インタビュー
2022年8月 1日
久保建英選手を直接指導したスペイン人指導者が語る、日本人選手が世界で成功するために足りないこととは?
日本代表の久保建英選手を直接指導するなど、世界で活躍するトップ選手にコンサルティングや指導を行い、パリ・サンジェルマンの育成部門でダイレクターを務めたダビッド・エルナンデス氏。
10年以上にわたるキャンプやクリニックを通じて日本人選手についても熟知している指導者です。
前編では、ダビッド氏が考えるスペインと日本で育成年代の選手において11の違いをお伝えしました。後編では、日本人選手が世界で成功するために必要なトレーニングなどを伺いました。
<<前編:パリ・サンジェルマンでダイレクターを務めた指導者が語る、スペインと日本で育成年代の選手における11の違いとは?
■日本がW杯で優勝するために分析すべきこと
――なぜ日本人選手は成功するのが難しいのでしょうか?
まずサッカー選手にとって「成功する」とは何を意味するかを定義しなければいけません。もしそれがサッカーをプレーすることを楽しみ、その後の人生において大切な能力や価値を身につけるということを意味するなら、日本人選手は既に成功していると言えると私は考えます。
一方で、もし日本代表が世界ランキング上位のチームに勝つことや、ワールドカップで優勝することとするなら、改善すべき点について分析するべきかもしれません。
――改善すべき点とはどのようなことでしょうか?
前編でもお話したように「率先力」「理解力」「柔軟性」「量」「質」「規律」「努力」「積極性」「順序」「コーディネーション」「評価」これら11の要素があげられます。
■日本では正しいとされる会話の「順序」が、スペインやイタリアでは通じないことも
――11の要素に含まれている「順序」とはどのようなことでしょうか?
どんな国でもトレーニング形式はその国の伝統や文化に影響を受けるものです。日本の場合も同様で、いくつかの場面では日本の伝統や文化がとても良い影響を与えていると考えています。
日本のチームが試合後にロッカールームを使用前と同じかむしろ使用前よりも綺麗にしている画像が欧州ではたびたび話題になります。また、日本チームが試合に負けた後、ファンに敬意を払い負けたことを謝ったり、応援してくれたことに感謝したりする写真もよく目にします。
しかしこうした影響はいつもポジティブに働くわけではありません。日本人にとっては会話において「順序」を尊重することが大切です。他人の時間や空間を邪魔しないことが正しい振る舞いとされています。こういったことはスペインやイタリアの文化とは大きく異なっています。
私たちスペイン人にとっては、ジェスチャーをしたり、話すときに腕を動かし、相手を触ったりするのは普通のことです。相手が話し終える前に遮るように話すことも普通なのです。この「順序」という概念は人生の多くの場面でメリットをもたらしますが、サッカーのトレーニングや試合ではデメリットになると私は考えます。
■日本人は腕や身体を使ってボールを奪う回数が少ない
――それでは日本人がサッカーで成功するためには文化を変えなければいけないのでしょうか?
いいえ、そうではありません。選手のプレーの戦術的な面を分析する時、トレーニングのプランニングを考える時、そしてトレーニングや試合中に、この点を考慮しなくてはいけません。正しくあることやルールを守ることは大切です。しかし、個人やチームのプレーにネガティブに働いてしまう慣習は修正しなければいけないということです。
――例をあげていただけますか?
例としては、ウイングの選手がボールを持ち、クロスを上げようとしています。多くの場合、日本のサイドバックの選手は強くプレスをかけずに相手に自由にプレーさせてしまいます。相手に介入しないのです。相手のプレーを遮るのに時間がかかってしまい、相手に有利な状態でプレーされてしまいます。
もうひとつの例はボールを奪う場面で、相手のパスをインターセプトするか、五分五分のボールを奪うことがほとんどです。私の見解では、相手のスペースに入っていき腕や体を使ってボールを奪う回数が日本人選手は極端に少ないように思います。
■日本人が世界で活躍するためにはどのようにトレーニングすべきか
――ではどのようにトレーニングすべきなのでしょうか?
ここではひとつの例しかあげていませんが、私が思うにこの「順序」という概念がプレーにネガティブな影響を及ぼしている場面はたくさんあります。
まずやらなければいけないことは、普遍的な個人戦術(プレー原則)やポジションごとの個人戦術のひとつひとつをパフォーマンスとして発揮できているか分析することです。
次に文化的な影響を受けている問題点を補完するための具体的なキーファクターを考えることです。
そして最後に、その問題点に選手が直面し、解決方法を見つけるためのトレーニングを準備することです。
――ではどのようにトレーニングすべきなのでしょうか?
前編の「スペインと日本で育成年代の選手における11の違いとは?」では、それぞれの育成年代の選手の違いを「率先力」という観点から分析しています。近いうちに「日本サッカーと欧州のサッカー 11の違い」というタイトルで本を出版し、これらの要素を(定義、比較分析、事例、メリットとデメリット、指導法など)深掘りしていく予定です。
また、エコノメソッドキャンプでは、先程述べた日本人選手の課題を改善するトレーニングを行っていますので皆様の学びになるはずです。
<エコノメソッドサマーキャンプ2022 概要>
【開催日時・場所】
【中学生キャンプ】中学1年生~3年生
京都クール
8/12(金)-8/13(土)
@大谷中学高等学校
【小学生キャンプ】小学2年生~6年生
奈良クール
8/9(火)-8/10(水)
@ヤナギフィールド
愛知クール
8/15(月)-8/16(火)
@瀬戸SOLAN小学校
千葉クール
8/18(木)-8/19(金)
@ZOZOPARK HONDA FOOTBALL AREA
川崎クール
8/22(月)-8/23(火)
@富士通スタジアム川崎
高知クール
8/27(土)-8/28(日)
@野市ふれあい広場サッカー場
対象
小学生キャンプ:小学2年生~小学6年生
中学生キャンプ:中学1年生~中学3年生
基礎技術をしっかり持った中級・上級レベルの方
※男女不問
その他
各種割引あり(友達紹介割引、兄弟割引など)
宿泊・通いプランあり