インタビュー

2017年6月 1日

「子どもは親の所有物ではない」2人の息子をサッカー選手に育てた都並敏史が語る、子どもを伸ばす"放任"のスタンス

■サッカーに励む子どもに、自身の経験からアドバイスをする

一方、都並さんは2人の息子さんに対してサッカーをすることを強いることはありませんでした。自然と息子さんがサッカーを始めて、のめり込んでいく中で楽しめるようなサポートをしたと語ります。その中で都並さんが強く教えたのは、"努力をする"ということ。
「うちの長男は鈍くさくて、サッカー選手になれるようなタイプではなかったんですよ。だけど僕は『サッカーの世界で、努力をすれば必ず遅かれ早かれ、あるレベルにはいく』と伝えました。もちろん、全員が日本代表になって、世界にいけるとは言いませんでした。彼は中学時代、試合に出ていませんからね。さすがにそのレベルが日本代表にいくとは言いません」
「ですが、自分の経験からえた見識を持って『これとこれをやったら28歳ぐらいにはそこそこのレベルに育つ』と伝えていたら、今はJFLの選手としてプレーできています。本当にその通りになって、今はすごく上手くなっていますよ。日々伸びている感じもしますし、そのとき、『やっぱり努力ってすごいな』と思うんです」
努力をさせるためにヒントを提示してあげたのが都並さんの指導でした。ただ、都並さんはその行為を"教える"というよりも"協力"に近いと考えています。その中で技術論から考え方まで全てをすりこむことは、本人の"考える機会"を奪ってしまうため、避けなければいけません。
「上手くなるのは自分ですから。自分の力で上手くなっていかないとダメなんです。結局は周りがどうあれ、親がコントロールしようが、それをぶち抜いてでも俺はやる、俺の力で上手くなる、俺の夢に向かって誰も邪魔させないという、スタンスを本人は持たないといけないですから」
そして、そうやって子どもがサッカーにのめり込めば自然と成長していく道筋は見えてくると都並さんは語ります。
「好きなことができたら簡単に手放さないようにさせてあげてほしいです。すぐにものになるかならないかは別として、とりあえず好きなものをある程度人から認められるレベルになれば、子どもにとってもものすごく自分への自信になるし、それがサッカーとは異なる他の技術を学ぼうとする時にも役に立つ。それに、サッカー以外の人生にも役に立ちます」
「好きなことをする中でも、苦しいところを一回乗り越えるわけじゃないですか。僕はリフティングというのにこだわって、1年間で3,363回できるようになったんですよ。この中にいろんなヒントがいっぱい隠されていて、失敗は数知れず、時間もかかって、色々と工夫するようになりました。こういうことを学んだわけです。僕はその瞬間に『すごいな、リフティングだけでこんな考えるんだな』と思って。この経験はその後の僕の人生にとってもものすごく大きなポイントになっているんです。あの時はこういうふうに工夫したなとか、あの時の失敗をこういうふうに超えてきたなとか、その時の自信が自分を支えてくれるんです」
サッカーをす好きになれば、もっとうまくなりたいと思い、そこで自らが工夫して考えるようになります。そして、仮にサッカーで人生が切り開けなくなっても、そこで学んだ経験は必ず役に立つということです。
子どもたちが主体的に考え、工夫する土壌を作るためには、両親がしっかりとサポートし、協力をすること。これが一番だというのが、都並さんの考える"親子論"でした。

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