サッカー豆知識
2021年3月18日
サッカーの保護者づきあいで疲れないために知っておきたい、面倒な質問をうまくかわす「答え方」
子どもはチームを気にいっているけど、親の自分が面倒なお当番や古い習慣に付き合うのが嫌でサッカーをやめさせたい。または少年団に入ってほしくない、という保護者の声は少なくないもの。特にお当番制は保護者のストレスNo.1ともいわれています。
地域の少年団などでは、保護者がボランティアで関わることが多々あります。試合会場への送迎や、練習の見守り、お昼の当番など団によってやることは様々ですが、当番を巡って親同士に亀裂が入り、子どもがサッカーを続けられなくなることもあるようです。
子どもが大好きなサッカーを続けるために、普段の交友範囲にはいないタイプの親御さんとも表面上円滑に付き合うスキルを身につけるのも大人として大事なこと。あくまで「スキル」なので参考にして実践してみてください。
会話における保護者同士の心がけなどについて、元テレビ朝日のアナウンサーでコミュニケーションインストラクターの渡辺由佳さんにお話をうかがいました。
(取材・文:前田陽子)
■保護者同士は礼儀を欠かず、深入りをしない。人の好き嫌いを口にしないが大前提
少年団に関わらず、学校のPTAなど、子どもの学校生活に保護者のサポートは必要不可欠。何かあるごとに親たちが集まって話すことになります。現在は父親の参加も珍しくありませんが、まだまだ多くの場合、母親たちが参加することが多いかと思います。
「子どもたちと同様、ママたちも自然とグループが出来上がります。そういったグループで誰かの悪口合戦になるのが一番良くないですね。組織社会でもグループでもそうですがどうしても声が大きな人になびいてしまいます。まずは人の好き嫌いを口にしないということを前提としましょう」と渡辺さん。
「あの人の●●が気に入らない」「お当番をしてくれない」「気遣いが足りない」などということを話題にしないこと。グループでは自然発生的にリーダーが生まれますので、声の大きいリーダー格の方々には特に気を付けてほしいところです。
■カドが立たない質問返し! 「かわし術」を身に付けると気が楽になる
「○○さんのことどう思う?」「ご主人何されているの?」「△△君はどこを受験するの?」など、答えにくいことや家庭の事情を詮索してくる人もいますよね。答えたくなくてもつい
真面目に答えてしまうと、「□□だって」とあっという間にみんなに広まってしまい、不快な思いをしたことがある方も少なくないのでは?
聞かれたことにすべて返事をするのではなく、かわす方法を身に付けることでそんなストレスがグッと減ると渡辺さんは教えてくれました。
たとえばお子さんのことを聞かれた際は、「子どものことを外で話すとあの子に怒られちゃうの」と「言いたいけれど言えないんです」という意味を含んで言えばカドが立たないそう。
上記のような言い方で「私が言いたくない訳ではないのだけど、言っちゃうと子どもがね......」というニュアンスが含まれると相手もそれ以上聞けなくなるのだとか。
正論ではありますが、真正面から「そういうことを聞くのは失礼じゃない?」「どうして家庭の事を詮索なさるんですか?」などと言うと、人によっては亀裂が入って、関係性が悪くなり、時として自分が居心地悪くなってしまうことも。
また、質問に質問で返すのも一案だそうです。「お子さんのテストの結果はどうだった?」との問いに「●●さんこそ、どうでしたか?」と返すような形式です。
学生同士の会話の例になりますが、部活やサークルの春合宿に行きたくないと考えている時に「春合宿は来るの?」と聞かれて、相手が先輩だったりして「行きたくない」と素直に言えない状況なら「その前に追試が来そうで怖くて」などと「合宿に来る」と「追試が来る」というように、動詞にかけて主語を替えるという質問返しも有効なのだそうです。
「かわす技は慣れないと難しいかもしれません。少年団のお母さん同士の会話では、聞かれる質問はだいたい想像がつくと思うので、事前にこう聞かれたらこう返そうと準備しておくといいのですね。かわし技とカドが立たない範囲の質問返しの術を考えておくと、気が楽になるのでは。会話の力があれば、多少の人間関係は乗り越えていけると考えています。人間関係を円滑にするにはのらりくらりとかわす術はどんな場面でも強いですよ」と渡辺さんはアドバイスを送ります。
■話の中身と同時に顔の表情や声色が重要
心理学の法則に「メラビアンの法則」というものがあります。話し手が相手に与える影響を数値化したもので、その伝達の割合は以下だと言われています。
視覚情報:外見、しぐさ、表情など 55%
聴覚情報:話し方、声の大きさなど 38%
言語譲歩:言葉の意味、会話の内容 7%
それほど人の印象は外的なものが大きいとされています。自分が伝えたいことを的確に伝えるにはまず「お願いしたい」という顔の表情と、「あなたにお願いしたいんです」という音の調子が必要で、最後に言葉の中身が生きくるのだとか。
「外見だけが大事ということではありませんが、人は外見から信頼を築いていきます。顔が見えなければ信頼もできず、話し方に自信がなさそうだったり発音が悪かったりすると説明が耳に入りません。伝えたいことが明確であればいいのではなく、表情や声色もメッセージを伝えるときには大切になります」と渡辺さん。
これはスキルであり、顔の造形や服装は関係ありません。相手の目を見て、表情と声でお願いの気持ちを届けるのです。上手なお願いは後天的に身につけられるスキルなのです。ぜひ実践してみてください。
■ママ同士、立場は平等であるべきだけれど年長者を敬うことも忘れずに
「同じ年ごろの子どもを持つ親という立場は同じですが、若いお母さんが年上のお母さんと話すときは、最初は敬語にしましょう」と渡辺さんは言います。
年上のお母さんから「同じママ同士だから敬語使わなくて良いよ」と言われて初めて言葉を崩すのが礼儀です。また若い人が最初から友達言葉で声をかけるのも、なかなか難しいものなので、年上のお母さんも若い人に寛容な心を持ちましょう。
お母さんが他のお母さんの悪口を言うと、聞いていた子どもが悪口を言われている家庭を見下すようになります。子どものためにも悪口は言わない、上下関係を作らないこと。女性はついマウンティングをしがちです。子どもにマネをされないように自分の言動に注意しましょう。
子どもたちがサッカーを楽しむためには、保護者同士がお互いを尊重し上手く関係性を築くことでチームの雰囲気をよくすることも大事です。よほど気が合う方は別として、ほとんどはプライベートまで深く付き合うことは無いのです。
親御さんも疲れてしまわないよう、お願いの仕方やかわし術の「スキル」を使って楽しく子どものサッカーを応援しましょう。
渡辺由佳(わたなべ・ゆか)
フリーアナウンサー。慶應義塾大学卒業後、テレビ朝日にアナウンサーとして入社。「こんにちは2時」「ザ・ニュースキャスター」など、報道から社会情報番組まで多数の人気番組を担当。1993年に同局を退社後、フリーアナウンサー、話し方講師としての活動を開始。
テレビ朝日アナウンサースクールなどで話し方講座を担当するほか、大学や企業でも講師を務める。
著書に、『会話力の基本』(日本実業出版社)、『スラスラ話せる敬語入門』『サクサク書けるビジネスメール入門』(以上、かんき出版)、『気の利いた「ひと言」辞典』(講談社)、『好かれる人が絶対しないモノの言い方』(日本実業出版社)などがある。