サッカー豆知識
2019年11月 7日
サッカー面としつけは分けて考える。サッカーで伸びる子の、親の関わり方とは?
大阪府・茨木市を拠点に活動するレオSC。U-15の監督を務める安楽竜二さんは、47FAのチーフインストラクターを務め、昨年度まで長期に渡って関西トレセン、大阪府トレセンのスタッフを兼任するなど、育成年代の指導経験が豊富で、名古屋グランパス加入内定の児玉駿斗(東海学園大学)などのJリーガーを輩出しています。
自身もサッカーをする子を持つパパでも安楽さんは、お子さんとの関わり方をどのようにしているのでしょうか? お話をうかがいました。(取材・文:鈴木智之)
■子ども以上に親の気持ちが先走ってない?
安楽さんに「小学生年代の子どもを持つ親として、気をつけていることはありますか?」と尋ねると、次のような言葉が返ってきました。
「先日、小学生の息子をJクラブのセレクションに連れて行ったのですが、保護者の方が子ども以上に熱が入ってるんちゃうかなという光景を目にしました。子どもたちがコートを移動するたびに声をかけて、『もうちょっとワンタッチでプレーした方がええんとちゃうか』とか『なんでサイドのポジションやねん』とか。気持ちはわかりますけど、サッカー面は口出ししないほうがいいんじゃないかと思いましたね」
ひょっとしたら、Jクラブに入りたい子ども以上に、親の「Jクラブに入れたい!」という気持ちが先走っているのかもしれません。
「僕の子どももサッカーをしているので、親の気持ちはめっちゃわかるんです。ですが、セレクションを受けると決めたのが本人なのであれば、そこでのプレーには口を出さないほうがいいと思います」
■サッカーとしつけをごっちゃにしてしまう親がいる
さらに、こう続けます。
「僕も子どもができるまでは、全部コーチに任せておいたらええやん、子どもと距離が近い親はしんどいなと思っていたんですが、いざ親になってみると、人に迷惑をかけたらあかん、失礼な態度はあかんとなると、口出ししたくなるんですよね。しつけは大事ですから。ただ、サッカー面としつけは分けなければいけません。そこをごっちゃにしている親が多いのかなと感じます」
サッカーとしつけは分ける。それがキーワードのようです。
「サッカー面で子どものプレーを見たら、気になることはたくさんあります(笑)。でも、うちの子は僕が指導者であるがゆえに、自分からは聞いてこないですね。小学5年生からゴールキーパーをしているのですが、最初はフィールドプレイヤーだったんです。でも、自分で決断してGKをやろうと決めたので、尊重したいじゃないですか。セレクションで見た保護者のように、ポジションがどうやとかは言えないですよね」
「サッカーの部分はコーチに任せた方がいい」と言う安楽さん。子どもにどうやったら上手くなるの? と聞かれたときは「わからんけど、両足で蹴れた方がいいんちゃうか? ぐらいしか言いません」と笑顔を見せます。
「そしたら、両足で蹴れるように練習してますね。頑張ることをうながすような声かけは必要やと思うんです。無関心でいるのも違うと思うし。僕らの頃と違って、今の子の親は難しいと思いますよ」
■食事中にネガティブな話はしない
家庭で気をつけることは「食事中はサッカーのネガティブな話はしないこと」だと言います。
「食事は親子のコミュニケーションの大切な時間だと思います。その時間に大好きなサッカーのネガティブな話をされると、子どもにとってはしんどい時間になると思います。食事中に嫌なことを言われたら、ご飯の味も変わりますよね(笑)。それなのにアスリートは食事が大事やというのは、本末転倒やと思うんです」
食事とグラウンドへの送迎。この2つは親子が密接に関わる時間でもあります。
「送迎の時も、子どもの話は聞いた方がいいと思いますが、評価はしない方がいいですよね。『今日どうやった?』『あんまり調子よくなかった』と言うたら『そうか。また頑張ろうな』ぐらいでいいと思うんですよ。プレーの細かな評価やダメ出しには、ならない方がいいです。今は昔と違って、サッカーの知識のある保護者の人もいると思うんですけど、我が子のプレーを応援こそすれ、ジャッジはしない方がいいですね」
サッカーの指導者として、たくさんの家庭と関わってきた安楽さん。「お父さんの関わり方が上手な家庭は、不思議と良い選手になっていきます」と振り返ります。
■「察しの悪い大人」になるのも子どもの成長に必要
「多くの場合、両親のどちらかというとお母さんがお弁当を作ったり送迎したりと、絶対に関わらなきゃいけないじゃないですか。そこでお父さんが子どものプレーをジャッジするというか、ああだこうだ言い過ぎると、両方から言われる感じになってしまいますよね。できる子の親は、試合は見に来て応援はするけど、言いたいことはあっても言わない人が多いように思います」
さらに安楽さんは「察しの悪い大人になってみてはどうですか?」と提案します。
「例えば、こうした方がいいとわかっていても、答えを言わずにわかってないふりをする。親が先回りせず、子どもに判断、決断をさせる。そのスタンスが大切だと思います。チャレンジして失敗して、それを克服する過程で子どもは成長していくので、失敗はつきもの。『失敗しそうだな』と思っても、許容できる範囲のミスであれば、先回りをして障害を取り除かない。察しの悪い大人になるのも、子どもの成長には必要なのだと思います」
次回の記事では、中学年代を指導する立場から、小学生から中学生に進むときの親子の心構えや進路の選び方などをうかがいます。