います。可能性を広げるための環境は整えてあげたいですね。
――そうやって子どもと接するうちに、なにか変化は出てきましたか?
すぐには出てきません(笑)。まだ10歳。ヨーロッパに来てまだ1年足らずですし、興味を持てる選択肢が増えればいいなと思っています。本当にそれだけを願っているだけですね。海外の生活をすれば海外のことも詳しくなれるし、その反面、日本の良さも分かってくるでしょう。海外にも友だちができれば当然、言葉も必要になる、そうすればコミュニケーションが豊かになる。ということは、視野が広がれば人生が豊かになると思うんです。彼らの時代になったらますますコミュニケーションが大事になってきます。勉強も大事だけど、成績が上がらない時期があってもいいから、多くの言葉を話せて人間関係の構築に長ける人間になってほしい。それとぼくの苦手な文章もかけるようになってくれたら嬉しいです。話す、聞く、書く。この3つのコミュニケーション能力を、彼らが成長するなかで、年齢とともにスキルアップしてくれたらいいかなと思っています。
――コミュニケーションを大事にする教育方針のなか、サッカーとの関わり方についてはどう考えていますか?
やはりぼくが”サッカー人”ですから、息子もサッカーに関わってくれたら嬉しいですが、必要以上にそれは言いません。一緒にサッカーをしていて楽しいなと思える環境は作りたいと思っています。だから、まずはぼく自身がつねに楽しくやっている姿を見せていきたいです。サッカーへの関わり方っていろいろあるじゃないですか? サッカー選手としてプレーするのもそうだし、メディアとして伝えていくこともそう。その他もある。正直、ぼくがサッカー選手になれたのは、神様からのギフトだと思っています。一生懸命やってきた先にあるもの。サッカー選手という職業は狙っていくようなものでもないと思っています。ぼく自身は「絶対にプロになりたい!」と思ってやってきたけど、息子が同じようにそう思ってサッカーをプレーしているかどうか分からない。ぼくからそれを強要することはしません。最近、よく息子から「サッカー選手になりたい!」と言ってくるので、その時はもちろん「いいね! プロは楽しいよ!」と答えています(笑)。いずれにせよ、これからどのように成長してくれるか、すごく楽しみですね。
――たしかにサッカー選手になる確率なんてほんのひと握り。統計でみると東大に入るより難しいそうです。
そう聞きますね。だから、そんな狭き門を”点”で目指しなさいなんて、こちらから言うつもりはありません。世界は広いんだから、たくさん経験していろんな可能性を広げるのもいいと思っています。サッカー以外のことにも触れてほしいから、いろんなところに一緒に行きたいし、いろんな経験を共にしたい。日本は島国ですが、言葉や情報といった島国ならではの”壁”がどんどん取り払われている。そうしたなかで、世界を見て感じて日本でなにをするのか、それとも世界でなにかしたいのか。自分に合ったものや挑戦したいものをいつか見つけてくれたらいいなと 考えています。
後編では、父親・藤田俊哉さんが息子さんへの想いを通して少年サッカーの育成論について語ってもらいます。
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