サッカー豆知識

2010年12月18日

【クライフ編】子どもに語ろう サカイク・スーパースターminiストーリー

■プレーと言葉で世界のサッカーを変えた「空飛ぶオランダ人」

ヨハン・クライフ(オランダ)

いつの時代もファンを歓喜させるキラ星のごとしフットボールスター達。このコーナーでは子どもに語って聞かせたい、過去、現在、未来のスターたちのちょっとしたエピソードを紹介していきます。今回は60年代、世界を席巻したスーパースター、クライフです。

決定力、ドリブルの技術、パスのセンス、そして試合を読む的確な洞察力。サッカーの攻撃的選手に求められるおよそ全ての能力を人並みはずれたレベルで備えていた選手です。

クライフのサッカー人生は、1965年、オランダの名門、アヤックスで監督をしていたリヌス・ミケルスとの出会いから始まりました。極めて攻撃的なサッカーを目指すミケルス監督は、画期的な戦法を次々と開発していきます。クライフはその戦法になくてはならない選手として、才能を発揮していったのです。74年、オランダ代表監督となったミケルスのもとで、クライフはその名を世界にとどろかせます。

当時は、守備専門の選手、攻撃専門の選手と、役割分担がハッキリしていたサッカーの戦いにおいて、ミケルスは全く新しい発想を取り入れ、世界を席巻します。全員で守り、全員で攻撃する。「トータルフットボール」と呼ばれた戦術です。敵がボールを持てばすぐに距離を縮め、ピッチのどの場所でも敵を囲いこんでボールを奪ってしまうという戦い方です。これなら、敵のゴール近くでボールを奪った時に、大きなチャンスとなる訳です。

でも逆に、敵ボールを奪いに行くことで味方の陣形が崩れることが多くなります。これには味方が空いたポジションを素早くカバーしていくという非常に流動的な動きを選手に求めていったのです。スタミナにも優れ、攻撃において抜群のセンスを備えていたクライフはこの戦術の核となりました。今でこそ、全員で攻撃と守備をする動きは当たり前ですが、この考えを世界で始めて実行に移したのはミケルスであり、プレーで表現したのがクライフだったのです。

ピッチのあらゆる場所へ飛び出してきて、アクロバティックなプレーを披露するクライフをファンは「空飛ぶオランダ人」と呼びました。また、「フットボールにおいて選手は、観衆を楽しませなければならない」といった発言もクライフが世界的な人気を獲得していった理由です。その他にも「美しく勝利せよ」や「美しく敗れることを恥と思うな。ぶさまに勝つことを恥と思え」など、美しさとスペクタクルにこだわった彼の発言はファンへと強烈に響きました。

あるいは「すべての短所に長所がある」「ボールをまわせ、ボールは疲れない」「私は間違いをおかす前に、その間違いをおこさない」など、格言のようでいてサッカーの本質を突くようなコメントが彼のサッカー観を、広く知らしめることとなっていきます。常識的な考えを打ち破り、新しく美しいサッカーを世界に見せてくれたクライフ。サッカーにおいて「個性」がとても重要だということを、今の時代にも強く訴えかけてくれる、不世出のスーパースターだと言えるでしょう。

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