サッカー豆知識
2021年11月 4日
シニアの「裏」選手権に出場するほど本気で取り組むお父さん選手が実践する、決断力のあるサッカー少年の育て方
前回の記事では、Ruffle瑞穂FCで中学生の指導にあたる大塚哲さんに、指導者として子どもと関わる際に意識していることや、子どもと保護者の関係について伺いました。
後半の今回は、親として、そしてプレイヤーとしての大塚さんの姿に注目します。会社員、二児の親、そしてプレイヤーとして日々を過ごす大塚さんは、充実した人生を送っているように映りました。
子どものサッカーにばかり集中せず、ご自身の時間も大事にされている大塚さんに、引き続きサカイク10か条のひとつ「9.サッカー以外のことを大切にしよう」をテーマにお話を伺いました。
(取材・文:中村僚)
【関連リンク】子どもが心からサッカーを楽しむために大切にしてほしい親の心得「サカイク10か条」
<<前編:社会人リーグ主将、自身も真剣にサッカーを楽しむお父さん選手がサッカー少年の育児で実践するただ一つの事
■大人になってもサッカーを続けるのは当たり前のことだった
大塚さんは子どもの頃からサッカーに明け暮れ、サッカーと共に暮らしてきました。生活の中心には常にサッカーがあり、それは今も変わりません。
「私自身も子どもの頃からずっとサッカーをプレーしていて、幸運なことに高校時代は全国高校サッカー選手権に出場することができました。その後、サッカー部のある会社に就職し、その会社を退職して、そこからはチームを少し転々としました。そんな中で巡り会ったのが、現在所属しているaries TOKYO FC(エリース東京FC)です」
日本では、学生時代にどれだけサッカーに精を出しても、高校や大学で区切りをつけて競技を引退する選手が数多くいます。大人になってからも競技を続ける選手は稀でしょう。しかし大塚さんにとっては、サッカーを続けることはごく自然な選択でした。
「常に生活の中心にサッカーがあったので、サッカーをプレーできる環境を探すのは当たり前でした。ただ、妻からは『プロでもないのになんで週末もずっとサッカーしてるの?』と言われたことはあります(笑)。応援もしてくれていますけどね」
■サッカーには、社会人になっても長い間熱中させる魅力がある
それだけ長い間熱中させる魅力がサッカーにはあると、大塚さんは話してくれました。
「高校時代の体験は大きいですね。周囲には僕が所属していた学校よりも強豪と言われた高校はたくさんありました。しかし、試合に出ていない選手も含めてチーム全員で高めあって、全国大会に出場することができました。あの経験は忘れられません。保護者としても指導者としても、あの一体感や成功体験を子ども達に経験してもらいたいと思っています」
「サッカーは時として理不尽なことが起こります。自分よりも下手だと思っている選手が試合に出たり、圧倒的に実力で勝っているはずの相手に試合で負けたり......。でもそうした理不尽な経験をすると、社会に出たときにどんな辛い目にあっても『あの時よりは全然マシ』と思えるんです。タフさは本当に身についたと思います」
■サッカーを通じて自分の世界を広げることができた
サッカーを続けることで、サッカー以外の世界を広げることもできたようです。
「社会人のチームともなれば色々な人がいます。大企業の役員や、中小企業の社長さんもいます。そう言った方たちはサッカーをやっていなければまず出会わない人なので、あたらしい世界が広がったような気さえします。でもそんな立場も、ピッチの中に入れば全く関係ありません。そのメリハリが楽しいですよね」
■自分の人生が充実した姿を見せることが子どもたちへのメッセージになる
プレイヤーとしてまだまだ現役を続け、サッカーを楽しむ大塚さんの姿を見て、大塚さんのお子さんたちが感じるものもあったようです。
「子どもたちは小さい頃に遊んでいるうちに自然とサッカーに興味を持ち、クラブに入りました。長男は自分と同じ高校に進学してサッカー部に所属しています。サッカーをやろう、ここに進学しようと僕から言ったことはないのですが、子どもたちが自分で決めてくれました。自分のことは自分で決めるようにすることは、僕が子どもたちに接する中で意識しているポイントです。また、自分がプレーする時もですが、子どもたちにはパッション(情熱)を持ってプレーしてほしいと思っています」
前編の記事でも書いたように、子どもに干渉する親が増えている中、大塚さんは子どもの決断を否定することなく、また子どもが所属したチームの方針には素直に従い、暖かく見守っています。それは大塚さん自身が自分の人生を楽しみ充実させ、心に余裕があることも、要因の一つのようです。
「僕があまりにサッカーばかりやっているので、子どもたちは小さい頃僕のことをサッカー選手だと思っていたのではないでしょうか(笑)。でも無趣味で休日に一日中ゴロゴロしているよりも、活動的に遊んでいる方が、子どもたちにもいい影響があると思うんですよね。僕がこれだけ好き勝手にやっているので、子どもたちもいつの間にかふらっと遊びにいくようになりました。僕が子どもの決断を信じられるのは、自分がこれまでの人生において自分で決断を下して、いまも自分の人生を楽しんで、心に余裕があるからだと思います。」
■大人に真剣勝負の場を提供する"裏"選手権
今週の土日、11月6日、7日に大塚さんが選手として所属するエリース東京FCが出場するのが、「オムロン ヘルスケア杯 全国シニアサッカー"裏"選手権」です。「"終わりなき挑戦"を続ける"生涯現役"のシニアサッカープレイヤーに"裏選手権"という『真剣な遊び場』を提供する」という大会テーマのもとで、39歳以上の選手が日本一を争います。
「裏シニア選手権のような、この年になっても真剣勝負ができる舞台は本当にありがたいですし、楽しいです。自分がサッカーをプレーできることは指導でも役に立ちます。やはり実演できると選手への説得力が違いますし、逆にピッチの中に入ることで選手から教えられることもあります。こういう舞台で別のチームの方とまた新しいつながりができたりするかもしれませんね」
大人になってからも必死にボールを追いかけ、相手と真剣勝負する機会はあまりありません。シニアサッカー"裏"選手権のような舞台を整え、子どもたちを見守る大人が真剣に人生を楽しむことが、子どもへのいい影響を生み出すのかもしれません。
★この記事はサカイク10か条の項目第9項「サッカー以外のことを大切にしよう」に該当します