インタビュー

2018年4月10日

中澤佑二が語る、夢を持つ子どもたちのために親ができること

日本代表としてワールドカップに二度出場し、Jリーグで4年連続フルタイム出場を続けるなど、39歳にしてもなお日本を代表するDFとして活躍し続ける中澤佑二選手。プロとして脚光を浴びてきた一方、決してエリート街道を進んできた選手ではなく、プロになるまでは底知れぬ努力をしてきた選手でもあります。そんな中澤選手に「夢」をテーマにお話を聞かせて頂きました。(記事提供:大正製薬株式会社)

2017年12月19日、埼玉県三郷市にて中澤佑二サッカー教室 Presented by リポビタンDキッズが開催されました。

■過去~今 周りの人たちの関わりが大きかった

 中学3年の終わりにJリーグができるということをテレビで見て、プロを目指すことを決めました。その夢を叶えるために、自分で三つのプランを考えました。一番良いケースは高校選手権で上位に入ってオファーがあってすんなりプロになること。親に言われていたのは社会人か大学でサッカーをするということだったので、そのプランが二つ目。そして三つ目がブラジルでした。この三つしかなかったので、最終的にブラジルに行くことになりました。ブラジルには「行ける」と思っていたので、どうやって行くかとかは全く考えていなかったです。だから全て周りの人任せ。「先生、お願いします。僕はブラジルに行きたいです」って(笑)。先生は僕が高校1 年の時にそう言っていたことを覚えていてくれて、実際に高校3年の時に動いてくれたので、その先生の存在は非常に大きかったですね。

 親からは22歳までは大学に通わせていると思ってやるから、って言われたんです。プロを目指せる期限が決まっちゃったんですよね(笑)。だからその4年間でやれることを全てやるしかないという感じでした。4年後にはすっぱり諦めるという気持ちはありましたが、その間は諦めようとも思っていなかったです。

高校時代の様子

 ブラジルでもプロになれずに帰国しましたが、卒業した三郷工業高校とヴェルディユースとの練習試合に出場したことがきっかけで、ヴェルディの練習生になることができました。僕の練習に付き合ってくれた後輩のおかげでもあるんですよね。だからなおさら中途半端な気持ちではできないなって思いました。サッカー選手になるうえでそういう周りの人の関わりが大きかったですね。

 当時は服も常にジャージで、みんながおしゃれしている時もジャージとTシャツでした。そういうことを全く気にせずに生活していましたし、それくらいやらないとプロにはなれないだろうなって思っていました。

■今~未来 誰よりも一生懸命やらないといけないチームが勝つためなら何でもやる

 プロは勝負の世界なので、練習の段階から差をつけないといけないと思っています。自分は上手い選手ではないので、周りと同じことをやっても差をつけるどころか追いつくこともできないと思っていましたし、全力でやることで何か身につくだろうなと思っていました。

 プロになってからはリーグ優勝を経験したり、日本代表に選ばれてワールドカップに出場したりもしましたが、自分の中では順調に行けば行くほど「まだまだ追いついていない」という気持ちがありました。プロにはなれたけど、実力で勝ち取ったものではない、たまたまプロになれた、と思っていました。だから常に危機感を持ちながら、誰よりも一生懸命やらないといけないと思っていました。

 今は若い選手たちがいっぱい出てきているなかで、その子たちに負けたくないという気持ちが強いです。若いというだけで何もかもがひっくり返っちゃうような時代なので、逆に向かっていきたい。「若いから何だ」という気持ちを強く持っています。

 今の夢は40歳でタイトルを取りたいということです。40歳になる2018年にマリノスで優勝したいという思いしかないですし、とにかくそこだけを見ています。個人のことではなく、チームのタイトルが全てだと思いますし、チームが勝つためなら何でもやろうと思っています。

■親御様たちへ 親は子どもにどれだけ付き合えるのか

 親にとって大事なことは、子どもにどれだけ付き合えるのか。子どもが日曜に練習したいって言った時に、親が疲れているから『勝手にやってこいよ』って言うのではなく、そこでどれだけ親が付き合ってあげられるのか。一緒にジョギングしてあげるとか、ボールを蹴ってあげるとかも大事なサポートだと思います。そうすることで子どもはいろんな辛いことも乗り越えられると思います。

 親の時間も確かに大事だと思いますが、ちょっとスマホをいじる時間を削って、その時間で子どもと一緒に公園でサッカーをするとか。そういう時間を増やしていけば、子どもは夢に向かっていってくれると思います。

■子どもたちへ 強い気持ちを持っている子どもはプロになれる

 夢を持つ子どもたちにとって大事なことは、その夢に対してどれだけちゃんと向き合えるのかだと思います。僕の経験で言えば、サッカーに対してどれだけちゃんと向き合えるのか、プロになるんだという気持ちに対してどれだけのことができるのか。

 『サッカー選手になるためだったらスマートフォンはいらないよね?』と言われたら『いらないよ』って言えるくらい。じゃあ『テレビは見ないでサッカーの練習をするんでしょ?』って言われたら『当たり前だよ』って言えるくらい。サッカー選手になるために他のことは捨てられるくらいの気持ちがないと叶わない世界だと思います。逆にそれくらいプロになるんだという強い気持ちを持っている子どもはプロになれると思います。


中澤佑二 Yuji Nakazawa
「ボンバーヘッド」と呼ばれる空中戦と対人守備の強さを武器に横浜F・マリノスでJリーグ2連覇を果たし、個人としてもJリーグ新人王、Jリーグベストイレブンに6度選出されたほか、日本代表として110試合に出場し、ワールドカップにも二度出場した日本を代表するDF。2014年から2017年までJリーグで4年連続フルタイム出場を果たしており、39歳にしてなお第一線で活躍し続ける。

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