サッカー豆知識

2024年8月 2日

保護者の悩み「サッカーする子どもの少食・偏食はどうしたらいい?」にスポーツ栄養のプロがアドバイス

成長期の小中学生の子どもたちにとって、食事はとても大切。サッカーという激しいスポーツをしているなら、たくさん食べてほしいところですが、少食や偏食の子どもの食事に悩む保護者は多いものです。

そこで、成長期ならではの栄養摂取に関しての基本から応用までを管理栄養士の坂口望さんに聞きました。

家庭でできる具体的なノウハウから、親の気持ちの置き所まで、今日からできる対策です。ぜひご覧ください。
(構成・文:小林博子)

 

 

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■まずは身長を伸ばすことを目指して

「サッカーや野球などに真剣に取り組んでいると、大きな体作りを目指す保護者は多いものです。でも小中学生の体づくりとしてまず意識してほしいのは身長を伸ばすこと」

取材の最初にそう話してくれた坂口さん。体格は後から大きくすることはできますが、背が伸びる時期は限られているからだと言います。理想論としては、縦にも横にも大きくしたいところではありますが、それを小学生のうちから望むのは難しいと思う、とのことです。

そのために大切なことは2つ。
・3食、しっかり食べること
・早く寝ること

これは、坂口さんが実際に3人のお子さんを育て、よかったことだと実感していることでもあります。なんだか基本的なことに思えますが、意外とできていないご家庭は多いのではないでしょうか。

「長男と次男は野球、未っ子の長女はバレーボールをしています。3人とも身長が高くて大きいので、周りからは私の仕事柄もあり、栄養摂取がしっかりできているからと思われがちです。でも我が家では睡眠時間も食事と同じくらい重視してきました

どんな栄養を摂るかは大切なのですが、まずは難しいことは抜きに「3食をしっかり食べる」そして「21時には寝る」を実践することから始めることがおすすめだそうです。

まずは基本的な生活習慣を確立し、そのうえで摂るべき栄養素を工夫すること。それが「縦にも横にも大きなスポーツに有利な体づくり」へ導いてくれます。

夜練習や塾で帰宅が遅く、毎日21時に寝るのが難しいという子もいるはず。その場合は、「できる限り早く寝る」「早く寝られる日はなるべく早く寝る」を意識すると良いそうです。

 

 

■成長期の子どもの「食事の適量」が知りたい!

食事と睡眠をしっかりとれる生活習慣が身に付いたら、成長期の子どもが食べるべき具体的な食事量が知りたいところですね。

でも身長や体重、運動量によって適量はまちまちです。確実に知りたい場合は栄養士さんへの個別相談を行い、体の計測や採血などをして数字を出してもらうものですがなかなか難しいはず。

そこでおすすめの計算方法は「基礎代謝量の約2倍のカロリー」を知ること。これが成長期のサッカーなど激しい運動をする子どもに必要なエネルギー量となります。

なお、基礎代謝量の計測は家庭にある体重計でも、ものによってはすることができます。また、身長と体重からある程度の基礎代謝量も調べればわかるので、それを目安にしても良いでしょう。

例えば、12〜14歳男子だと約3,000Kcalが1日に必要なエネルギー量になります。

提供:坂口望さん
 

■まずは糖質をしっかり摂り、身長と体重を測ること

1日に必要なエネルギー量がわかったら、それを目指して食べながら、身長と体重が順調に増えているかをチェックするようにしましょう。

身長も体重も数字の伸びが鈍化してきたら、エネルギー不足かもしれないことがわかるようになります。

成長期に最も必要なのは「糖質」、つまりエネルギー源です。「性別、体重、運動量にもよりますが白いご飯を1食250〜300g×3食」が、子どもたちが1日に摂るべき糖質量の目安

3食を均等に割ったグラム数なので、朝昼晩合計で「750~900g」を目標にしましょう。

 

■少食な子が必要量を食べられるようになる3つのコツ

ちなみに、一般的に、大人サイズのお茶碗1杯のご飯の量は150gと言われています。毎食1回おかわりをする量と考えると、なかなかに多いですよね。少食で量を食べられない子には苦痛でしかないのでは。

そこで、1日に必要なエネルギーを摂取するためにできる3つのコツをご紹介します。

①脂質を味方につける
脂質は糖質よりも少ない量でカロリーが高いため、エネルギー量を効率的に摂ることができます。

脂身がある豚肉や牛肉を選ぶ、鶏肉は皮付きにする、ブリは天然よりも脂身の多い養殖ものにするなどの工夫でプラスしていきましょう。

ただし、胃もたれしやすい子にこの方法は向いていないので注意しましょう。

②野菜は「今は」優先順位を下げてOK
食生活の悩みで保護者から多く挙がる「野菜を食べない」という悩みに関しては、成長期かつ少食・偏食な子どもに関しては優先度を下げていいと坂口さんは話します。

「とにかくエネルギーを摂ってもらいたいので、ごはんと肉・魚が最優先。野菜を食べることでそれらが減ってしまうことがないようにしたいです。また、大人が意識する"サラダファースト(野菜を先に食べてから糖質やたんぱく質を食べること)"も無視してください。野菜はごはんと主菜を食べられたら最後に......、で良いくらいです」

③丼ものを増やして皿の数を減らす
主菜に副菜が複数......というメニューは見た目だけで量が多そうに見え、少食な子はそれだけでプレッシャーになってしまうかもしれません。

そこでおすすめなのが親子丼やカツ丼などのどんぶりメニュー。同じ量でもお皿の数が少ないだけで食べやすくなります。

 

■エネルギーが枯渇する時間を作らないことがポイント

小中学生の子どもたちの食習慣で特徴的なのが、朝ご飯から給食までの時間がかなり空くこと。7時前には朝食を食べて学校に行き、給食は13時近いという学校がほとんどではないでしょうか。

朝ご飯をたっぷり食べないと、お昼前にエネルギーが枯渇してしまいます。この「枯渇」の時間を少なくすることも成長期の栄養摂取のポイントです。そのため、朝ご飯をしっかり食べることは特に意識してほしいことなのだとか。

「成長期なんだから朝からたくさん食べなさい」と親がどんなに言っても、素直に聞き入れる子どもは少ないはず。

そこでぜひ実践してほしいのが、保護者のみなさんも朝ご飯をしっかり食べる姿を子どもに見せること。

朝食を食べない親御さんには大変かもしれませんが......。同じ方向をみて一緒に「食トレ」ができる環境が子どもの食に対する意識の変化に良い影響を与えるはずです。

 

■食事にも主体性を。自分の意思で「食べる」子どもに

坂口さんは、長男が大切な試合の直前に熱中症になってしまったことがあり、その際にお子さんが自ら「しっかり食べなくてはいけない」と気づいた日があったそう。

それ以降、本人の食への意識が大きく変わったという実体験から、親が何度も「食べなさい」と言うより、自らの意志で「食べよう」と思うことが大切だと語ります。

なりたい自分になるために、どう食べるかを本人に語ってもらうために、こんな問いかけをしてみてはいかがでしょうか。

・憧れのあの選手みたいになりたいならどうしたらいい?
・どうやってああいう身体になる?
・食べるためにどうすればいい?
・どうやって食べる量を増やす? 


サッカーで良いパフォーマンスをすることと、身長を伸ばして体を大きくすること、どちらにも多大な影響がある食習慣。

大切なことなだけに保護者の悩みはつきませんが、成長期の今に特化した考え方もあることがわかりました。子どもの気持ちを尊重しながら、あたたかく見守っていきたいですね。

次回は、サカイクアンバサダーさんの食事に関する悩みの解決策や、この時期ならではの熱中症対策につながる食事法をご紹介します。

 

 


坂口 望
MOGUらいふ代表

管理栄養士、公認スポーツ栄養士として、選手の栄養相談や栄養セミナー講師、アスリート向けの献立作成などを行っている。
プライベートでは高校生から小学生までの、スポーツをする3児の母。
https://mogulife.net/

 

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