インタビュー
2017年1月10日
「厳しいサッカーよりも楽しいサッカーをしてもらいたい」徳永悠平のサッカー少年の育て方
長年にわたってFC東京の左サイドに君臨する徳永悠平選手は、3男1女の父親でもあります。長男と次男はすでにサッカーを始めています。ピッチ内ではその豊富な経験を生かした堅実なプレーで、チームメイトから絶大な信頼を得ていますが、子育てでは苦労することもあるそうです。そんな徳永選手が子育てで大切にしていることとは。サッカー少年のお父さんは必見です。(取材・文 出川啓太 写真 波多野友子)
■小学生のころはサッカーを楽しむことが一番大切
「長男はまだ団子サッカーなのでプレースタイルはわからないのですが、攻めるよりも守ることのほうが好きなようです」
華麗にゴールを奪うより、粘り強く相手に食らいついてゴールを守る。そんな父親のDNAを受け継いでいるのかもしれません。息子のことを嬉しそうに話す徳永選手に、サッカー少年が成長するために一番大切なことを聞くと、こんな答えが返ってきました。
「一番大切なことは、子どもの好きなようにサッカーをしてもらうことです」
長崎の名門・国見高校サッカー部出身の徳永選手は、過酷なトレーニングを乗り越えてJリーグで活躍する選手になったひとりです。そんな徳永選手が、「子どものころは、厳しいより楽しいサッカーをしてほしい」と望みます。
「もちろん、ときに厳しいトレーニングも必要だと思います。しかし、小学生のころはサッカーを楽しむことが一番大切です。なぜなら、長く続けてほしいから。ぼくはサッカーから多くのことを学びました。息子にもサッカーを長く続けてもらって、いろいろなことを学んでほしいと願っています」
■サッカーを通して人として成長してもらいたい
子どもたちがサッカーを続けることで学べること、徳永選手がサッカーを通して学んできたこととは、どのようなことなのでしょうか?
「サッカーはつねに仲間のことを考えるスポーツです。コミュニケーションを取ることの大切さや、対戦相手にもリスペクトの気持ちを持ってプレーすることをぼくは学びました。プレーが上達してプロ選手になることよりも、サッカーをプレーすることで人間性を高めて、将来社会に出たとき、生きていく力を学んでほしいです」
仲間とコミュニケーションを取りながら目標に向かって取り組むことや、相手の立場になって考えてみることは、ビジネスの世界においてもとても大切なことです。徳永選手自身、プロ選手になりたいという気持ちは持っていたものの、それよりもサッカーを通して成長することを望んでいたそう。そうやって真摯にサッカーに取り組んでいた結果、プロ選手になれたと語ります。
「ぼく自身、小学校のサッカークラブでプレーしていました。4、5、6年生が一緒の試合に出るような。プロ選手の多くは小学生のころは飛び抜けてうまかったような人が多いのかもしれないけど、ぼくは小学生のころから目立つほうではなかったんです」
センスや才能ではなく、人間性が徳永選手をここまで育んできたと言えるのかもしれません。
■本当に言わなければいけないときしか言わない
「あいさつや礼儀など、人として大切なことができていなかったときは厳しくてもいいと思いますが、小学生のころからサッカーを厳しくする必要はないかなと思って、子どもたちに接しています」
子どもの試合を観に行っても、プレーについてアドバイスをすることはほとんどありません。本当に言わなければいけないときしか言わない。それが、徳永選手の父親としてのスタンスです。
「少年サッカーのグラウンドでは、そこまで言わなくてもいいのにな、と思ってしまうような声が飛び交っていることもありますよね。そこにいる子どもたちは楽しくサッカーに向き合えているだろうか、と考えてしまいます」
競技としてのサッカーの厳しさを知っている徳永選手だからこそ、サッカーを楽しむことの重要性を人一倍理解いしていると言えるのかもしれません。わが子にも、サッカーの技術の向上よりも、人としての成長を望みます。
「人の気持ちがわかる人間になってほしい。人の気持ちを考えないで、自分の思っていることをただ言葉に出すような人間にはなってほしくないです」
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