インタビュー
2017年12月12日
「ゴールまでの逆算」 鹿島を世界2位に導いた名将・石井正忠監督が語る、伸びる選手が備えているスキル
■柴崎岳は「海外で活躍したい」ではなく「スペインでやりたい」と言った
石井監督はそうやって、親としても指導者としても、距離感を考えながら子どもと向き合っていく中で、実際にプロになっていった選手をたくさんみてきました。
「例えば、(小笠原)満男(鹿島アントラーズ)や野沢(拓也/ベガルタ仙台)、若い世代では土居(聖真/鹿島アントラーズ)、それに柴崎(岳/ヘタフェ、スペイン)なんかも、ユースからプロになって、人間的にもすごく成長したと思います」。石井監督はその中でも、昨シーズンが終わってスペインへと移籍した柴崎選手は特に、その好例だったそうです。
「ただ漠然と夢を追うのではなく、その夢を叶えるために順序立てて考えられる選手はどんどん伸びるんだと感じました。彼は2015年のインタビューで『スペインに行きたい』と話していたそうですし、もしかしたらもっとずっと前からそれを意識していたかもしれません。『海外で活躍したい』ではなく、『スペインでやりたい』と」
海外移籍がゴールではなく、明確なビジョンを持っているからこそ戦いの場をイメージして、移籍後にどうしたいのかという目的意識をしっかりと持っていたということです。
「自分の改善点を考えながら、それを克服するメニューを組んだり、コーチに聞いたり、先のことを意識しながらトレーニングしていたと思います」。
■時にあえて何も言わないことも大事
柴崎選手の話から思うのはやはり自主性の大切さと同時に、自分の中でしっかりと考えて、たとえ時間が掛かったとしても自分で納得することが、自分自身の成長につながっていくということです。
石井監督の娘さんは、幼稚園の頃に始めたサッカースクールを10歳になる今でも毎回楽しみながら続けているそうです。「私は、女の子だし、別にサッカーじゃなくてもいいと思っているんですけどね」。石井監督はそうやって、お子さんを見守り続けています。
「この先、娘がどんな選択をするのか楽しみですね。でもやりたいことはサポートしてあげたい。だから今は、できるだけ見に行くようにしています」
石井監督とともに考えてきた「子どもを伸ばすための大人の接し方、親子の距離感」のキーワードは「見守ること」でした。時には何かを伝えることも必要で、時には何も言わないことも必要です。
それはやはり、一朝一夕にできる簡単なことではないですが、そこで大切なのは、子どもから歩み寄ってきた時、しっかりと寄り添ってあげられるように、目を離さずに、子どもを見続けていってあげることなのではないでしょうか。