サッカー豆知識
2018年6月21日
ドリブル、パス...個人技だけではサッカーが上手くならない! ドイツの育成クラブが推奨する選手を伸ばすトレーニング
■ドリブル、フェイント... 個人技だけやってもサッカーが上手くならない
トラスさんはこう指摘します。
「サッカーとはチームスポーツ。個別化したトレーニングをやるだけではプレーに活きない。ドリブル、パス、フェイント。それぞれだけをやっていてはダメ。11人が自分のプレーだけを考えていてはゲームにならないですよね。だからこそインテリジェンスを高めるトレーニングが求められている。技術にだけ取り組むのではなく、戦術理解を深め、状況認知からの正しい決断ができるようにするようにトレーニングがプログラミングされていなければならない。育成年代では特に3-3、4-4という小グループでの練習を推奨しています」
(写真は少年サッカーのイメージです)
「勇敢に」「革新的に」というクラブ哲学は ピッチ上でのプレーにおいてもそうですし、育成や運営においても同様だといいます。実際にクラブは様々なチャレンジをしています。メインスポンサーSAPによる様々なデータ分析、ボールコントロールからパスまでの技術、認知、判断、実践を効果的に鍛えることができるコンピューター制御のハイテクトレーニング施設フットボナウトなど、先鋭的な取り組みを積極的に導入しています。
また前述のルカも語っていましたが、このクラブの育成部には若い指導者が集まっています。プロ選手経験者はほとんどいません。トラスさんもまだ30代前半ですが、すでにクラブ在籍10年以上で仲間内ではベテランの一人。つまり、クラブは自分たちの哲学をまとめあげ、これからこれでやっていくぞ! という船出を漕ぎ出した時から、若くて向上心があって変わることを恐れない指導者を採用し、彼らを育ててきたわけです。そして指導者の育成においては育成ダイレクターを長年務めたベルンハルト・ペーターの存在が大きいといわれています。ルカも感銘を受けていました。
「ダメなことをしっかりとダメといえる人でした。若手指導者がミスをしたら、後で1対1でしっかりと相手の目を見て、『おい、お前がやっているのは最悪だ。別のやり方をしなければならない』とぴしゃりと伝えていたんです。一方で褒めることも忘れない。『素晴らしいじゃないか。そこはその調子でやってくれ』と」
こうした環境だから若手指導者は謙虚に、真摯に、情熱的に取り組むことができるのでしょう。
■選手を育て、指導者を育て、地元を育てる そのサイクルでいい人材が発掘される
さらに、最近力を入れているのが周辺地域町クラブへのサポートです。クラブホームページをのぞくと無料の指導者講習会が頻繁に行われているのがわかります。それ以外にも練習場を作るサポートをしたりと、地域全体の底上げをするために積極的な投資をしています。
選手を育て、指導者を育て、そして地元を育てる。大きなサイクルを作り上げることで、ネットワークが生き生きとし、コミニュケーションが活発になり、新しい人材がどんどん発掘されるようになるわけです。
トラス「ここ10年でU17からU23までの年代でうちに所属していた332選手中64人が、その後ブンデスリーガ1-3部やそれ相当の海外1-3部リーグでプロデビューを飾っています」
この数字は「勇敢に」「革新的に」進んでいこうとするホッフェンハイムの挑戦がもたらした大きな成果です。でも彼らはまだ満足していない。変わらないことに慣れてしまったら成長はなくなってしまうからです。
「まだこんなことができるんじゃないか」「このやり方は間違っているかもしれない」好奇心は人の世界や価値観を無限に広げてくれる鍵なのです。