サッカー豆知識
2014年4月23日
W杯でも活躍が期待されるCLセミ・ファイナリストたち【後編】
チャンピオンズリーグの準決勝からブラジルW杯の注目選手を紹介する後編。23日の深夜に行われるレアル・マドリー(スペイン)×バイエルン・ミュンヘン(ドイツ)の両チームの中盤からピックアップしたいと思います。
クロアチア代表のルカ・モドリッチ
PHOTO:Luka Modri? celebrando su gol ante el manchester utd/Angel7
■MFが豪華な攻撃陣を引き立てるレアル・マドリー
チャンピオンズリーグで前人未到の“ラ・デシマ”(10度目の優勝)を狙うレアル・マドリーの中盤は多くのタレントを揃えており、母国の代表で主力を担うスターと飛躍を狙うヤングタレントで構成されています。
組み立て、崩し、フィニッシュの全てに絡むのがクロアチア代表のルカ・モドリッチです。20歳で参加した06年のドイツW杯は途中出場のみでしたが、トップ下からボランチに移るとブレイクし、2008年の欧州選手権で大活躍するなどワールドクラスの仲間入りを果たします。イングランドのトッテナムで攻撃の中心となり、昨シーズンから加入したレアル・マドリーでは激しいポジション争いを強いられましたが、アンチェロッティ監督が就任した今シーズンは中盤で高い存在感を見せて、ポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウドやフランス代表FWベンゼマによる多くの得点の起点となっています。
体は大きくありませんが、柔軟な身のこなしと正確なボールタッチを駆使して、シンプルなタッチとタイミングの良いドリブルを組み合わせて相手の守備を崩していきます。高い個人技の持ち主でありながら、周りを使うプレーが非常にうまく、ワンツーでの抜け出しは相手のディフェンスにとってかなりの脅威となっています。また弾道の低いミドルシュートも得意で、右利きですが左足でも決定的なキックができます。クロアチア代表では10番を付け、セビージャ所属のイバン・ラキティッチやインテル・ミラノ所属のマテオ・コバチッチと魅惑的なパスワークを繰り広げ、今回の準決勝では対戦相手となるバイエルンのFWマリオ・マンジュキッチの鋭いフィニッシュを引き出します。
もう1人、攻撃のチャンスメーカーとして輝きを放っているのがアルゼンチン代表のアンヘル・ディ・マリアです。“アンヘル”(=スペイン語で天使)の名の通りピッチを踊る様なドリブルの使い手ですが、守る側にとっては悪魔の様な存在でしょう。ディフェンスの合間に入り込み、そこから意外性の高いラストパスを繰り出します。アルゼンチン代表ではバルセロナ所属のリオネル・メッシ、ナポリ所属のゴンサロ・イグアイン、マンチェスター・シティ所属のアグエロの決定的なプレーを演出しますが、特に昨シーズンまでレアル・マドリーでプレーしていたイグアインとは絶妙のコンビネーションで相手の守備を崩しています。
モドリッチとディ・マリアを少し後ろから支え、時にダイナミックな展開でチャンスの起点となっているのがスペイン代表MFのシャビ・アロンソです。何十メートル先にもほとんど寸分の狂いなく通すロングパスが最大の武器。GKが油断していれば、遠目からシュートを狙うこともあります。もともと攻撃的な特長ばかりが目立つ選手でしたが、リバプールでバランス感覚やボール奪取力を磨き、守備でも大きく貢献できる選手に成長しました。攻撃的なスペイン代表でも頼りになる存在です。バルセロナ所属のMFセルヒオ・ブスケッツは良きライバルですが、2人が中盤に入る時はシャビ・アロンソがやや前目でボールを捌くケースが多くなります。
ドイツ代表のチャンスメーカー、マリオ・ゲッツェ
PHOTO:victory future
■流動的な攻撃を可能にするバイエルンの中盤
バルセロナの黄金期を築いたスペイン人のグアルディオラ監督が率いるバイエルンは、中盤の鮮やかなパスワークと高い位置からの連動したプレッシングで試合を支配し、厚みのある攻撃を可能にしています。その中で[4-3-3]の中盤に位置する3人は攻守の軸であり、生命線とも言えます。彼らがしっかり機能することが、フランス代表のフランク・リベリーやオランダ代表のロッベンによる鋭い仕掛けにも結び付くのです。
ドイツ代表MFのトニ・クロースは07年のU-17ワールドカップでMVP(ゴールデンボール賞)に輝き将来を嘱望されましたが、レンタル移籍先のレバークーゼンで飛躍的な成長を遂げ、09-10シーズンのバイエルン復帰後はポジションを獲得し、A代表にも定着しました。もともとトップ下が本職の選手ですが、高い機動力と広い視野で下がり目のポジションも柔軟にこなすことができます。右足キックの精度は世界屈指でしょう。FKの名手としても知られ、特にターゲットにピタリと合うCKは多くの得点をアシストしています。ドイツ代表では強力なライバルであるレアル・マドリー所属のサミ・ケディラ、ドルトムントのギュンドアンがケガで長期休養を強いられたため、ブラジルW杯に向けてトニ・クロースに対する期待はより大きくなっています。
クロースの大先輩であるシュバインシュタイガーは世界的な名門のバイエルンにおいて、02年にトップデビューしてから12年間に渡り中盤の主力を担っており、29歳で早くもクラブの公式戦は450試合を超え、ドイツ代表も100試合に到達しました。プロ入り間もない頃は果敢なドリブルが代名詞でしたが、試合を重ねるごとにバランス感覚と連携意識を強め、バイエルンでもドイツ代表でも欠かせないオーガナイザーです。基本的に組み立てと守備のリスク管理を行いますが、攻撃が膠着すれば鋭い飛び出しから弾丸の様なミドルシュートを放つことができます。キャプテンマークはフィリップ・ラームが巻いていますが、どんなに苦しい時間帯でも冷静さと闘志を失わない、精神的な支柱としても重要な存在です。
同じドイツ代表のマリオ・ゲッツェは高いクオリティのボールタッチと豊富なアイディアで攻撃に変化をもたらせるチャンスメーカーです。若くしてドルトムントの中心選手となりましたが、新しい挑戦のためバイエルンに移籍しました。ウィングや“偽センター・フォワード”とも呼ばれる前線の中央で起用されることもありますが、変幻自在のドリブルと素早いパスは守る側にとって非常に厄介です。バイエルンでもドイツ代表でも毎試合スタートから出る訳ではないですが、出場すれば必ずと言っていいほど大きな仕事をやってのけるタレントです。
中盤の底に構えながら力強い守備と堅実なパス、さらに迫力ある攻撃参加でチームの支柱となっているのがスペイン代表のハビ・マルティネスです。190cm・81kgの恵まれた体格を誇りながら、攻守に渡り俊敏な動きを見せています。空中戦に強く、強烈なヘディングでゴールを狙えるため、スペイン代表では必要に応じてFWで起用されることもあります。バイエルンにはもう1人、チアゴ・アルカンタラというテクニカルなスペイン代表MFがいます。バルセロナ出身で、グアルディオラ監督の教え子でもあるチアゴはシャビやイニエスタにも通じるボールスキルとビジョンの持ち主です。ただ、3月29日のホッフェンハイム戦で右膝を負傷してしまい、残念ながら準決勝の2試合に出場することはできません。早期の回復とスペイン代表復帰を祈りたいものです。
1