サッカー豆知識

2012年12月 6日

町クラブのお父さんに聞いた「保護者サッカー審判員」の実情とは?

 子どもが少年団に入団したことがきっかけで、子どもの試合を頻繁に見に行くようになり、そのうち誘われるがままにお父さんコーチになった。そしていつの間にか審判として笛も吹くようになった――。
 全国の町クラブのお父さんたちは、そんなふうに、ごく自然ないきさつで審判になるケースがほとんどでしょう。お父さんたちが一つの町クラブを指導するにしても、今では日本サッカー協会の規定によって、必ずチーム内に、指導者資格は最低1名、審判資格は1名以上(都道府県サッカー協会によっては最低2名以上)の保持者がいないと公式戦には出場できません。
 つまり、これらの資格を取得することは、もはや町クラブに関わるお父さんたちにとって義務のようなもの。チーム内でも「あなたはまだ資格を取得しないの?」といった暗黙のプレッシャーが多少はあるようです。
 今回、「保護者サッカー審判員」というテーマで町クラブのお父さんたちに話を聞いてみました。保護者審判の実情とは一体どんなものなのでしょうか。
 

■ボランティアとはいえ、審判資格取得や更新には何かと費用が発生する

 まず、あるお父さんがズバリ指摘してくれたのがこんな声です。
「町クラブで審判をやろうとすると、まず審判服や笛、靴を揃えないといけない。そして審判に登録すための費用もかかる。当然すべて自腹なんですよ。審判服をチームのお父さんたちで着回すわけにもいかないですからね。中には審判服のデザインがリニューアルされるたびに好んで買い換える人もいますが、まあ、希ですね。審判になると年間数千円の資格の更新費もかかりますし、町クラブでは、たとえボランティアでも審判をやるだけですごくお金がかかります。クラブチームの場合、コーチたちも自分たちで審判をやりますけれど、ときにはクラブのお金で審判を雇うこともできますからね。町クラブはそれができないから、お金がかかって結構大変なんです」
 
 審判資格の取得や更新にお金がかかれば、一方では、指導者資格を取得するため(指導者資格はD級以上で更新費用がかかる)にも当然お金がかかります。ボランティアのお手伝いで始めたはずが、何かとお金がかかることに驚くお父さんも少なくないようです。  
「そういう現状だから、ボランティアで審判をやるお父さんたちには、志の高い人もいれば低い人もいるし、その差は確実にありますね。最近は時代の流れからか、キャリアアップを目指して真剣にやろうとする人もいるんですよ。でも中には、サッカーをあまり知らないまま審判をやってしまう人も見受けられます。まあ、チームを引率する大人が一人しかいない場合などは、子どもたちを公式戦に出場させることが最優先ですから、たとえサッカーがよくわからなくとも、やむを得ず審判をやっているケースもあるので仕方がない側面もあるのですが」
 
 

■大切なのは審判のレベルより、一生懸命ジャッジをしているかどうか

 あるお父さんは「普通のお父さんが審判をやってジャッジを間違ってしまうことはしょうがないと思うんですよ」と言い、こう続けます。
「僕らが普段活動している地域では、それ(審判の良し悪し)もサッカーの一つだよね、という暗黙の了解がありますね。大事なことは、審判のレベル云々よりも、審判が一生懸命やってくれているかどうかなんです。自分が指導している子どもたちの試合を、やる気のない審判に笛を吹かれたら『許せない!』と思うわけじゃないですか。大人の怠慢で犠牲になるのはいつだって子どもですからね」
 
 もっとも最悪な審判の典型は「センターサークルから出ようとしない審判」なのだと、別のお父さんは指摘します。
「あのような“走らない”審判は、審判ではなくて試合を進行しているだけですよ。僕はそういう審判に直接文句を言ったこともありますよ。『あなたのチームの子どもたちが、あなたがとったような態度で審判をされたら嫌でしょう?』『もし審判をやるだけの相応しい人がチームにいないのならば試合前に相談してくださいよ』と。そういうのは、試合に勝つとか負けるとか、それ以前の話ですからね。子どもたちも、大人も、真剣に試合に臨んでいるんです!」
 
 保護者審判が大半を占めるジュニア年代では、どうしても“やる気のない審判”が存在することは避けられないのでしょう。前出のお父さんのように直接指導できる人もいますが、すべての現場でそのような的確な指導ができるわけではありません。それこそまさに「プレイヤーズファースト(=子どもがより良い環境でサッカーに励めることを大人たちが第一に考えて行動する)」の理念を守ろうとする、各自のモラルに頼るほかないのが現状なのかもしれません。
 
「1人制審判」の導入から、現場でジャッジするお父さん審判員は何を思う?>>
 
 
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