インタビュー
2022年7月25日
パリ・サンジェルマンでダイレクターを務めた指導者が語る、スペインと日本で育成年代の選手における11の違いとは?
パリ・サンジェルマンの育成部門でダイレクターを務めたダビッド・エルナンデス氏は、かつて日本代表の久保建英選手を直接指導するなど、世界で活躍するトップ選手にコンサルティングや指導を行ってきました。
また、10年以上にわたりサッカーキャンプやクリニックなどで来日し指導をしてきた経験があり日本人選手についても熟知しています。ダビッド氏はスペインと日本で育成年代の選手において11の違いがあると考えています。
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■川崎フロンターレ、鹿島アントラーズ、JFAアカデミーなどで指導したことも
――日本とスペインで育成年代の選手への指導経験はどのようなものがありますか?
私はスペイン(ヨーロッパ)と日本の育成年代の選手のことをよく知っています。これまでスペイン(RCDエスパニョール、カタルーニャサッカー協会)に加えフランス(パリ・サンジェルマン)とイタリア(サッカー連盟)で指導してきました。
この3つの国を挙げたのはこれらの国がこれまでに世界一になったことがあるからです。さらにここ12年間は日本でもエコノメソッドのスクールやキャンプ、川崎フロンターレ、鹿島アントラーズ、奈良クラブ、JFAアカデミーなどで指導する機会に恵まれました。
しばらくの間コロナウイルスの影響で海外へ行くことが出来ませんでしたが、ここ最近また日本に帰ってくる機会があり、その時何度も聞かれたのが、「日本とスペインの育成年代の選手は何が違うのか?」ということでした。
■スペインと日本の育成年代における「11の違い」とは
――その違いをいくつか挙げていただけますか?
私自身もこの問いについて長い時間考えて、スペインと日本の育成年代について11個の要素において違いがあるという結論に至りました。
それが、「率先力」「理解力」「柔軟性」「量」「質」「規律」「努力」「積極性」「順序」「コーディネーション」「評価」です。
――これら11個の要素はどのように分類されるのでしょうか?
私はこれらの要素は次のように分けられると考えています。「率先力」「柔軟性」「理解力」「積極性」は戦術的な特徴に関するものです。
次に「コーディネーション」は身体的な特徴に関するもの、他には「質」「量」「評価」「順序」はトレーニング環境に関するもの、最後に「努力」「規律」はメンタルに関する要素です。
■ドリル形式のトレーニングに慣れると自分でプレーの判断ができない選手になる
――どれかひとつを簡単に説明していただけますか?
「率先力」は選手たちのプレーの戦術的な面で違いを生む重要な特徴のひとつです。サッカーの試合では、練習した通りでない状況や、様々な理由で個人やチームとしてのゲームプランを実行できない場面に遭遇します。しかしそのような時でもできるだけ早く適切な判断をしなくてはいけません。
例えば、自チームのセンターバックがフリーでボールを持っていて、ディフェンスラインの他の選手は相手にマークされているとします。
そのときに中盤の選手はうまく連携を取れておらず、全員がボールに近づいてしまいました。その一方でセンターフォワードの選手は疲れているせいか状況を正しく把握していないせいか、前線に残り高い位置でボールを要求しています。
そうなるとチームのシステムの真ん中に大きなスペースができており、そこには誰もいない状況になります。通常この中央のスペースはウイングの選手が埋めるべきではありませんが、この場合ウイングのどちらかがこのスペースにサポートに入り、空いたスペースを活かすことが大切です。
これが試合の中で選手の「率先力」が重要になるところであり、選手が日頃からトレーニングの中で問題を解決することに慣れていなければいけない理由です。もし判断の必要がなく同じ動きを繰り返すドリル形式のトレーニングに慣れてしまうと、自分自身でプレーの判断ができない選手になってしまいます。
逆に、問題のある状況に置かれるようデザインされたトレーニングをメインに行えば、選手は継続的に自分自身で判断せざるを得ず、主体性が養われ、実際の試合でプレーする時に「率先力」を発揮できるようになります。
選手の育成段階やクラブのプレーモデルに応じてトレーニングをするため、指導者は選手のプレーを評価できる客観的な指標、トレーニングメニュー、指導法について学ばなくてはいけません。
■11の要素を実践するための場がある
――この11個の要素についてもっと知るためにはどうすれば良いでしょうか? また、どのように育成年代のトレーニングを改善すれば良いのでしょうか?
ここでは「率先力」という1つの要素についてお話ししましたが、読者の方は後編の「日本人選手が成功するために足りないこととは?」(※近日配信)をお読みください。
その中では「順序」の要素についてお話しします。また近いうちに「日本サッカーと欧州のサッカー 11の違い」というタイトルで本を出版し、これらの要素を(定義、比較分析、事例、メリットとデメリット、指導法など)深掘りしていく予定です。
また、ここで話した考え方を実践する場として、育成年代の選手たちにはエコノメソッドキャンプへ参加することをお勧めします。
<エコノメソッドサマーキャンプ2022 概要>
【開催日時・場所】
【中学生キャンプ】中学1年生~3年生
京都クール
8/12(金)-8/13(土)
@大谷中学高等学校
【小学生キャンプ】小学2年生~6年生
奈良クール
8/9(火)-8/10(水)
@ヤナギフィールド
愛知クール
8/15(月)-8/16(火)
@瀬戸SOLAN小学校
千葉クール
8/18(木)-8/19(金)
@ZOZOPARK HONDA FOOTBALL AREA
川崎クール
8/22(月)-8/23(火)
@富士通スタジアム川崎
高知クール
8/27(土)-8/28(日)
@野市ふれあい広場サッカー場
対象
小学生キャンプ:小学2年生~小学6年生
中学生キャンプ:中学1年生~中学3年生
基礎技術をしっかり持った中級・上級レベルの方
※男女不問
その他
各種割引あり(友達紹介割引、兄弟割引など)
宿泊・通いプランあり